二話 勇者も最初はレベル1、そんで俺は勇者じゃない
「気になることがあったら何でも聞いてくれな!最新話のコメント欄に答えられる質問があれば俺らが答えっかもしれねーッスよ!」
※基本的にネタバレは行いません。主に、解釈の仕方が難しい、曖昧な部分を補完するおまけ要素的な意味合いを持ちます。
※飽くまで登場人物による回答であり、その当人達の知らない情報は答えられない場合があります。
※ストーリーに関係ない質問も受け付けます。どしどしカモン。
今、俺はどうしているのだろうか…。
視界は真っ暗で、思考もなんだかはっきりせず、自分が自分であるという自覚すらも忘れている。
意識は問題なく存続していることは無意識下で把握できているが、そのことも意識の上での思考にまで浮き上がっているわけではなく、ただあくまでも知覚しているに過ぎないし、それらを意識することもできない。
この感覚を認識というには不足がある。そんな状態のまま、依然として暗い闇の中をぼんやりと揺蕩っていた。
そんな時、暗き世界に突然光が生まれた。
無意識の暗闇から、意識が光のある方向へ、己自身が流れていくのを感じる。
内に秘めた己が意識が覚醒すると同時に、思考の奥底に封ぜられていた記憶が目を覚まし、須臾に忘れていた本来の自分を想起し、取り戻すのだ。
それは己の姿を想起した時点よりも以前の自己の消失を意味するものではなく、以前の自己と本来の自己の統合でもあり、本来の自己への回帰でもある。
刹那、目が覚めた。
「うおっ、眩しっ!?」
目を開くと同時に眩い太陽の光が視界に入り込んでくる。
徐々に意識と視界がはっきりしてくる。
「森の中…だな…。」
俺は見知らぬ森の中の木陰に腰掛けて居た。
明るい日差しが木々とともに地面を照らし、俺の周囲を満たす濃淡様々な緑が、萌える色とりどりの木の実、キノコなどの様々な自然が、驚くほど精彩で美しい樹海の様相を醸し出していた。
もしや、これがルーサーの言っていたゲームの世界のような夢の世界というやつだろうか?
そう思いながら立ち上がり、数歩ほど足を進めると、
『やあ、目が覚めたようだね。』
俺の中のルーサーが声を掛けてくる。
「ああうん、ついさっきね。ここが例の話の世界なんスか?」
『ああ、そうだ。この世界は君の元居た世界と同程度の広さがある。それと、五感も鮮明に感じられるようになっているはずだ。』
え、そんな広いのこの世界。
まあ、ボリュームがあるのは良いことだ。遊びならそれだけ飽きが来にくくなることだろう。
それにしても、五感を鮮明に感じられるようにしているとのことだが、これに関してはクオリティが本当に凄まじい。
太陽の日差しからはジリジリと熱を感じるし、吹き抜ける風が頬を撫でるのも、踏み締める大地の固さも鮮明に感じ取ることができる。
俺の普段見る夢ってのは全ての感覚が希薄なものなのだが、それと違って今の俺は五感を鮮明に感じ取っていた。
「なるほど、この世界でいろいろ自由に遊んでみてくれっちゅーことか。」
『ああ、そうだ。基本的には君たちに行動を任せる。僕に用があったらまた呼んでくれ。』
「おう、分かった。…って、君たち?」
ルーサーは俺のその言葉を最後まで聞くことなく彼は離れていってしまった。おそらく俺の中には居続けているのだろうが。
それと彼はつい先ほど、『君たち』と言った。
つまり…
『僕らにもこの茶番に付き合えっての?一方的なのは気に入らないけど…まぁ、いつもよりは楽しめそうだから今回は別にいいや。』
『僕はこういう世界ってちょっと憧れてたかな!昔、ちょっとだけゲームを遊んでた時があるからさ。』
