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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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自己紹介

 高校生生活2日目。 昨日は新入生だらけだった桜のトンネルの下も、今は在校生もいて、凄く多くの生徒が歩いている。


 今日は始業式が行われ、在校生は今日までの春休み期間を終えて、新たな気持ちで学校へと入る。


 そんなゾロゾロとした中で、昇降口から自分の使う下駄箱の中の上履きを履いて、昨日決まった教室へと入り、自分の席につこう・・・・・・と思ったが、自分の右隣の席で昨日と同じように突っ伏している須今さんの姿があった。 え?もしかして朝からこんな感じなの?


「須今さん? 寝てるの?」


 自分の席に着きつつ隣の須今さんを起こそうとする。 しかしそんなのに応じるわけもなく、多分普通に寝てしまってるのだろう。


 まだなにかあるわけではないし、朝は辛いのは誰でも同じだろう。 だけど学校に着いた瞬間に突っ伏してしまうのは流石にマズイのではないのだろうか?


「おはよう館君。 今日も暖かな季節になったね。」


 声をかけられたので声のする方を向くと、坂内がそこに立っていた。


「おはよう坂内君。 わざわざ自分の席からここまで挨拶に来てくれたんだね。」


 名前の都合上坂内君は教卓の目の前の席になっている。 教室内とはいえ、そこそこの距離はある。


「今この場で知り合いは君しかいないからね。 多少の距離など対したことないさ。 君だって知らない人物に囲まれたら不安になってしまうだろう?」


 坂内君の言う通りだ。 実際に坂内君が来るまでは同じような思いだった。 人とは案外心細い生き物なのだと改めて知らされる。


「2組も体育館に移動しますよ。」


 そう南川先生が言い始めるので、クラスメイトがゾロゾロと移動し始める。


「須今さん。 始業式始まっちゃうよ。 ほら、起きて。」


 須今さんの体を揺さぶり起こそうと試みる。 すると何回か揺らした辺りで声が漏れたので、どうやら起きてくれたようだと安堵した。


「・・・・・・おや? みなさんどちらに行かれるのでしょうか?」


 ただ状況が理解できていなかった・・・・・・!


「始業式だよ! ほら、行こう!」

「あぁ、そうでしたね。 行きましょうか。」


 こんなペースで大丈夫かな? この人? そんなことを思いながら僕も移動を始めた。



「では昨日言ったように、1人ずつ自己紹介を行ってもらいます。 名前、得意なこと、趣味、その他一言といった具合でよろしくお願いいたします。 では早速、番号順で朝桐さんから。」


 始業式が終わり、今日はレクリエーションタイムということで、自己紹介時間が設けられた。 ちなみに隣の須今さんはまた眠ってしまっている。 睡眠欲高過ぎない?


 代々20分位したのち


「初めましてみなさん。 私は 坂内 良樹と言うものでして・・・・・・」


 あ、坂内君の番になった。 っていうかもう後4、5人で須今さんの番になるんだけど。 これは起こさなければ・・・・・・! 謎の使命感とともに再度須今さんを起こす時間がやってくる。


「須今さん。 そろそろ須今さんの番になっちゃうよ。 起きないと面倒なことになるよ?」


 そう言葉を言うと須今さんが顔を上げてくれた。


「面倒なことになるのは困りますね。 起きていましょう。」


 その言葉を聞いてなんとか指名は達成したかなと思った。


 そしていよいよ須今さんの番になる。 彼女自身の事を知るのはこれが本当の意味ではじめてになる。


「みなさん。 私は須今 安見と申します。」


 いよいよスピーチが始まった。 さて、どんな自己紹介をしてくれるのやら。


「私の得意なことは料理です。 家庭料理も出来ますが、お菓子を作る方が私は好きです。」


 お菓子作りとは意外な趣味をお持ちで。 眠る一択かと思った。 それは流石に失礼に値するか。


「趣味はそれに因んでお菓子の食べ比べとかしてます。 おかげでちょっとだけ言えないことが・・・・・・」


 照れながらそんなことを話す須今さん。 それで言えないことと言えば1つだろうな。


「これから1年間よろしくお願いします。」


 そして最後に頭を下げて拍手をもらいながら、自分の席に戻ってくる。


「なんだ、普通に出来るじゃん。」


 ちょっと皮肉めいて言ってしまったが、実際はもう眠たそうな感じだったので、まともに自己紹介を出来るのか不安だった。


「私だってやれば出来る女なのですよ。」


 そう言ってVサインをしてくる須今さん。 普段からその心意気があればねぇ。 そんなことを考えていたら先程と同じように机に突っ伏してしまった。 まだ寝るの?


「館君。 次だよ。」


 前の席の女子にそう指摘される。 おっと、自分の番になったのか。 そそくさと教卓に昇り、みんなの方を向く。


「えっと、館 光輝です。 得意なことは手先が器用だと言われて、手芸をやっています。 今も簡単な道具は持ってるので、軽い縫い付けくらいなら出来ます。 趣味は音楽を聞く事です。 あ、ちょっとオタクよりなのを聞くので、ジャンルの話は無しでお願いします。 こんな自分ですが、仲良くしてくれればと思います。 よろしくお願いします。」


 そう一礼して、拍手をもらいながら自分の席につく。 疲れた。


「お裁縫が得意なのですね。」

「うわ!」


 隣から声をかけられたので驚いた。 須今さん寝てたんじゃないの?


「あ、あーうん。 まだまだ練習中の身だけどね。 そっちこそ料理が得意なんてちょっと意外かも。」

「意外・・・・・・ですかね?」


 僕の言ったことに疑問を持つ須今さん。 まあ今までの諸行を見てたらねぇ・・・・・・


 そんな風に感じながらレクリエーションの時間は過ぎていった。

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