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23「魔剣が突き刺さっていた経緯」

「ネックさん、良い人だったね!」

「丁度良いタイミングで来てくれて助かった。あたしは全然気にしてないし」

「だから、滅茶苦茶気にしてるわよね!?」


 お約束となったやり取りを繰り広げるラリサとマリリナとは対照的に、まだ釈然としない様子のルドは、「そんな事よりも」と、背後を振り返ると――


「そろそろ死ぬぞ、そいつ」

「きゃあああああ! そうだったああああ!」


 氷塊の中に閉じ込めたままだった獣人少女――ワンレイに掛かっていた氷魔法を解除した。

 力なく地面に転がるワンレイは、他の魔法騎士団団員たちと比べて遥かに長い間酸欠と低体温症の影響を受けたはずだが、呼吸をしており、生きてはいるようだ。

 「良かった……」と、安堵の溜息を漏らすラリサ。


 鑑定魔法を用いて命に別状は無いことを予め把握していたのであろうか、特にワンレイに対して反応を示さなかったルドは、マリリナの方へ向き直り、その手に握られている魔剣を一瞥して、「コホン」と咳払いをすると、意を決して切り出した。


「マリリナ。その……伝えなければならない事があるんだ。お前が手にしている剣なんだが、実は――」

「聖剣じゃないんだろ?」

「!」


 ――驚愕にルドは目を瞠る。


「知ってたのか?」

「手に持った感じが、〝聖〟なる感じが全くしなかったからな。見た目も見た目だし」


 横から、「〝聖〟じゃなくて〝悪〟って感じよね」と、ラリサが口を挟む。

 漆黒の柄に、赤い刀身。一目見てこれを聖剣だと判断する者は皆無だろう。


「そうだ。それは、聖剣ではなく、魔剣〝バルヴィング〟だ」

「魔剣……」


 感覚的にそうではないかと予想していたものの、改めてそう告げられたマリリナは、まじまじと自身が持つ一振りの剣を見下ろす。


 何年も掛けて、文字通り死力を尽くして漸く引き抜いた剣が、聖剣ではなく魔剣だった。

 もしそれを知ったら、ショックを受けてしまうのではないかと、ルドは気遣ってくれたのだろう。


 だが、マリリナは、首を横に振った。


「聖剣だろうが、魔剣だろうが、あたしにとっては、正直それ程重要じゃない。大事なのは、父さんが人生を掛けて抜こうとして、母さんが全力で応援していたこの剣を、あたしが引き抜く事だったから」

「マリちゃん……」


 「そうか」と応じたルドは、「一応念のために、この魔剣がここに突き刺さっていた経緯を伝えておく」と言うと、説明を始めた。


 元々魔剣〝バルヴィング〟は、三百年前に勇者たちによって倒された当時の魔王の住んでいた魔王城の宝物庫にあったらしい。


 魔王を封印した後、高値で売れると思った魔法使いが、こっそり持って帰って来たものの、禍々しいオーラを発していた事と、魔王城の宝物庫にあった事から、どの武器商人も取り扱おうとはせず、売れなかった。


 また、国王による謝礼が彼女が期待した額には遠く及ばなかった事もあり、腹癒せに、巨大な岩を生み出して地中に埋めて、その巨岩と魔剣の刀身を魔法で接着して、〝聖剣〟という石碑を立てた上で、去って行ったとの事だった。


「やけに詳しいんだな」


 話を聞き終わったマリリナがそう反応すると、ルドは、事も無げに――


「ああ。()()()()()()()()()()()からな」

「!?」


 ――そう答えた。

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