『ここ、僕の居た世界とそっくりな感じだね。君の好きなゲームの世界ってこういう感じ?』
『わああっ…!綺麗な場所!楽しそうです!』
彼らも共に来ている、ということか。俺はてっきり一人で遊ぶもんだと勝手に勘違いしてしまっていた。
まあ、こういう遊びは一人より複数人の方が楽しめるものだ。
遊んでみて良い感じだったら他のみんなも誘おうと思ってたけど、自動的について来てくれるなら誘う手間も省けて良かったのかもしれない。
「とりあえず、俺は今からこの森を探索してみるッス。じゃ、やってこーう。」
『りょーかい。ま、せいぜい頑張っててよ。僕らは楽しませてもらうからさぁ。』
『分かった。無理して怪我はしないでね…って、それもここではどうなんだろう?また今度聞いてみようかな…。』
『草木に服とか持っていかれないように気をつけてね。あと普通に痛いし。』
『えっと、お気をつけくださいね。危ない動物とかもいるかもしれないので!』
「うんうん、気をつけるッス。こういうのもゲームの醍醐味の一つだよな。」
四人それぞれがそれぞれの反応を返すのを聞きながら、俺は森の中を進んで行く。
この感じなら、広大なマップを自由に探索するオープンワールドなテイストのゲームっぽいな。
道端で拾った木の棒を手に持ち、それを使って軽く進む道の枝葉を掻き分けながら進んでいく。
【かっこいい(?)木の棒を手に入れた。】
よし、この調子で進んで行こう。
【かっこいい(?)木の棒を手に入れた。】
うん、まあ、多分順調に進めているだろう。
【かっこいい(?)木の棒を手に入れた。】
お、なんかちょっと他より草木の少なそうな場所だ。ここで少し休m…
【かっこいい(?)木の棒を手に入れた。】
「いや、もうどんだけ木の棒手に入れてんだよ!いい加減多いわ!森かよ!そうだよ森だよ!」
少し開けた場所で木陰に座って休みながら一人でそう叫んでいた。
セルフボケとセルフツッコミ。
側から見れば大分な変人である。
『良いじゃん面白いよ!はははははっ!!』
『でも、少しは丈夫そうだしちょっとしたことには使えるかもしれないよね。きっと何もないよりは良いよ!』
『全力で振ったらたくさんは使えなさそうだけど、何度かは殴るのに使えるかもね。ちゃんとした武器が手に入るまでの繋ぎにはなるかな。』
『こ、これも多分、冒険の醍醐味!です!』
それぞれの反応を聞く限り、ただの木の棒でも使い道はあるだろう。
どう使うことになるかはまだ分からないが、邪魔にならない程度なら持っていても損はないかもしれない。
最初不便なのも、それを便利にするために頑張るのも冒険の醍醐味だ。
今のところはただ森をかき分けて進んでいるだけだが、俺目線ではこれでもかなり楽しめている。
「まだまだこれからってもんよ!っしゃあ、もうちょい進むか!」
そう自分に発破をかけ、背を預けた木から立ち上がり軽く伸びをする。
そうして、いざ進もうと右足を踏み出したその時、俺の目の前の茂みがガサガサと音を立てて揺れる。
「ん、なんだ?なんか居るのか?つっても森の中だし、警戒しておくか。」
俺はそう言いながら音のした方に体を向け、少しの間何が来ても良いように身構える。
その一瞬の後、茂みから謎の物体が飛び出してきた。
地面に着地してぽよぽよと、弾力を持って流動する楕円状の形で太陽の光を受けて空色に輝く半透明の物体。
所謂、王道のRPGゲームでもよくみる、スライムというヤツが近いだろうと思う。
「あ、スライムだ!絶対そうだ!よし、まずは肩慣らしってとこか?」
俺は気楽にそう言ってから少し腰を落としてスライムの動きを警戒する。
だが、次の瞬間。
ビュン!
「速っ!?」
ドムッ!
