第二幕 『青春の』
学校に着いた2人。
いつも通りに歩き、いつも通りに靴を履き替え教室へ足を運ぶ予定だった。
彼女に会うまでは。。
――なんだあれ。いじめか?
周りがやけに騒がしい。
なんだこの雰囲気は。。
陰キャの俺でも、さすがに気づく違和感に少し不気味さを感じた。
「あの子、背中に泥が付いてる」
千草が目線を送る先に、一人の女の子がいた。
彼女のことは俺でも知っている。
容姿端麗、成績優秀。学校内でも噂されている超高スペック女。
『大小野柚葉』
彼女は恐らく、背中に付いた泥の存在に気づいていない。
それどころか、周りのざわめきに耳を傾けることなく、平然と歩いている。
まあいじめられる理由もわからないでもない。ここまで高スペックだと
嫉妬心を抱く女もいるに違いない。俺が話しかけても不幸にさせるだけだし。黙っておくか。
「あの。。背中にごみが付いているので取りますね!」
やったよあいつ。マジで何やってんだよあいつ。
千草は超高スペック女に勇敢な姿勢を見せた。流石にこれはまずいんじゃないか?
なんかいつも近づくなオーラ出してる気がするし、激怒されたりしないよな。。
心配そうな目を向ける俺を矢先に、背中の泥を取る千草。
一方の大小野柚葉だが、何も言わずに大仏のようにただ立ちつくすばかりである。
「よし、取れたよ!」
いやいや、取れすぎだろってくらいにきれいになった制服。
その優しい声を聞いて取った彼女の行動はというと。。
―スタッスタっスタッ
いや、ガン無視はないだろう!!
せめてありがとうの一言は言えんのか!それが大和撫子としての務めではないのか!?
彼女の行動に周りの生徒たちも驚きを隠せないのだろう。ひそひそ話が後を絶たない。
「朝から一善!素晴らしい一日の始まりだわ!」
「お前、よくあの人に声かけられたな。しかも、泥を取ってあげるなんて。
もしかして、お前って陽キャなのか?」
「失礼ね。私はいつでも人には優しいですぅ~!」
「ここにいたら目立つだけだし、教室行くぞ」
こうして一波乱あったが、無事今日も登校するのであった
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―昼休み―
今日も今日とてぼっち飯を行う。
弁当はいつも自分で作っているのだが、今日のは自信作だ。
蓋を開けると。。。
そこにあるのは、黄金色に輝くだし巻き卵。こんな俺にも微笑みかけてくれるウィンナー。
そして何より、レンジでチンの豚肉に隠された刻んだ梅入りご飯!!
俺を天国へ引き連れようと弁当の中では内乱が起こっているようだ。
しょうがない。俺が全員まとめて仕留めてやろうではないか。
―あーん
「ちょっとそこどけてもらえないか?」
「ん?・・・・・・えっ・・・・・・」
そこにいたのは大小野柚葉だった。