18「嘲笑と憤怒」
衝撃音と共に――
――ゴーレムの右拳が、止まり――
「ぐっ!」
――横向きにした魔剣で受け止めたマリリナが、苦しそうに呻く。
その光景に――
「ギャハハハハ! 思った通りだ! てめぇなら、必死に守るだろうと思ったぜ!」
ウェザビーが嘲笑した。
「さぁ、クソアマ。御自慢の筋肉で頑張って耐えやがれ。いつまで持つか見物だな? ん?」
「くっ!」
両親の墓の前で、必死に堪えるマリリナの脚が、ゴーレムの巨拳による圧倒的な力で、徐々に地面に減り込んでいく。
「おうおう、頑張るねぇ。無駄な骨折りご苦労なこった」
ウェザビーはそう言いながら、マリリナに手を翳した。
「折角だ、俺様も手伝ってやるぜ! 〝熱い〟応援がいるだろ?」
「うっ!」
次々と炎が放たれ、ゴーレムの横から回り込み、マリリナの腕を、足を焼いて行く。
一方的に嬲られるその姿に、ラリサが怒声を上げる。
「見てられないわ! 助けなきゃ!」
――が、杖を振り翳した彼女を、それでもルドは制止した。
「待て。マリリナなら大丈夫だ」
「でも!」
「〝鑑定魔法〟で毎日アイツの状態を観察し続けて来た。〝目標達成までの期間〟は、日ごとに短くなって行った。そして、ウェザビーがやって来た事で、数値が一気に動いた。そして、魔剣を抜く事に成功した」
「でも、あのままじゃ……!」
「無論、本当にヤバくなったら、助ける。――が、まずは信じろ。アイツなら、持ち主として相応しいと魔剣に認められると。そして、その真価を発揮して、ウェザビーを倒せると」
何かに耐えるかのように、ルドの拳が強く握り締められているのに気付いたラリサは――
「……分かったわ!」
首肯すると、自身も魔法の杖を握る手に力を込めた。
森の中からラリサたちが見詰める先――崩壊した家の前では、ウェザビーが、不屈の精神で諦めないマリリナに対して、侮蔑の言葉をぶつけ続けていた。
「てめぇの親父――〝聖剣狂い〟は、その名の通り聖剣に取り憑かれて、結局抜く事さえ出来ず、挙句の果てにモンスターに殺されてその生涯を終えた。てめぇの母親は、そんな出来損ないの男に惚れて、貧乏生活を続けて、最期は通り掛かりの男に犯されそうになって、自分で舌を噛み切って死んだ。どっちも無駄死にだ! てめぇの両親の人生に意味なんてこれっぽっちも無かった!」
「……黙……れ……! ……そんな……事は……ない……! ……父さんと……母さんを……侮辱……するな……!」
蟀谷に青筋を立て、強く噛み締めた口から血を流し、尋常では無い重量とパワーに全力で耐えながら、マリリナが声を絞り出す。
すると、ウェザビーは、「ああ、そうそう」と、マリリナの両親の墓を一瞥すると、何かを思い出したかのように付け加えた。
「てめぇの親父はどう転んでも何の意味もねぇ人生だったが、母親の方は、〝俺様の役に立つ〟事が出来た可能性は十分にあったのによ、残念だったな。この俺様も、一つだけ後悔してる事があんだよ。〝メイの生首を取っておけば〟ってな。そしたら、今から斬り落とすてめぇのと一緒に魔導具に入れて保存して並べて観賞出来たのによ~。惜しいことしたぜ! ギャハハハハハハハハハハ!」
「!!! あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
マリリナが感情を爆発させ、怒声を上げる。
――だが。
「やれ」
ウェザビーの無情な一言に呼応して――
「グオオオオオオオオオオ!」
――ゴーレムが右拳を一度振り上げると――
「『氷牢獄』! マリちゃん! いやああああああああああああああ!」
――動きを止めようとラリサが放った氷の檻を一瞬で打ち砕きつつ、今度は両拳を、マリリナに対して勢い良く上から叩き付けた。