スライムは素早く俺に向かって体当たりを仕掛けてきた。
その動きはまだ、なんとか見切ることができる速度だ。
俺は体を半分ほど捻り、スライムの体当たりをすんでのところで回避に成功する。
スライムはそのまま俺の後ろにあった木に体当たりをし、それなりに大きな音を出していた。
「危ねぇ…割と強めな音した。そのまま食らったらそれなりに痛いかもしれねぇな…。」
俺がそう言う間にスライムは体勢を整え、再びこちらへにじり寄って来る。
最初はただのスライムだ、と油断してしまっていたが、今の俺からすれば大分強敵のようだ。
さて、どう攻めたものか。
俺がそう思案していると、アルサス君が俺に言葉をかける。
『まずは武器。今はさっきの木の棒があるからそれを構えて。それから腰はしっかり低く。このスライムは体高があまり高くないから、攻撃を当てられるように上半身と腕の動かし方をしっかり意識して。あと、敵の動きに反応してすぐに動けるように膝は常に少し曲げておくと良いかもしれない。』
「お、おう。分かった。」
俺はいつもとどこか雰囲気の違うアルサスに言われた通りに棒を構え、ある程度しっかり腰を落とし、油断なく敵の動きを観察する。
『スライムの体は半分液体状だから、動きの予備動作を見抜くのは少し難しい。できればそれを見抜いて避けたいけど、最悪は君の反応速度なら回避できるはず。油断なくね。』
「ああ、それは言われなくとも!」
アルサスからの的確な指示を受けながら俺は臨戦体制をとる。
(しっかり見てりゃ、避けれねぇこともないはず…。集中!)
俺はスライムの挙動に意識を深く集中させる。
その次の瞬間、スライムの体が僅かに凹んだように見えた後、その体が俺の胴体めがけて飛び上がってくる。
ビュン!
「来たっ!!」
俺は素早く体を横に躱し、体当たりを回避することができた。
そのすれ違いざまに木の棒をスライムの体に打ち付けようとするも、それはスライムの速度に追いつききれずにスライムの体を掠めながら空を切った。
「惜しいっ!あとちっと!」
『筋は悪くないよ。あとはスライムの動きに反応しきるだけの感覚を身につけられたら申し分ないかな。』
そう言うアルサスの言葉を尻目に、俺は少し違和感を覚えていた。
最初はともかく、二度目のスライムの体当たりはしっかりと動きを見切っていた。
あいつの動きに対しても慣れて来たように思うのだが、なんでかいまいち動きを追いきれない。
普段ならもう少し速くても反応できそうなものだが、いつもと体の感覚が違う。
「にしても、なんか調子悪いか?なんか、普段だったらもうちっと動けそうな気がするんだが。」
『多分、いつもより少し力んでるからかな。体を動かすのはまだしも、君はこういう相手と戦うっていうのは初めてでしょ?』
「はぁ…なるほど、そーゆーことね。」
そう言われてみれば、明確な敵意を持つ相手とは元の世界では一度も会ったこともないし、戦ったことなど尚更ない。
最初の体当たりから既にこちらを害することへの躊躇いのなさから、俺は少し恐怖を抱き、それにより体が緊張していたのだろう。
言われてみれば確かに体に不必要な力みを感じるし、手先も少し震えてしまっていた。
「なっさけねぇもんだ。自分では楽しんでるつもりだったが、思ったよりもビビってるとはさ。」
『仕方ないと思うよ。君の暮らしてる環境ではこんなことそうそうないもんね。』
それでも原因が分かった以上、このままではいられない。
原因は緊張っていうだけならまだやりようはあるはずだからな。
「フーーーー…ッ!!」
俺は深く吸った息を長く吐きながら全身に力を込め、吐き終わりと同時に力を緩める。
それを行うと同時に忘れず集中力を高める。
俺は緊張した時には毎回こうして心を落ち着かせる。
実際のところはどうか知らないが、不必要に力んでしまうのなら、自分の意思で強く力んでから脱力すれば、余計な力が抜けるような気がするのだ。
ほんとにただそんな気がしてるだけかもしれないが、これは俺にとっての一つのルーティンになっている。
そうして、俺が集中している間に、それを隙と見たのか、スライムが再び体当たりを仕掛けてきていたが、俺はそれを右足を軸に左足を浮かせながら体を半回転させて回避すると同時に、重心を右足から左足に移して地面を踏みしめ軸足にし、素早く右足でスライムを思い切り蹴り上げる。
