夏休みの終わり際
新学期が始まる一週間前。 今日は中途登校日。 一部の生徒を除けば、みんなに会うのは約1ヶ月ぶりになる。 みんなどんな感じになっているのか、少し気にはなっている。
今日は珍しく遅く登校することにした。 と言うよりも特に早く登校する理由は無かったので、ゆっくりと登校してきた。
元々みんなよりも早く登校していたこともあって、みんながある程度揃っている教室を見るのは新鮮味すら感じていた。
「あ、館君来たね。」
教室についてすぐに僕に気が付いたクラスメイトの女子が、なにかを持ちながら僕のところに来た。
「館君、手を出して。」
「? こう?」
僕は子供がお菓子を貰うときのように両手を差し出す。 するとひとつのお菓子の入った包み紙と革製のアクセサリーを渡される。 そのアクセサリーには太陽のような金属が付いている。
「これは?」
「お菓子の方はお土産。 そっちはチョーカー。」
「なんでチョーカー?」
「いやぁ、館君ってそんなに着飾らないじゃん? だったら派手なものよりはって思ってね。」
「太陽の金属装飾はいらなかったんじゃない? 僕言うほど明るくないし。」
「ちっちっちっ。 太陽は必ずしも「明るいから」という理由だけじゃないよ。 暗い場所を照らすものでもあるんだよ。 お天道様は見ているってよくいうでしょ? それとおんなじ。」
照らすものなんて無いと思うんだけどなぁ? だが貰ったので折角だから着けてみることにする。
太陽の部分が前に来るように首に付けた後、後ろ手でフック部分を「カチリ」という音がして、付いたことが分かった。 チョーカーというと首の周りに付けるので息苦しくないのかな? と思ったが意外にも苦しくもなく、結構かっちりとはまった。
「おー。 いいねぇ。 今までの館君とはまた違う雰囲気になってるよ。」
「お褒めにお預かりどうも。 折角だから注意されるまでは付けてようかな? ありがとう・・・ええっと・・・」
「遠野坂 泰恵。 それが私の名前だよ。」
「半年も一緒にいるのにごめんね。 名前を覚えてなくて。」
「気にしてないよ。 ほとんど接点無かったし。」
それじゃあねと遠野坂さんと別れ、自分の席へ座る。 とは言っても今日の登校はあくまでも顔合わせも兼ねた近状報告のようなものに近い。 なので、やって来た宿題の提出と新学期に始まる事の説明以外はなにもない。 それも終われば、即解散となる。 この登校いるのかなと思ったのは、小学校高学年の時だったかな。
「はぁー、後1週間しかないのかぁ。」
小舞君が項垂れている。 宿題の提出と報告が終わって、僕たちのグループは近くのファミレスに入って、ゆったりとしていた。
「せっかく集まったのになにもしないのはもったいなくね?」
とは小舞君の台詞である。
「そうは言いましても残りの1週間の間にはなにもありませんし。」
「むしろ序盤で飛ばしすぎてしまったので、私としても残りは休養に回したいのだが。」
江ノ島さんも坂内君も、これ以上にないくらい夏休みを満喫したようで、あまり乗り気ではないようだ。 かく言う僕も乗り気ではない。
「まぁそうだよなぁ。 みんな長い夏休みから、新学期の気分に乗り換えなきゃいけないもんなぁ。 遊んでばっかもいられないか。」
「そういうことですね。 こうしてゆっくり出来るのももしかしたら今のうちだけかもしれませんし。」
「新学期になると勉強もまた変わってくるから、予習もしないと。」
「館の言うことはそこまで重要でも無いだろ? テストは無いんだし、予習し過ぎても困るだろ。」
「でも、少しでも、分かっていれば、中間テストには、間に合いますし。」
みんなそれぞれ新学期を迎えるための準備は出来ているようにも見えた。
「あれ? お前、そんなん付けとったっけ?」
ドリンクを飲んでいた小舞君に僕の首元を指摘される。 当然だとも思った。 今朝は付けていなかったのだから、違和感があってもおかしくはない。
「あぁこれ? 遠野坂さんから貰ったんだよね。 お土産のお菓子と一緒に。」
「え? 確かに遠野坂さんからお菓子の方は貰ったが、チョーカーなど私達はもらってないぞ?」
坂内君がそういってくる。 あれ? 全員じゃないの? 女子の方を見てみると、確かに貰ってないようだ。 みんな首を横に振っている。 あれ?
「館さん。 遠野坂さんとなにかありましたっけ?」
「いや、僕自身も不思議に思ってるくらいなんだよね。 向こうもこっちに接点は無いって言ってたし。」
「どういうことなのでしょうか?」
僕にも良く分からない。 誰かと間違えているんじゃないかと錯覚するかのようだ。
「チョーカーかぁ・・・」
いざ付けてみたものの、自分としてはどうなのかなって感じもあったりする。 そんなに悪いものではないのは付けてみて分かった。 だけど実際のところ、校則に引っ掛からないかだけが不安でもある。 いや、うちの高校はその辺りはそれなりに緩いから大丈夫だとは思うんだけど。
「館君。」
一緒に帰っていた安見さんから名前を呼ばれる。
「どうしたの? 安見さん。」
「・・・いえ、遠野坂さんからチョーカーを貰ったようなのですぐに付けているようですが。」
「・・・やっぱり変かな?」
「とてもお似合いですよ。 新学期に向けてのイメチェンとしては十分です。 ですから心配なのですよ。」
「心配? あ、校則の事? 確かに心配だなぁ。 でもアクセサリー位なら先輩もしているし・・・」
「そうではなりません。 そのイメチェンでこれ以上女子が寄られたら困ると言っているのですよ。」
そういう心配? あんまり自分にはそういう魅力は無いと思うんだけどなぁ?
「大体チョーカーひとつでそんなに変わるものじゃ無いと思うんだけど?」
「ギャップ萌えは男性にも通じます。 真面目な風貌の館君が少し変わったファッションをするだけでも目の色が変わるものなのですよ。」
安見さんは淡々と言うが、僕にはあまり分からない。少しばかり誇大妄想が過ぎないか?と考えてしまう。
「そんな心配しなくても僕はいつも安見さんの側にいるよ。 どんなときだって。」
そう言って安見さんの方を見ると、安見さんは下を向いていた。 耳元がほんのりと赤い。
「私も大概ですが、館君も大概ですね。」
そう言っている安見さんの意味が一瞬分からなかったが、僕がさっき言った言葉を思い出して、僕も気が付く。
「あ! いや! その! さっきのは言葉のあや・・・でもないけど、何て言うか、その・・・」
「・・・くすっ そんなに慌てなくてもいいじゃないですか。」
安見さんとき笑われてしまったようだ。 でも笑ってくれている方が僕も安心する。 新学期もこの調子で行けたらいいな。 そう思えたのは安見さんだからだろうな。
こう言った日の名前を思い出せません。
なにかの名前があったような気がするのですが、もし知っている方がいらっしゃったら感想までお願いします




