10.悪役令嬢の祖父母④
「2人とも、そろそろ夕食にしないか?」
「おじい様!」
辺りはだいぶ薄暗くなっていた。長いこと話しあっていたからだろうが、全然気づかなかった。
「ちょうど良かった、ランドリュー。お話がありますの。」
「さ、先に夕食にしようクリオラ。アンが待っているし。」
「リュートさん、ノアさん、先にいっていなさい。」
「分かりましたわ、おばあ様。さぁ、お兄様行きましょう。」
「あぁ、うん。」
おじい様の後ろに隠れるようにたお兄様に声をかけ、先に2人で向かおうとする。
「待ちなさい、リュートさん。」
「は、はい。」
少し苦手意識があるのか、お兄様は少し堅い。
「先程は失礼なことを申しあげましたね。」
「い、いえ。そんな。」
「本当に申し訳ありませんでした。」
「そんな、頭を上げてください。その、もし良かったら僕にもお母様のこと話してくれませんか?」
「私では、大した話は出来ないかもしれないけれど。」
「僕もおばあ様とお話がしたいのです。」
「そう、ですか。ならまた後ほど。」
「はい!ありがとうございます!」
お兄様はそれはそれはいい笑顔を浮かべている。
おばあ様も、ほんのすこし口角を上げて、そして、おじい様の首根っこを掴んで
「さぁ、ランドリュー。お話がありますの。こちらに行きましょう。」
「あ、まって!ノアちゃん!リュート君!痛っ。本当にごめんって、クリオラ!」
おじい様の謝罪が聞こえてくるけれど、無視をしよう。あれもきっとおばあ様なりの愛情表現なのだから。
「ありがとうね、ノア。」
「い、いえ私も勝手に暴走してしまいました。お兄様の言葉を無視するだなんて。申し訳ございません。」
「ううん、ノアが僕のために怒ってくれて不謹慎だけど嬉しかったよ。」
「お兄様、お兄様がなんでも自分で抱え込む性格なのは知っています。ですが、私はどんなことがあってもお兄様の味方ですから、悲しみや怒りなど、他の誰に話せなくても私には教えてくださいませんか?お兄様の力になりたいのです。」
「ノア。」
「お兄様には私がいます。私にはお兄様がいます。それを忘れないでください。」
「ふふ、こんな自慢の妹を持って僕は幸せだなぁ。」
「私も自慢の兄を持って幸せです!」
「分かったよ、ノア、約束する。」
「私も約束しますわ。」
結局、私たちが食事をし始めて30分後におじい様とおばあ様がやってきた。おじい様は疲れたような顔をしているのが気になったが、まぁしょうがないだろう。私のせいだと自覚はあるが、疲れ果てたおじい様も中々素敵である。
それから、10分後にお父様がやってきて驚いていた。部屋にいると思っていたおばあ様が、なぜか子供たちと食事をしているのだから。
「ランド、貴方今まで何をやっていたのかしら。挨拶にも来ないなんて、あなたの子供たちのほうが優秀ではないの。食べ終わったらお説教です。」
あまりの父の登場の遅さに、おばあ様が尋ねるが、口を濁すだけでなにも言わないお父様を、おじい様と私はクスクス笑っていた。