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雑草君は目を覚ます  作者: 安倍剛志
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第三幕 『青春の地』

 「なんで大小野柚葉がここにいるんだ?」


 「それはこちらのセリフだよ。君の方こそ私の昼食場を取るなんて

  どういう神経しているんだ」


 「俺がどこで飯食ったっていいじゃないか、でも、悪かった」


 俺は争い事とかもめ事が大っ嫌いだ。争っても何も残らない。


 残るのは、苦い後味と軽蔑感だけ。


 「もうここには来ないようにするよ」


 弁当の蓋を閉め、そそくさと弁当を仕舞い、重い腰を上げる。


 そんな俺は心の奥で


 ――女の子にも優しい俺、意外とかっこいいんじゃない??


 尊大な優越感に浸っていた。


 去り際には手を挙げ 『ばいばい』 の意を示した。


 「あなた名前なんて言うの?」


 「え。。渡卓わたりすぐるだ」


 「そう。じゃあ渡。気が変った。特別ここで昼食をとることを許可するよ」


 凛とした表情は変わることなく、ただ言葉に一瞬の温もりを感じた。

今朝出会った彼女とは全く変わりはないが、どこか健気な少女の雰囲気を感じた。


 俺は彼女の言葉を受け入れるべきなのだろうか。


 もし、彼女の言葉を受け入れてしまったら、彼女を不幸にさせてしまうかも

 しれない。


 「何しているの?早く食べないと昼休み終わってしまうよ?」


 「・・・」


 言葉を詰まらせてしまう。彼女にはとてもありがたいとは思っている。


 でも


 彼女を不幸にしてしまうと考えるとどうしても受け入れる気にはなれない。


 「・・・別に無理して食べなくても大丈夫。詮索したりしないわ。

  あなた自身で考えなさい」


 彼女の言葉を聞いたとき、父の言葉を思い出した。



 ――いいか卓。世の中には指では数えれない程の選択肢が木の根っこのように張り巡らされている

   んだ。学校の問題の選択肢には答えがあるが、人生の選択肢には答えなんてねえんだ。お前が

   選んだその選択肢に自信をもってりゃあ、それが正解の選択肢だ。



 父のこの言葉は今でも忘れない。


 俺は決めた。


 「じゃあお言葉に甘えて・・」


 俺は軽い腰を落とし、弁当を取り出した。


 彼女がどんな気持ちで俺に言葉を投げたのかわからん。

でも、俺にとって、彼女の言葉は何物でもない善意だ。


 優しさを受け入れない奴に、やさしさを配る権利はねえ。


 彼女を傷つけない。そんなやさしさはただの欲張りだ。


 今は彼女の優しさを素直に受け止める。それが俺なりのやさしさだ。


 「お前って今朝千草に泥取ってもらって・・」


 「話しかけないで」


 「あ、はい」



 やっぱ変なこと考えないで、素直に帰っておけばよかった。


 こうして俺は超高スペック女 『大小野柚葉』 と出会った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ―下校途中―


 「今日昼、大小野柚葉と食べた」


 「はぇ!?!?大小野さんと仲いいなんて知らなかった!」


 「いや、ボッチ飯してたらたまたま会ってさ。なんかよくわからんが一緒に食べた。

  まあ、一回もしゃべってないんだけどな」


 「なんだ。。でも、大小野さんが人と一緒にいるなんて。。ましてや陰キャの卓と一緒に昼食を

  食べるなんて。。。。どういう風の吹き回しなんだろう」


 「もしや。。彼女、俺の隠れた魅力に気づいちゃったんじゃ!?」


 「自意識過剰陰キャは黙ってて」


 「なんかあたり強くないか?」


 そう言うと彼女は、クシャっとした笑顔で俺を見てきた。口元からは八重歯が輝きを放っている。


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