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0.「二千年前のある晴れた日」
「今日も良い天気ね」
そのエルフの女性は、太陽が大好きだった。
植物を育み、森を豊かにしてくれる日の光。
太陽に対して感謝の念を抱かない日は無い。
「太陽さん、今日は特に輝いているわね」
木々の間を通り抜けて来た微風が長い緑髪を靡かせる。
青々と生い茂った樹木の匂いがそっと鼻腔をくすぐる。
小鳥たちの楽しそうなさえずりが、軽やかに耳に届く。
気持ち良さそうに深呼吸して、エルフの女性が微笑んだ。
「何だか、とっても眩し――」
――次の瞬間、彼女は――
「――――」
――消滅した。