「さあ、仕切り直させてもらうとしますか。」
俺の蹴りで空を舞ったスライムが地面に向けて落下している最中にも、着地点となるであろう辺りまで移動を始めておく。
蹴り上げたスライムは宙を舞いながらベチャ、と音を立てて地面に落ちる。
「だぁりゃぁっ!!」
地面に落下してビチャン、と体のかけらを周囲に散らしたスライムの中心に体重をかけて木の棒を無理矢理突き刺す。
スライムがミチミチと裂ける感覚を深く気にする暇も無く木の棒を押し続け、何かがパリンと割れる感覚を手のひらで感じたのを最後に、俺は棒をスライムの体から引き抜いた。
すると、さっきまではスライムの体はそれなりに一つの楕円形にまとまっていたのに、今ではドロドロに溶け、周囲に体の一部を散らしたまま、棒にもべったりとくっついてから動かなくなってしまっていた。
「うわ、やばやばだね。ウン。もう触りたくないこの棒。」
俺はそう言ってから、手に持っていた木の棒を茂みに投げ捨てる。
スライムはというと、ドロドロに溶けてからもうピクりとも動かなくなっていた。うん、多分勝った。
それを確認してから俺は膝に両手をつき、苦々しく言い放つ。
「きっつ。最初の敵でコレって大分高難度じゃない?」
『何はともあれ、お疲れ様。最初にしては十分だと思うよ。』
『暑苦しいもんだね…まあ、なかなか面白かったよ。』
『怪我はないよね?こういうのって僕はやっぱりちょっとヒヤヒヤしちゃうよ。』
『えっと、かっこよかったです!怪我しないようにしっかり気をつけてくださいね!』
正直、舐めてた。
せいぜいド○クエくらいの難易度かと思ってたけど、スライムでこれなら、敵によっては下手したらダー○ソウルくらい難しいまであるんじゃ…。
(ちょっとルーサーさーん!?難易度高くなーい!?)
俺は心で強くそう思った。
『ふむ。確かに、普段の日常からのギャップを考えればそれもあり得ない考えではない、か。』
うわびっくりした。
流石にこれ聞こえてるとか思わへんやん。
そんなこと言うたって聞こえてるんやからどうしようもないとは思うけどな。
丁度ええわ。ちっと話がしたいと思うとったルーサーくんの方からこっちに来てくれたっちゅーんやったら、今がええ機会やろ。
突然方言のような喋り方が発動した。
「あ、丁度良かった。どうにかしてくれ。」
俺がルーサーに対して開口一番にそう言い放つと、ルーサーは呆れたようにため息をつきながら返事を返してくる。
『全てが雑だな。まあいい、言いたいことは分かった。こっちが提供するサービスの一環として、多少の支援をさせてもらう。それで構わないか?』
ほう、もしかしてこれは、能力を授けてくれるとか、そういうイベントか?
昨今の状況でみれば、こういう展開はチート能力を期待したくなるのだが。
「え、何ができそう?『レベルさいだい』とか、『デバッグモード』とか、『しょじきんへらない』とか?」
そう俺が言うと、ルーサーはさらに呆れたように先程よりも深く長くため息をつきながら短く言い放った。
『それはない。』
まあ、ですよね。
これ以上のおふざけは一旦さておきたいので置いておいて、話を聞くとしよう。
「それじゃあ、どんなサービスを提供して頂けるんで?」
『内容としては、君たちに訓練をつける、というものだ。この世界での君たちに合った戦い方と、その素養のごく最低限の修練だ。』
「あー、なるほど。チュートリアルつけてくれるとかそういう感じッスか?」
『ああ、その感覚で構わない。』
彼の言うチュートリアルが一体どれほどの難易度なのかは分からないが、右も左も分からない今の状況から少しでも改善が見込めるなら受けない理由はない。
魔物がいると分かったこの世界で、ほんの少し戦闘がこなせるか否かだけでも大きな差が出てくることだろう。
「そりゃやりたいっ!是非ともやらせてください!」
『構わないが、少しは落ち着きを持ったらどうだ?』
「そいつぁ無理だね。それは一番キミがわかってるだろー?」
『頭が痛くなるくらいにはね。』
寄り道に寄り道を重ねた会話だが、そろそろちゃんと軌道に乗りそうだ。
普通の会話ならこんな寄り道だらけの会話にはないのかもしれないけども、残念ながら普通であるつもりは毛頭ない。
「そういえば、修練ってどういう修練するんスか?」
『基礎的な技能の習得とそれを活用して戦闘をこなせるだけの訓練だ。主に感覚的な部分を鍛えるものだよ。』
