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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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体育の時間 幅跳び

体育の時間、続き

「どうしたの館君? 引いていた汗が吹き返しているじゃないか。」

「いやぁ、まだ体の火照りが冷めきってなかったみたいでさ。 ちょっと動いたからまた汗が出てきちゃったよ。 あはははは。」


 本当は別の意味で吹き出している汗だが、誤魔化すためにそんな嘘をつく。 ごめん坂内君。 これは自分の過ちとして受け入れようと思うんだ。


「さて、しっかりと休憩が出来たと思う。 次は幅跳びをしようと思う。 その場で飛ぶ幅跳びと、走り幅跳びの両方を行う。 名前の早いものから男女交互に飛んでもらう。 知ってると思うが幅跳びで距離を取るのは一番後ろの沈みだ。 なのでバランスが崩れそうになったら後ろにではなく、前に倒れるように重心を持っていけば、記録は残るということだ。」


 流石体育の先生である。 そういったところは心得ている。 というか計測するんだね。 身体測定でもやるのかな?


「では1番からやっていくぞ。 相沢!」


 そういってどんどん跳んでいくクラスメイト達。 当然男女に差が生まれ、なかなか記録が伸びない事もあった。


「よし次。 坂内。」


 坂内君の番になる。 彼も頑張って飛んでは見たものの、最高までにはいかなかった。 ちなみに坂内君の記録が大体200cm弱。 今の最高は男子では217cmとなっている。


「次。 須今。」


 須今さんの番だ。 運動神経はいい方だと分かったが、果たして。

 須今さんが跳んだ後に記録を測る。


「記録は188cmだ。」


 女子の中から「おぉ!」という声が上がる。 どうやら好成績のようだ。

 先生がトンボがけをして、仕切り直す。


「次。 瀬戸。」


 そうこうしているうちに自分の番が来そうだ。 足は動かせれるようにしておかなければ。


「次。 館。」


 自分の番になる。 白いラインのギリギリに立ち、腕を振り子のように動かし、膝をリズムよく曲げる。 立ち幅跳びで重要なこと。 それは跳ぶタイミングで腕を大きく振ること、そして足は1度後ろに蹴ったあとすぐに前に出すこと。 これを上手く出来れば、


「記録、221cm。 スゴいじゃないか。」


 このように記録を伸ばせるということだ。 次まで間隔があるのでしっかりと足を休ませておきたいところだ。


「凄い跳躍力でしたね。」

「足の方だけは鍛えてるからね。 持久走が出来るのも足を鍛えてるから・・・・・・えっと須今さん? なぜ太ももを触ってるんですかね?」


 急に足に感触を覚えたので何事かと思ったら須今さんが僕の太ももを触ってるという光景を目の当たりにしているのだ。 状況が状況なだけにどうすればいいのか全く分からない。


「ほほぅ、これはなかなかにいい足をお持ちのようですね。 感銘を受けます。」

「そ、そりゃどうも。」


 須今さんは今日も良く分からない。


「全員終わったな。 次は走り幅跳びをする。 また番号順で行くぞ。 相沢!」


 走って跳んで、今度は両方ですか。 だがこれが終われば今週の授業は終わり、週末に入る。 多少無茶をしても週末に体を休ませれればそれでよいのだ。

 柔軟も済ませ、順番になり最後の1人が跳び終わって記録を計ったタイミングでチャイムがなる。 これにて今週の授業は終了だ。


「みんなお疲れ様。 聞いていると思うが、このクラスは体育が1週間で最後の授業になるため、帰りのHRは無しで帰れることになっている。 みんな気をつけて帰るんだぞ! 以上! 解散!」


 先生の話と号令を最後にみんな更衣室へと向かう。 まだ部活動の事は決まっていないので、このまま帰ることになる。


 男子と女子、それぞれの更衣室に入り着替えと共に帰りの身支度をしていると


「あぁんもう、 やっぱり砂が入ってたぁ。」


 隣から女子の声が聞こえてくる。 先程の走り幅跳び、男子はしっかりと足で着地出来ていたが、女子の一部では着地が上手くいかずに、お尻から着地したり、かかとで着地をしたせいで、砂が舞っていたりしていたのだ。 多分だがそれの代償が今来たのだろう。 壁が薄いのか、どこかに穴が空いているのか、女子の声が聞こえてくるのだ。


「もう。 ちゃんと整備されてたとはいえ、あんなに砂が舞ったら意味ないじゃん。」

「きゃっ! 服の中の砂が・・・!」

「ざらざらしてもうやだぁ。」


 そんな悲痛な叫びが男子更衣室に響く。 知ってか知らずかと言ったところだろう。 一部の男子は女子更衣室と繋がっている壁のところで聞き耳を立てている。 なにやってんの?


「おや、もう着替え終わったのかい? 早いねぇ。」

「早く帰りたいだけだよ。 余計なことはあんまりしたくないの。 それじゃあね。」


 近くで一緒に着替えていた坂内君に別れの挨拶を告げて更衣室を出る。 すると女子側の方の更衣室のドアも開いた。


「おや。」


 そこにいたのは須今さんだった。 須今さんもすぐに帰る人のようだ。


「やあ須今さん。 須今さんも早いね。 なんか女子凄いことになってるっぽいけど?」

「気にしないで下さい。 普段やりなれないことをした代償だと思うので。」


 僕と同じ考えの人だった。 ちなみに須今さんはそんな様子はなかった。 ちゃんと記録が出るような跳び方をしたので、衣類に対するダメージは最小限になっていた。


「では私は今日は両親との用事があるので急ぎます。 それでは。」


 そういってスタスタと歩いていく須今さん。 いつもあれぐらい素早ければなぁ。 そんなことを思いながら僕も昇降口の方にむかった。

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