プロローグ『地獄の始まり』
――どうして、なんで、どうして、なんで。
目の前に広がる地獄の景色。男は髪をむしり、髪を毟る指先は赤く血で染まっている。
女は、ただただ顔を掻く。掻いて、掻いて、掻きまくる。皮膚は疾うに剥がれ落ちている。
テーブルの上に置かれた皿。そこには、何も入っていない。ただ置かれているだけ。
――あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!!
行き交う声に意味など存在しない。不協和音と化したその絶望を
僕は聞き続けることができなかった。。僕が耳を覆う姿に目もくれず、叫び続けるケダモノども。
――い゛や゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!いやだ゛ぁ゛ぁ゛!!!!
絶望という言葉一つでは表せない。地獄という曖昧な景色で表せない。
どんな言葉を使って、どんな感情を持って僕は生きているのだろう。
目の前のケダモノは何をしているのだろう。でも、見たくない。
いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、2人のこんな姿は見たくない。僕が何をしたっていうんだ。
――全部あいつが悪いんだ。あいつが私たちを壊した。
――あいつ?
僕は言葉を発した。ケダモノが発した言葉に疑問を持ったのだ。
その瞬間だった。
2匹のケダモノがこちらを同時に凝視する。
――おま・・なk・ば (ボソッ
――お前がいなければ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
二人のケダモノがこちらに襲い掛かってくる。
僕は全力で玄関へと向かった。どうしてこうなったのか、どうして逃げようとするのか。
僕は、僕自身が何を考えているのかがわからない。いや、何も考えていないのかも。。
でも、ひとつ確かなことは 『捕まったら殺される』 ということだけ。
そのことが、僕のひ弱で臆病な足を動かすには十分な理由だった。
―ガチャッ!ー
玄関の扉を勢いよく開いた。。
――警察だ!!大人しくしろ!!
僕の前にいたのは、黒光りする拳銃を持った警察官だった。
複数の警察官が2匹のケダモノを取り押さえる。
その光景にぐうの音も出なかった。
その後、小さな少年は心臓発作を起こし、地獄は目を覚ましたのだった。