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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
72/302

これは現実のお話

安見さんの視点

看病をするシーンですよ。

 私はスーパーに寄って、リンゴやヨーグルトなど、喉にもお腹にも優しいものを買い物かごに入れて、ふとあることに気がついた。


「私、館君の詳しい住所知りません。」


 お見舞いに行くのは良いけれど、家が分からなければ意味がない。 館君に連絡を入れる? いや、体調不良の彼にそこまでの事をさせられない。 ・・・でも・・・


 うんうんと悩んでいた私の視界に入ったのは・・・



「すみません。 わざわざ連れていって下さるなんて。」

「いいのよ。 心配なのは分かるから。」


 そう、たまたま同じスーパーに来ていた館君のお母さんに遭遇したのです。 事情を説明したらそのまま連れていってくれるとの事だったので、同行させてもらうことにしました。


「それにしても・・・ふふっ。」

「どうかなされましたか?」

「いえね、光輝も幸せ者だなって思って。 安見ちゃんが1人だけでお見舞いに来てもらえるなんて。」

「いえ、そんな。 私は館君の事が心配で・・・」

「分かってるわよ。 光輝を元気づけてあげてね。」


 その館君のお母さんの最後の言葉に、全力で取り組もうと思いました。


「光輝の部屋は2階だから。 良かったらあがっていって。」


 家の人ではない私が勝手に上がってしまっていいのだろうか? そう思いながらも、2階に上がり、館君の部屋のドアを「コンコン」とノックする。


「ごめん・・・自分で開けにいけないから。」


 勝手に入ってくれと言う事だろうか? 初めての男子の部屋に入っていいものなのだろうか? でも入らなければ看病は出来ないし・・・


 恐る恐る部屋に入る。 ベッドに苦しそうな息づかいをしている館君を見かけました。 ここまで弱っている彼を見るのは初めてです。


 私は館君の勉強机のところから椅子を拝借して、先ほど買ってきたリンゴを借りてきた包丁でリンゴの皮を剥いていきます。


 そして食べやすいようにリンゴを切って、お皿に乗せます。

「館君、リンゴ、食べられますか?」


 そういうと館君は頷きました。 どうやら食欲は少しはあるようなので、これなら・・・


「・・・まだ体を動かすの辛いから、食べさせてくれない?」


 その一言に驚いてしまいました。 つまりそれは館君に「あーん」をさせると言う事になります。 そんなことを急に言われても、心の準備が・・・


 そんな思考を巡らせているのも露知らずな館君は大きく口を開けました。 これはやってくれというサインなのでしょうか? でも・・・


 やらないわけにもいかず、切ったリンゴを手にとって、館君の口に当てました。 すると館君はリンゴが口に入ったと認識して、そのまま咀嚼を始めました。 あ、「あーん」をしてしまった・・・こんな形でとはいえ。 しかし館君だって私に対して「あーん」をしていたので、ある意味おあいこですよね?


 誰に対する言い訳なのか考えていると、館君の様子が急に悪くなったのです。 急いで近くの洗面台からタオルをおでこに乗せました。


 どうやら熱がまた出たようで、それを乗せると、表情が安らかになりました。

 いつもは私が見られる側ですが、今回は私が館君を見る側になっています。 保健室の時とはまた別ですが、彼を見守れるのは、私にとってもなんだか嬉しいのです。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・安見さん?」


 そんな言葉が館君から聞こえる。 少し落ち着いたので、はっきりと見えるようになったのでしょう。


「・・・ふふっ、そうですよ。 あなたが見えているのは 須今 安見です。 貴方が風邪を引いたと聞いたのでお見舞いに来ましたよ。 なにかして欲しいことがあったら、出来る範囲でならやってあげますよ?」


 弱っている彼を見て、少しだけ強気に聞いてみる。 本当ならもっと優しく接する場面なのですが、何故だか彼に対して小悪魔的に聞いてみたくなった。 どんな答えが返ってくるか、少しワクワクする。


「安見さんの手に、触れたいかな。 僕と手に・・・ほっぺにも触って欲しい・・・ 安見さんの手、冷たくて気持ち良さそうだし。」


 ・・・これはさすがに予想外でした・・・ 確かに手くらいなら言いとは思いましたが・・・顔、ましてや頬。 普段の館君の口から絶対に聞けない「ほっぺ」という単語に色々と頭の中の思考が錯乱しています。


 ですが滅多にお願いをしてこない彼の、弱っているとはいえ、頼み事をしてきた彼の想いを無下にしたくないと思い・・・そっと手を握る。 大きそうな彼の手は意外にも華奢で、こんな手を持っている彼の事をもっと見たくなった。


 無意識だろうか、彼の顔に自分の顔を近づける。 本当に近い距離、普段でもここまで近づいたことはあまりない。 そしてその眼前には、熱のこもった瞳で私の事を見る館君の姿がある。 そんな彼に触れたくて、彼の右頬を左手でそっと撫でる。 熱があるので彼の顔は熱い。 私の手が冷たいということなら、冷やすのは頬よりも首筋の方が効果的だ。 そう思い私は、そのまま手を館君の首元へと滑らせる。


「ひぁ!」


 館君から奇妙な声が出たので手を引っ込める。 どうやら急なことで驚いてしまったようだ。


「まだ熱があるようですね。 タオルを変えましょうか。」


 弱っている館君を弄んでしまった私は、少し罪悪感を感じたのと、これだけ熱いならと思い、彼のおでこのタオルを水につけ直す。


 彼には少しでも早く学校に来てもらうため、タオルを水につける。


「・・・ら・・・・か・・・・」


 館君がなにかを呟いていましたが、その声はあまりにも小さすぎて聞き取れなかったです。


「安見さん。」


 館君は私の名前を呼んだ。 何事かと思い、耳を傾けます。


「僕は安見さんの事を、好きになったみたいなんだ。 友達としてじゃなくて1()()()()()()()()()

時系列を一緒にするために前回の話で喋った事をそのまま文として入力するのは大変でした。

因みにこのとき、館君側は夢だと思って言っている虚言、安見さん側では弱っていることによる妄言だと思っています。

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