19「覚醒」
舞い上がっていた砂埃が晴れて、中から姿を現したのは――
「マリちゃん、良かった! ……って、え!?」
――光に包まれたマリリナだった。
彼女を包むそれは、〝闘気〟であり、剣士や武闘家が何年も掛けて修行した後に、ごく一部の者のみが会得出来るとされるものだった。発動すると、身体能力・攻撃力・防御力が全て格段に跳ね上がると言われている。
マリリナが闘気に目覚めた理由だが――筆舌に尽くし難い憤怒によって例外的に発現したのか、元々稀有な才能があったのか、はたまた幼少期から何年も剣を引き抜こうと毎日十時間以上全力で踏ん張って来た事が意図せずに最高のトレーニングになっていたのか、或いはそれら全てなのかは分からない。
「馬鹿な!?」
だが、ウェザビーが驚愕に目を剥いたのは、闘気そのものではなく、マリリナの左右に――
「俺様のゴーレムを斬りやがった……だと!?」
――切断されたゴーレムの両拳が転がっていた事だった。
どうやら、自身の召喚するゴーレムに絶対の自信を持っているようだ。
――マリリナは、己を包む光で魔剣をも輝かせながら、斜めに構えると――
「父さんと母さんの仇を討つ!」
――断言した。
「ちょっと〝闘気〟を使えるようになったからって、調子に乗るなよ、クソアマが」
冷酷な表情に戻ったウェザビーは、顔を歪めて吐き捨てる。
「俺様のゴーレムはなぁ、特別製なんだよ!」
ウェザビーの声に呼応して――
「グオオオオオオオオオオ!」
「!」
――ゴーレムの両拳が再生した。
その光景に、ラリサが悲痛な声を上げる。
「そんな!? 再生するだなんて! ルド君、やっぱり助けなきゃ!」
必死に呼び掛けるラリサに、だがルドは首を振った。
「大丈夫だ。アイツはもう、魔剣に認められたからな。今のアイツに斬れない物はない」
「!」
ラリサたちが見守る中、マリリナは跳躍すると、振り下ろされるゴーレムの両腕を空中で斬り捨てながら更に上昇、再生される前に、そのままゴーレムの頭上に到達して――
「ソイツは、核を破壊されない限り何度でも再生する! だが、核を破壊しようったって無駄だぜ! 核を覆っている胴体は腕の何倍も分厚いし、腕なんて目じゃないくらい硬いからな! てめぇのチャチな闘気と鈍じゃ絶対に斬れねぇ!」
――膨張させた闘気を纏ったマリリナは――恰も〝小さな太陽〟になったかのように錯覚すらする彼女は――
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
――上段に構えた魔剣を、一気に振り落として――
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「何だと!?」
――ゴーレムの身体を真っ二つに斬ると――
――その核も分断、ゴーレムは轟音と共に、左右に崩れ落ち――
「チッ! 「『炎嵐』!」
――落下中のマリリナを狙ってウェザビーが放った、幾多の炎は――
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
――闘気によって底上げされた膂力を存分に発揮したマリリナによって、悉く剣撃で掻き消され――
「『炎防御』!」
――慌てて分厚い炎による防御魔法を自身の周囲に展開するウェザビーだったが――
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
――眼前に着地したマリリナの魔剣が一閃、真横に薙ぎ払われると――
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」
――炎防御魔法と銀鎧もろとも、ウェザビーの身体は――上下に一刀両断された。




