#7 生きる糧
目を覚ますと、そこには見慣れない天井が視界に入ってきた。今、自分がどこにいるのかは分からなかったが、窓から見える景色が暗いことから夜ということは理解できた。
辺りを見渡すと僕が眠っていたベッドの枕元にスイッチらしきものがあったため、力強く押してみる。すると、ブザー音と共に少ししてから二人の大人が入ってきた。一人は白衣を着た施設の大人と似たような恰好の中年男性であった。もう一人は女性で同様に白衣のようなものを身に着けている。
「こんばんは。無事に起きてくれてよかったよ。」
男性は微笑みながら僕に話しかける。
「あの、僕は一体どうなったのですか。施設は?そもそもここはどこなんだ。」
明らかに動揺している声だったため、女性が僕の背中にそっと手を添えてくれた。
「君の質問に答えると、まずあの施設は何者かの襲撃にあったことは覚えているかね。その後、ボロボロになった君は意識を失ってしまい、倒れていた君を見つけた人が助けを呼んだんだ。そして今、凍堂家が経営する病院に君は保護されているところだ。ちなみに私はここの医者だ。」
「襲撃…誰に。僕以外に助かった人はいるの?」
僕の質問に医者は応えづらそうな表情をした。しかし、ゆっくりと言葉を発する。
「いいかね、残念なことだが君を含めて4人しか子供は生存していない。」
「そ、その中に優奈っていう女の子はいませんでしたか!?大切な人なんです。」
僕の必死さが伝わったのか、さらに医者の表情は暗くなり首を横に振る。
「残念だが、私が知る限り生存者に優奈という子はいなかったよ。」
心の中で何かが折れた音がした。僕にとって雄一の親友が死んでしまった。もう二度と会うことはできない。僕はどうすればいいんだ…。頭の中がぐちゃぐちゃになっている中で、さらに医者は言葉を続ける。
「それで、施設を失ったため君はこれから養子として引き取られることになる。数日間はここで検査をしてゆっくり休みなさい。」
あの施設に疑問はあったものの、それなりに充実はしていた。もう、あの慣れ親しんだ生活に戻ることも出来ず、優奈とも会えない世界に何が残るのだろうか。一体、誰が何のために施設を襲撃したのか見当もつかない。生きる希望を無くしている僕に、ある言葉が頭を過る。
ー大人たちは嘘をついているー
優奈が残した最後の言葉。あの施設にいた大人は僕たち子どもに何かを隠している。襲撃とは関係なく、優奈は施設の大人たちに殺されたのだ。それなら、活かされた僕がやることは一つだけだ。
施設の創設者を暴き出して復讐をすること…