16「両親の死の真相」
「あれは……禁呪じゃない! 何で、魔法騎士団団長が禁呪なんて!?」
巨大な岩のモンスターを〝召喚〟したウェザビーに、ラリサが目を剥く。
マリリナの左後方にいるラリサを一瞥したウェザビーは、その疑問に得意顔で答えた。
「俺様が魔法騎士団に入って間もない頃に、謀反を企てた馬鹿な貴族の屋敷に攻め入った事があった。その時に、〝モンスター召喚魔法〟に関する〝古文書〟を見付けたのさ。間違いねぇ、あれは運命だったぜ。出世する為に、炎魔法以外に、もう一つ〝武器〟が欲しいと思っていた所だったからな。密かに自分の物にした俺様は、程無く〝モンスター召喚魔法〟を会得した。ま、俺様は天才だからな。あの貴族は才能が無かったらしく、使えなかったみたいだがな。何れにせよ、感謝するんだな、愚民ども。俺様が馬鹿貴族を潰して、国家転覆の危機から救ってやったんだ」
横柄な態度のウェザビーに対して――
「モンスターを召喚……? まさか……!」
〝最悪のシナリオ〟が頭を過ぎり、魔剣を握る手が震え出すマリリナ。
そんな彼女を冷酷に見下ろしつつ、馬から降りたウェザビーは――
「そうだ。てめぇの親父は俺様が殺してやった」
「!!」
――口の端を吊り上げる。
「ただの〝聖剣狂い〟の癖によぉ、俺様の女を横取りしやがったからな、あの男は。結婚して子どもまで作りやがって。調子に乗ってやがったから、俺様がオーガを召喚して、ぶっ殺してやったのさ。無様だったぜ、てめぇの親父の最期はよぉ!」
楽しくて仕方が無いといった様子で、ウェザビーが回顧する。
マリリナは、殺意を込めてウェザビーを睨み付けた。
「母さんのみならず、父さんまでも!」
「おいおい、勘違いすんなよ、クソアマ? 確かにマイルズは俺様が殺したが、メイは自殺したって言っただろうが?」
「ふざけるな! あんたが母さんに乱暴しようとしたからだろうが!」
至極真っ当な指摘に、しかしウェザビーは意にも介さず、ただ肩を竦める。
「この超イケメン且つ史上最年少で魔法騎士団団長になったウェザビー様に求愛されたんだぜ? 人妻だろうが何だろうが、女だったら普通は喜んで股を開くだろうが。それなのに、あの女、拒絶しやがって! 最初に告白した時と合わせて、二回も俺様を振ったのはアイツが最初で最後だ。まぁ、でも、さっきも言ったが、死ぬ間際が面白かったから、許してやるがな。〝マイルズを殺したのは俺様だ〟って、教えてやった上で犯してやろうと思ったらよ、あの女、自殺しやがんの! 『……マリリナ……ごめんね……』って、何度思い出しても笑えるよな! 娘に謝罪して舌噛んで自分で死んでたら世話ねぇわな! ギャハハハハハハハハハハ!」
「殺す!!!」
跳躍して距離を詰めたマリリナが、上段に構えた魔剣をウェザビーに振り下ろす。
――が。
「グオオオオオオオオオオ!」
「くっ!」
ゴーレムの左拳によって防がれる――と同時に、後方に吹き飛ばされる。
空中で一回転しつつ着地したマリリナは、すぐさま跳躍して、ウェザビーを守らんとするゴーレムに斬り掛かった。
彼女たちの攻防の最中、ラリサは、「援護してあげたいけど……でも……」と、躊躇する。
親の仇なのだ。自分だったら絶対に、自力で倒したいと思うだろう。
思考するラリサだったが――
「そろそろアイツら死ぬぞ?」
「あ! きゃああああああ!」
――『氷牢獄』で氷の牢獄に閉じ込めたウェザビーの部下たちを放っておいた事をルドに指摘されて、慌てて「『解除』!」と、氷塊を消す。
糸が切れた操り人形のように、力なく倒れる部下たち。
皆、酸欠且つ低体温症で気絶してはいるものの、辛うじて生きてはいるようで、ラリサは胸を撫で下ろす。
と同時に、戦闘に巻き込まれないようにと、一応念の為にルドが地面ごと彼らを遠くに移動させる(尚、彼らの馬たちは既に、突如出現したゴーレムを見て悲鳴を上げて逃げ出している)。
「ウェザビーの事はマリリナに任せておけば良い。それよりも、俺たちはあっちだ」
「あっち?」
「『氷牢獄』から逃れたウェザビーの部下が、一人だけいる」
「!?」