「ちなみにそれって、どこでやんの?ここでそのままってのは、またなんか出てきた時に怖いんだけども。」
このままここで修行をするのは、それならそれで文句を言うつもりはないのだが、その場合は時間が掛かれば日々の食事や寝泊まりする場所に困るのは間違いないだろう。
彼のことだからおそらく何かしらの考えはあるのだろう。
仮に今俺がどうするか考えるにしても、結局は彼の方が俺よりも博識であるだろうし、そもそも俺の出せそうな案はたかが知れている。
理由はどうあれ結局は、俺が考えるよりも発起人である彼に考えを尋ねた方が良いだろうと思う。
『一旦この世界との関わりを切り離し、君の精神内の空間にて、君たちの体の性能を再現した仮想体で様々な状況や相手を想定した実践形式の修練を行う。それを戦闘に適した感覚を得られた、と僕が判断するまで行う訳だ。』
「ほー、なるほど?つまり、修行中は時間とかの外のことは全然気にする必要とかはない感じ?」
『ああ、その修練を行う間君たちが怪我を負うことはないし、まして死ぬこともない。外界の時間は精神の思考速度を大きく加速させて行えば、数秒進んでいるかどうか程度で終わるだろう。その分トレーニングとしてはイメージトレーニングの域を出るものではない。当然、その間空腹に悩むこともない。』
「ほえー、すげーもんだね。そんなら、そこでずっと修行しようものならいきなり『レベルさいだい』!?」
これでも自分は現役の中学生。
厨二病というわけではないと信じたいが、やはり特別だったり無双だったりに憧れる感情は捨てきれない訳でございまする。
あと、俺自身ゲームをプレイする時はレベル上げを必要以上にやってからサクサク進めるタイプなんだ。
『それは無理だ。言っただろう?あくまで感覚を得るだけの訓練だ。それに、今回行う予定の精神世界での訓練では肉体的な面では一切変化を及ぼせない。改善も悪化もね。』
「ちぇー、つってもまあ流石にそうだよね。精神の中で体とか力が鍛えられるなら、筋トレとか絶対そっちでやった方が良いもんな。」
話をまとめると、俺の精神の中の世界で感覚的な部分を鍛える訓練をするが、精神内での行動はイメージトレーニングの域を出ないもので、体が鍛えられることはないということか。
んでもって、訓練中は感覚的に時間が長く感じても、周囲は全然時間が経ってない状態でやる感じね?
なかなか高待遇じゃん!ウレシー!
「ふいふい、おぅけぃ。大体わかったから、その条件でよろしくな!」
この時まだ俺は…この発言が一体何を意味するところか、それを舐めていた…。
そして、あの二人もそんなことは知る由もなかった…。
そんな俺はルーサーに対して軽くそう返事をしてしまっていた。
『それなら、さっそく始めよう。少しでも早く始めて少しでも早く済ませた方が君が遊べる時間も長くなるだろうからね。』
「お気遣いどうもありがとうね。いやほんと、良い友人を持ったよワタクシ。」
俺からは切っても切り離せない関係にあるおふざけを繰り返しているせいで、結果として会話が牛歩レベルに遅れてしまった。
俺のおふざけがなければ絶対にもっと時間が短かったのではと思うがやめる気はない。
エビの風味を纏ったとあるスナック菓子の如く、やめられないし止まらない。ほら、また会話のテンポが遅くなった。
俺が発言を終えたその後、口を動かしていない間そんなことを考えていたのだが、その時にふと瞬きをすると、俺の視界に映る景色は森の中から数人の人が虚無の上に立つ真っ黒な空間へと切り替わる。
切り替わった後の景色は、いつも見慣れたルーサー達が集まる精神空間だった。
質問の例1
・隆公君の将来の夢、とかってあるかな?
「そりゃもうダンゼン。伝説のスーパー地球人ッスね。」
「ぐ、具体的な職業とかかなって思ってたんだけど…奇抜な答えだね…。」
質問の例2
・ルーサーさんに質問ッス!ズバリ、好きなタイプは!?
「超常的な存在だな。未知こそが僕の心を踊らせる。その中でも神と呼ばれる存在は僕の中に在る永遠の探求課題さ。」
「あの、好きな異性のタイプどーなんでごさいましょー?」
「強いて言うなら、黄紅眼で白髪の少女だな。」
「またまたぁ、ルーサーさん。ファンサなんだから、真面目にね?」
「全く人を苛立たせるのが上手いものだね。特に君は…!」
その後、彼の姿を見たものは割と居た。