表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4話 『V-21』

V-21が告げる。


「ここは逃げましょう。パイロット。新型機3機に集結された場合の勝算がありません。現在地より少し離れたところにデブリ帯があります。そこに逃げ込んで1対1に持ち込みさえすれば、少しばかりは勝算が上がります」


かなり無茶な提案に、僕は驚いて言い返す。


「デブリ帯!?危険すぎる!!そこで新型機とのスピード勝負をするのか!?」


V-21は続ける。


「敵の新型機の速度は7世代機の最高速を遥かに凌駕しています」


「ですが、先ほどの新型機の動きを見るに、速度のコントロールが難しいと判断しました。デブリ帯の中でなら計算上、少しだけこちらの方が動きやすいかと思われます」


「それは最高速度での話だよな……?」


「もちろんです。パイロット。ですが、あなたならやれると信じています」


V-21はプランを変える気は無いようだ。それに加えて、敵機はもうこちらに向かってきている。


「ちくしょう!やるしかないのか!」


「メインブースター、点火。デブリ帯に突入します。細かい姿勢制御はこちらでサポートします。頑張ってください。パイロット」


アースゲート基地から少し離れたところにあるデブリ帯の中、ひたすらに逃げ続ける。


それを追う敵の新型機3機。


「V-21!どれほどで追いつかれる!?」


「速度を落とせば10秒も持ちません。耐えてください。パイロット。ワタクシの計算ミスでもあるのですが、新型機の速度調整は思った以上にスムーズに行われています。さすが、最新鋭の機体ではありますね」


「V-21!敵の機体を褒めてどうする!」


「それだけでなく、搭乗者も相当な手練れのようです。気を付けてください。パイロット」


「クソッ!」


と言いながらさらにブースターの出力を上げる。


この速度でデブリや小惑星にぶつかったら僕もひとたまりもない。集中し、デブリをギリギリでも避けながら進んでいく。


「しかしパイロット、このままですと……」


「わかってる!推進剤がなくなるんだろう!」


作戦が始まってからもうかなり時間が経っている。推進剤もなくなりつつあるのもわかっている。ただ、この状況を打破する方法がないから、逃げるしかないのだ。


「パイロット、前方に大きめのスペースデブリがあります。おそらく轟沈した地球軍の戦艦の一部分だと推測されます。ここに隠れてステルス機能を展開し、敵を撹乱しましょう」


「了解した!勝算はあるんだな?」


「パイロット。それは『カミサマのみが知るモノ』という計算結果です」


「どう言う意味だ。意味がわからない」


「わかりやすく言っても難しいので、今はワタクシを信じ、そして自分を信じてください」


「あぁもう!答えになってないぞ!」


そう言って僕はデブリの中に身を潜め、グラディエーターのステルス機能を展開させる。


そうすると敵が分かれて行動を始めた。おそらくレーダーから消えた僕を探すためだろう。そして1機がこちらに向かってくる。


「1対1ならば、勝算はあるんだな!?V-21!」


「はい。ライフルでは撃墜できませんでしたが、あの状態から計算すると、対アームド用ミサイルならば、大きなダメージを与えられる結果が出ています」


「ならば…!」そう言ってミサイルポッドのハッチを展開する。


「V-21!ロックオンを頼めるか!?」


新型機が近づいてくる。


「了解です。任せてください、パイロット。対アームド用ミサイル全弾ロックオン……完了。発射タイミングはそちらに委ねます」

  

おそらく新型機はロックオンに気付いただろう。逃げられる前にミサイルを撃ち込む。


タイミングは……今だ!!


「当たれ!!」


敵の新型機に向けてミサイルを5発放つ。


新型機はミサイルを振り切ろうと回避行動を取るが、ここはデブリ帯。思うように身動きが取れないようだ。そのままミサイルを避けきれず、全弾命中。


動力源、エーテライトエンジンも誘爆したらしい。凄まじい閃光、爆発と共に新型機1機は木っ端微塵となった。


「やった……!この調子で後2機も……!」


そう思った瞬間、ロックオン警報。


「パイロット、危険です。2機からロックオンされています。」


「戦術データリンクであの一瞬のうちに僕の位置座標を転送したのか……!?」


「やはり敵のパイロットもそうとう手練れでしたね」


「クソ……ッ!」


敵機が2機向かってくる。


「パイロット。この状況下でパイロットが助かる方法がありました」


敵機はもう白兵戦の準備をしている。対アームド用ダガーではなく、長剣、ヒート・ブレードを装備している。


「策があるのか!?V-21!?」


「しかしこの提案を話した所で、パイロットには確実に反対されると思います。ですのでここからは、ワタクシに任せて下さい」


「どう言う事だV-21!?」


「パイロットリンク遮断。AI自動操縦に切り替え完了」


「何をしているV-21!?」


「パイロット、あなたは生きてください。あなたはおそらくクローン兵の中でも特別な存在です。あなたと言う存在はここで失ってはいけないとワタクシの"何か"がそうワタクシに告げています」


「オーダー000自動入力。パイロット強制ベイルアウトまで5秒。」


「V-21やめろ!!」


「ありがとうパイロット。あなたと歩んだ3年間はワタクシにとっても大義なものでした」


「さようなら。パイロット。いや、相棒。決して諦めるな。その命、大切にしてください」


モニターにありがとう、さようならと言う文字が映し出されたと同時に背面ハッチが空き、コックピットブロックの一部ごと射出される。


「相棒ーーッ!!」


僕がそう叫ぶ頃には


乗っていたグラディエーターが敵機1機に組み付き、それに近づいてきたもう1機を巻き込んでエーテライトオーバーロードを行っていた。


エーテライトオーバーロード、それはエーテライトエンジンを最大稼働させ臨界させる。自爆とも言うらしい。


閃光、そして轟音、そして爆発。


V-21が計算して射出してくれたのだろう。それに巻き込まれる事なく、僕はその光景を目の当たりにする。


冷たい宇宙空間。僕は座席からシートベルトを取り外し、力なく漂う。


「相棒……」


僕は目から溢れる熱いモノを止められずにいた。


これは……


この正体はなんだろう。教えてくれる相手はもう、いない……

5話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