3話『コード006』
「捨てられたのか……?銀河帝国に……僕たちは……」
僕は完全に意気消沈していた。どういうことだ……?何故……?
だいぶ前の話になるがB階級のクローン達が作戦を失敗させ、本部で処分される所は見たことがある。僕らは作戦を失敗させると銃で頭を撃ち抜かれ、処分される。そうならない為に頑張って作戦をこなして来たじゃないか……
通信でこの事を聞いていたF-108も同じように困惑していた。
「なんで私たちが……使い捨て……?どういう事……?」
「嫌よ……!そんなの……!嫌ァ!」
戦線から離脱しようとした機体の動きが止まる。彼女の、F-108の乗る機体のAIは今でもコード006を承認したままだ。通信からこう聞こえてくる。
「戦線離脱はコード006により認められていません。パイロットの精神異常と判断。パイロットリンク遮断。AI自動操縦に切り替わります。」
「嫌よ!助けてよ!隊長!お願い!」
彼女を乗せた機体はブースターを吹かせ、敵の基地へと特攻を仕掛けようとする。
「F-108!!」
僕がそう呼びかけたがもう遅い。パイロットリンクは遮断されている。程なくして通信が切れ、特攻を仕掛けた彼女の機体は撃墜された。
D-03部隊のB階級のパイロット達に通信を繋ごうとした矢先、彼らの機体も特攻を始めた。最初からこうなる予定だったかのように。
「みんな……」
「パイロット、ここにいることはパイロットの精神衛生上良くありません」
V-21がそう告げる。
「戦況を見るに数では我が軍が有利です。戦線を離脱するなら今のうちです。パイロット。ワタクシと逃げられるなら逃げましょう」
その提案には乗れなかった。
「逃げるったってどこに逃げればいいのさ……銀河帝国に帰ったらそれこそ処分だろう。この調子なら……」
僕は力無くV-21にそう言う。
「それもそうですね。ワタクシもスクラップにされてしまいます」
こんな時でもこんな調子で軽口を叩いていられるのか、V-21は……と少し呆れたがAIの感情なんて考えてもしょうがないか。
「とにかく状況の打破を……」
と言った時、戦況が変わり始めた。
「高速で動く敵の機体を確認。4機です。我が軍のグラディエーターが次々と撃破されています。データベースに機体の登録がありません。おそらく新型機です」
V-21が告げる。
「新型……!?」
モニターを確認する。確かにたった4機でこちらが押されてるのがわかる。
「来る……!」
新型機のうち1機がものすごい速度でこちらに向かってくる。
「パイロット。迎撃態勢を。計算によると機体スペックは完全に相手が上です」
ロックオン警報!その刹那。
閃光が横を通り過ぎる。
「何が起きたV-21!」
「データベース確認中……おそらくこれは……ビーム兵器です。1000年前の戦争で使われていた破壊力の高い兵器です。それを小型化し、アサルトライフルとして運用していると思われます。当たれば装甲を溶かし、熱により電気系統を誘爆させます」
「なんでそんなものを……ぐっ……!」
気を取られているうちに距離を詰められ、タックルをかまされる。敵のスピードが早すぎる……!
素早い動きで敵の新型アームドは対アームド用ダガーを取り出し白兵戦を仕掛けようとしてくる。
それをシールドで塞ぎ、なんとか対抗しようとする。
「パワーもグラディエーターを上回っています。このままでは左腕が持ちません」
V-21が告げる。
僕はフロントスラスターを最大出力に吹かせ、後退と目眩しをする。
相手の動きが鈍る。そして距離を少し取る。
「お返しだ!」
ロックオン。そしてアサルトライフルをフルオートで撃ち込む。
対アームド用弾が命中し、炸裂する。そして爆発を確認する。
「やった……!」
「いえ、パイロット、新型は健在です」
片腕とビーム兵器は破壊できたようだが、機体自体を破壊できたわけではなかった。
「なんて硬さだ……」
「なんて硬さなんでしょう」
V-21と意見が一致する。
腕を破壊できたのはビーム兵器とやらの誘爆か、運良く装甲の隙間に銃弾が入り込んだからだろう。
コックピットにもダメージを与えられたのか、敵機は沈黙しているが。その硬さには驚愕だった。
他の場所の掃討が片付いたようで向こうの新型機が3機、こちらに向かってくる。
「絶対絶命か……」僕は力なく呟いた。
4話へ続く。