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2話 夜に惑う

「この学校の七不思議のひとつ。

 西校舎の階段に1つだけ大鏡があってー。

 その鏡の前に4時44分に女の子が立つと、

 鏡の中から女の子が現れて鏡の中に引きずり込む、だってー」


 美夜みやがメモを見ながら説明。


「4時っつったか!?

 ここで8時間以上待つつもりかよ!」


「そこで腕時計です」


「ああ、美夜が持ってこいって言ったから付けてきたよ」


「るなっちは時計も骸骨なんだねー」


「……コレ、去年お前が誕生日にくれた時計だぞ」


「あーそだっけ?

 あ、ちょうど7時16分。

 時計を鏡に映してみて」


「どういう事だ?」


「ほら鏡に映すと4時44分と似た位置に針があるでしょ?

 これでもOKなんだって」


「ふーん……」


 証拠の為、スマホのビデオの撮影を開始。

 1分待ったが鏡は校舎の闇を映すだけで変化はない。

 時計の長針が17分を指したのでこれ以上は待っても無意味。

 ビデオ撮影を止める。


「全く面倒な。

 次行くぞ、次」


「こんな面倒な事になったのはるなっちが女王を怒らせたからでしょー」


「別に怒らせたかったワケじゃねーし。

 それにかげゆは怒ってないぞ、多分」


 事の発端は怪談好きのクラスの女子が「学校の七不思議」を話していた事から始まる。

 その女子達が私に前の学校の七不思議を聞きに来た。

 そういう話に興味が無い私は「そんな話知らない、バカバカしい」と笑ったのがいけなかった。


 それを見た”6年の女王” 勘解由小路かげゆこうじ美琴みことが話に入ってきた。


「この学校のは本物だから。

 笑うのなら星野、夜の学校で確かめてみてよ。

 あ、証拠に動画撮ってね」


 かげゆは何かと言うと動画、動画だ!

 アイツはブランドの服を買ってもらっては母親に撮影してもらって、動画サイトにアップしているらしい。

 アップした動画の視聴者は常に万を超えるという話だが、興味が無いので私は観てない。

 そんな話を鼻高々に話すから付いたあだ名が「女王」。

 お世辞と妬みも含まれると思うが、本人はそのあだ名を気に入っている。

 

「この動画アップしたら人気出るかもなー」


「るなっち、人気者になりたいの?」


「別にー。

 かげゆの事を思い出したから。

 大体ウチの親が許すワケないし」


 両親ともIT系の仕事だからネット関連には詳しく、そして厳しい。

 このスマホもフィルターがかかりまくりだ。

 時折仕事が忙しくて帰りが遅くなる両親だから、今日のように夜に出歩けるんだが。


「動画をアップしたら場所を特定されて学校に通報されるよー」


「だからしないって。

 で、次はどこ」


「えーっとねー」


 七不思議を知っている美夜も私と同じく暗い所を怖がらなくて助かる。

 何せ私は興味が無いからどこに何があるか分からない。


 かげゆは私が「夜の学校は怖い!」と言うのを期待してたのだろうな。

 私は霊とか信じてないので「おー撮ってきてやんよ!」と返したら、目を丸くしてたっけ。


「調理室の包丁が飛ぶって」


「なんなの、それ」


「水槽の魚みたいに教室中を泳ぎまくっているってー」


「それ怖いか?

 いや刃物だから危険ではあるけど」


 西校舎2階の調理室に着く。


「あ、特別教室って鍵がかかってあるんだっけ。

 入れなきゃ確認できないじゃん」


「入口の窓から中、見れるよ」


「……届かねーから見れねーよ」


「よいしょっと」


 美夜が私を抱き上げた。


「あ、すまねーな」


「いいってことよー」


 ミニライトで中を照らしながらスマホで撮影する。


「何も飛んでないし、包丁しまってある引き出しも開いてないし。

 ってお前なんで鼻息が荒いんだよ!」


「るなっちの髪の匂いを嗅ぎ放題ーっ――あ痛っ!」


 私のポニーテールに鼻を突っ込んでくるので、首を後ろに振ってアゴに頭突きを喰らわせた。


「嗅ぐな、金取るぞ!」


「え、お幾らですかー」


「払う気満々かよ!

 もういいから次行くぞ!」


「はーい」


「ちょ、ちょっと待て!

 私を担いだまま移動するなよ」


「えー、抱き心地がいいからいっそずっとこのままで――痛い痛い、膝蹴らないで」


「早く放さないともっと暴れるぞ、おらぁ!」


 美夜の腕の力が抜けたので、廊下に足を下ろす。

 今更だが靴が外履きのままだったのに気が付いたけど、もういいか。

 歩いてきた廊下を照らしてみたが足跡は付いてない。


「次はどこ?」


「音楽室ー」


「あーそれは私でも知ってる。

 目が動いたり表情が変わってたりってヤツだな」


「この学校では美少女の肖像画に変わりますー。

 そして絵を見たのが女の子だったらー絵の中に取り込まれますー」


「それは……怖いな」


「おっ? るなっちでも怖いんだー!?」


「バッハとかがあの白いヅラをとってロン毛のヅラとか被って女装するんだろ。

 こえぇー!」


「私、美少女って言いましたよー、言いましたよねー?」



 2階の廊下の突き当りの音楽室の前に着くと、美夜が入口から中を覗く。


「ここからだと暗くて中の肖像画が見えませんねー」


「鍵かかってるよな。

 これじゃあ確かめられないよなぁ」


「うん……あ、あれ?

 開きましたよー」


 美夜がカララーと音をたてて音楽室のドアを開けた。


「え、マジかよ!?

 なんで?」


「まじまじー。

 では遠慮せずに入ってしまいましょー」


「お前、少しは考えて行動しろ!

 中に誰かいるんじゃないか!?」


「誰かいますかーっ?」


「おおおーいっ!」


 美夜のスカートを掴んで引っ張る。

 誰かコイツを止めてくれ!

完結の3話「七不思議の先にあるもの」は明日夜21時に投稿です。



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