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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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お昼時には

 急なテストが始まった3日後、テストも一通り終わったので、今日から本格的な授業形態へと入る。 午後からも授業があるので、気は抜けない。


 隣で1時間目から寝ている須今さんの姿なんてないのだ。 無いったら無いのだ。 授業初日からよく眠れるねと感心しつつ、僕はノートを取っていく。 僕の場合は「授業の内容を聞いていれば大抵のテストは乗り切れる」と思っているので、先生の話も大事だけど教科書を通しながら話を聞いて、教科書に載っていない部分や、黒板に書かれていることをノートに写している。


 そのような感じで一時間目を乗り切ると、隣で寝ていた須今さんが顔を上げる。


「・・・・・・おや、終わってしまいましたね。」


 終わってしまいましたねって・・・・・・終始寝てた人がなにを言ってるのさ。


「すみません館さん。 今日の授業はどこまでやりましたか?」


 そう聞いてくる須今さん。 一応復習は行うようだ。 そういうのはちゃんと授業を受けてから言ってよね。


「休み時間も少ないし、範囲だけ教えるよ。 ここから・・・・・・ここまでやったよ。」

「ありがとうございます。」


 そう言って須今さんはノートを開いて、先程まで寝ていたとは思えないほどの速さで書き写していく。その真髄、普段から使ってくれないかな?


 そうこうしているうちに休み時間が終わり次の授業になる。 須今さんは1度ノートを取ることを中断し、次の授業の準備をして、授業に挑んだ。 どうやらやる気は充分のようだ。 


 2時間目の授業の時も、目の前に書いてある事をノートに書き写すことを踏まえつつも隣の須今さんをチラチラと見ていたが、どうやら普通に授業を受けていた。


 朝は早起きしたから眠かったのだろうか? この様子なら大丈夫そうだな。


 そう思っていた時間が僕にありました。 須今さんは次の授業が始まる前にまた机に突っ伏して寝てしまったのだ。 起きてられる時間短かっ!


 今は座学だし、まだ重要にするような内容のものが少ないのでいいものの、今後のことを考えるとやはり放ってはおけない。


 その様子を観察して分かったことは、須今さんは1時間分の授業を睡眠に当てれば、次の授業はしっかりと受けれるようだ。 実際に3時間目は寝ていて、4時間目は起きて授業を受けていたので可能性は高いだろう。


 とは言え高校生活が始まってすぐにこれでは3年間はもたない気がする。

 4時間目も終わった昼休み。 色々と須今さんに聞きたいことがあるので、声をかける。


「須今さん。 お昼、一緒に食べない?」

「別にいいですよ? 1人で食べる予定でしたし。」


 とりあえず一緒にいることは出来た。 席は隣同士なので、そのままの席で昼食の準備をする。


 鞄の中から取り出したコンビニの袋を見て、須今さんが疑問に思ったような顔をした。


「おや、館さんはコンビニでお昼を買うのですか?」

「今日はたまたまだよ。 元々は母さんが作ってくれたり、昨日の残りだったりするんだけど、今日は時間が無かったみたいだから、学校に来る前に買ってきたんだよ。」


 朝のやり取りを思い出しながらそんな事を言う。 母さんは朝早く出勤をしなきゃいけない仕事だし、父さんは単身赴任中なため家にはあまり帰っては来ない。 そんな家庭事情にも慣れたもので、高校生になったらこうなると言うこともお互いに相談済みだ。


「そういう須今さんはお弁当なんだね。 手作り?」

「ええ、自分で朝早く作ってます。」


 そう言ってお弁当箱を開ける須今さん。 1段のお弁当箱には左半分がご飯で埋まっており、上にはおかかがかかっている。 右半分にはスクランブルエッグに春巻き、ブロッコリーとかなり色鮮やかに詰められていた。


「へぇ、この春巻きも自分で作ったの?」

「そうですよ。 とはいっても中の餡は昨日作った残りですが。」


 それはまた手の込んでいる料理だなぁ・・・・・・ ん?


「ねぇ須今さん。 お弁当って朝早くに作ってるって言ったよね? それって何時くらい?」

「そうですねぇ。 6時位でしょうか。 学校に登校する時間のこともあるので、そのくらいになっちゃったんですよねぇ。」


 なんとなく予想は出来ていたけれど、やっぱり須今さんが寝ている理由って・・・・・・


「もしかしてお弁当作りしているから、朝に寝ちゃってる・・・・・・?」

「いえ、眠たいのは昔からなんですよ。」


 その発言にカクッと首を落とした。 せっかく納得しかけたのにそんなこと言わないでよね。


「まあいいや。 須今さんが寝ている理由のひとつが分かったわけだし、結果オーライ・・・・・・なのかな?」

「なんだかよく分からないですが、理解してもらえたらいいのです。」


 本当は最も知りたかったけれど今はいいや。 そう思いながらコンビニで買ってきたスイート○ールを頬張る。 それなりに食べごたえのあるこの菓子パンと大きめの紙パックの牛乳でお昼を済ませようと考えた。 まあ最悪足りなかったら帰る前に買い食いすればいいし。


「・・・・・・もしよろしければ私が館さんの分のお弁当も作りましょうか?」

「ぶふっ!」


 須今さんの提案に、頬張っていたものが飛び出すところだった。 あ、危ない・・・・・・


「んぐ・・・・・・ごくん。 いや大丈夫。 今回はたまたまだし、須今さんの負担をこれ以上増やせないよ。 それにお弁当ならたまに自分でも作るし。」


 ここでOKと言ってしまったら本当にやりかねないし、起きれないほどに眠くなってしまったら本末転倒である。


「では今度お作りになられたときには食べ比べをしましょうね。 ふふ。」


 なんだろう。 からかわれているのだろうか? 須今さんと対話しているとこちらもなんだか須今さんのようになってしまう気がする。


 お昼ご飯の時も須今さんの雰囲気に流されているなと思いながら、お昼の授業に向けて準備をするのだった。

まだ1週間過ぎてません

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