雑多店巡り
まず最初に訪れたのは本屋。 言わずもがなここの階層の半分以上はこの本屋で埋められていると言うから驚きだ。 というわけでみんなで本屋を見ているわけだが・・・
「この料理はまだ挑戦していませんね・・・・・・ 今度材料を揃えて・・・」
「やはり歌舞伎は風格が全く異なる。 だが演劇の知識としては是非取り入れたい。」
「見てください小舞さん。 このガレキのオリジナリティーと完成度。 なかなか普通の人が出来るような領域ではないと思いませんか?」
「確かに、この間接部や衣装の細部までの手の加えよう。 命かけてるって感じでシビれるぜ。」
みんな趣味の本を見始めているため、回ると言うよりはそこで留まるような形になってしまっている。 かくいう僕も手芸関係の雑誌をみて、研究している始末なんだけど。
「なんかつまらないわねぇ・・・ 加奈美、向こうの方見てみない?」
「え? でも・・・」
「大丈夫よ。 みんな飽きたり買ったりしてここを離れるだろうし、逆にあたしたちが動かなければ合流出来るわよ。」
そんな会話をしていた濱井さんと円藤さんを横目で見送ると、僕も手に取っていた雑誌を持ってレジへと向かい、購入をする。
そして購入した雑誌を鞄のなかに入れて彼女たちが向かった先に行くと、そこは漫画コーナーだった。 濱井さんらしいや。
「お、館君。 買ってきたの?」
「そんなところ。 濱井さんは漫画を読む方なの?」
「ううん。 そんなにガッツリとは読まないかな。 気になった漫画だけ読むって感じ。」
それで品定めするように本棚を見ているわけなんだ。
「円藤さんも漫画を?」
「わ、私はあまり・・・どちらかと言えば、小説の方が・・・」
「それってラノベ?」
「・・・も、少し・・・」
円藤さんの声が弱々しくなってしまった。 どうも彼女は自分を主張しないと言うよりは、恥ずかしい気持ちが勝ってしまうのだろう。 彼女なりに苦労したのかもしれない。
「おーい! 待たせたな!」
「ほんとに待ったよ! みんな読み始めちゃうんだもん!」
「ごめんなさい。 次のところに行きましょうか。」
それもそうだねとみんな同意し、本屋を後にした。
次は二手に分かれて見ることにしたので、それぞれに分かれる。 僕と安見さん、坂内君、円藤さんの4人はミュージックショップ。 残りの小舞君、江ノ島さん、濱井さんは模型店へと入った。
ミュージックショップに入ったはいいけれど、あまり音楽は聞く方ではないし、どちらかと言えばCDよりもダウンロード派なので、入ってもどうも感動が起きない。
「私は音楽を嗜む方ではないので、分からないなぁ。」
「私、音楽聞くと眠くなっちゃうんですよね。」
「安見ちゃんの、気持ち、私も、分かる。」
どうやら来る店を間違えたようだ。 ぐるっと回ってお店を出ると同じように外で待機していた濱井さんに出会った。 ものつまらなそうにしているその姿は、やはりと言うかなんと言うか、彼女も楽しめていないようだった。
「梨麻ちゃん、他の2人は?」
「まだ中だよ。 というかずっと2人で見ながら語り合っちゃってるからもえ暇で暇で。」
どうやら向こうは向こうで火が着いてしまったようだ。 あれでは当分は戻ってこないだろう。
仕方がないので僕らは更に隣の店、「ストーンショップ」なる場所へとはいる。
そのお店には様々な形や色をした石が綺麗に並べられていて、その石の名前と説明がかかれていた。
「あぁ、なんかパワーストーンとかって言われるやつだ。 確か誕生石とか、持ってると石の効果が現れるとかなんとかって。」
濱井さんの曖昧な説明もありながらもその店を見てみる。 もちろん石単体でも置いてあるが、アクセサリーとしても用いられる事があるようで、それ用に削られている物もあった。
「僕の誕生石は・・・オパールか。」
複雑に彩られた石を見ながら、そう呟く。 オパールってどういう意味があるんだろ?
「えっと、石言葉は「希望・幸福・安楽」か。 前向きになれる石言葉だね。」
どれもあまり自分には合わない気もするけれど、石言葉となっている以上は仕方のないことだ。 文句はない。
「館君。 なにかいいものでも見つけましたか?」
オパール石を眺めていたら、安見さんからお声がかかる。
「うん。 自分の誕生石について見てたんだ。」
「オパールですか。 確かオパールの誕生石は10月でしたよね?」
「そうそう。 僕の誕生日は10月31日なんだ。」
「おや、ハロウィンが誕生日とは。」
「昔はハロウィンと混合するからってカボチャ味のお菓子を色々と食べたものだよ。 同じ味過ぎて飽きてきちゃうけれど。」
「でもいいじゃないですか。 季節限定の味が楽しめて。」
そうは言うけれど、毎回のようにカボチャ味のお菓子だよ? 流石にくどくなって来るってものだよ。
「安見さんの誕生石はどれになるのかな?」
「私は2月なので・・・アメジストになりますね。」
キラキラと紫色の反射光を放つアメジストを安見さんは手にする。
「なんだか名前が似ているね。 安見さんとアメジストって。」
「そんな語呂合わせみたいな言い方しないでください。」
「ごめんごめん。 それで石言葉はなんだって?」
「えっとここに書かれているのは「真実の愛を守り抜く力」と書かれていますね。 真実の愛とはなんでしょうか?」
「なんだろうね? でもそれを貫き通せれる力があるなら、」
そう言って安見さんの方を一度見て、
「安見さんに取ってその人は、欠かせない人なんだろうね。」
そう言った。 彼女が何を持ってして真実の愛というのか分からないが、それがもしも人物を表すのなら、もうそれは運命の人ってやつなのではないだろうか? そう思っていると、
「・・・そうですね・・・ そうかもしれません・・・ね。」
少々俯き加減でそう答えた。 俯いているせいで表情が見えない。 その顔を覗こうと思ったとき、
「私、これ買ってきます。」
そう言ってレジに行ってしまった。 流石に顔を覗くのは駄目だったよね。 自分の失態に反省するのだった。




