第七幕 『真実』
連に大小野柚葉には近寄るなと言われた。
二人にどのような過去があるかは知らないが、連にも大小野柚葉にも『関わるな』
と言われたのだから、もうこの件からはきれいさっぱり足を洗うとしよう。
そう決めた俺は、いつものようにラノベを片手に帰る支度をしていた。
窓から夕暮れの淡い光が射す。
俺は 『合理的』と言う言葉が好きだ。
無駄のなく、かつ的確な回答ができるならそれに越したことはないだろう。
俺の行動はまさにそれだった。
廊下を歩く足音、自分を追いかけてくる影。
今の俺は青春を生きているのだろうか。
そんなことこれっぽっちも考えない。考える必要がない。
こんなに俺がひねくれているから、優しさが仇となって帰ってしまうのかもしれない。
相手を穢す優しさなら俺は、そこら辺の雑草のようにただ素朴に生きて生きたい。
『中途半端な脳みそ』 の『中途半端な理想』 彼の思考は、欲なのか、妥協なのか、誰にもわからない。
そんな時だった。
誰かのすすり泣く声が聞こえた。
静寂に包まれた廊下に響き渡る女の鳴き声。
苦痛でしかない・・・・
階段下の倉庫から聞こえると気づいた卓は、真っ先に倉庫の扉を開けた。
「泣くなら家で泣け!静寂を壊すな!」
そこにいたのは全身ずぶぬれの白髪の長い髪の少女だった。
彼女は下を向いていた。目を擦る仕草がとても美しかった。
「あなた、渡だったよね」
瞳を赤くし、水を滴らせていた彼女は、 『大小野柚葉』 だった。
「教室で私を助けようとしてくれてありがとう。普通に嬉しかった!
でも、もう必要ないから。これは私の問題。あなたが関わる必要ないよ!」
彼女は笑顔で俺にそう言った。目元は笑っているが、口元が引きつっている。
俺は怒りを覚えた。
「お前にどんな過去があったのか、俺は知らねえ。知りたくもねえ。
俺がお前を気に掛ける必要もねえ。ただのお節介だってわかってる」
「でもよぉ・・お前を見ると虫唾が走るんだよ・・イライラすんだよ・・」
卓は彼女に歩み寄り、前髪をそっと上げる。
「俺のじいちゃんはいつもこう言ってた・・」
――瞳を曇らすのは、悲しみでも絶望でもねえ・・ 『根拠のない幻想』 ただそれだけだ。
彼女の眼はいつも曇っていた。
「お前の目はいつも死んでいる。千草のハンカチを振り払った時も、怒りの表情でもなければ
悲しみの表情でもない・・・・無表情だった・・」
「お前のことを見ていると俺は昔の自分を思い出すんだ。お前は昔の俺に似ている・・」
そうして卓は、彼女に自分について語りだした・・