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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
23/302

球技大会1日目 前半

球技大会、開催いたします。

「えー、本日から始まります、新入生クラス対抗球技大会の開会を宣言させて頂きます。 みなさまクラスの団結をもって、優勝を目指してください。」


目の前で息も絶え絶えに喋っているのは、教頭先生である。 かなりのご年配の方で、正直本当に立たせていいのかとこっちが心配になるくらいの姿をしている。 そして壇上から教頭先生が降りると、入れ替わりで体育の山森先生がジャージ姿で元気よく登場する。 これから準備体操に入るからだ。


「では準備体操を行う! 全体! 広がれ!」


生徒全員が両手を広げて、自分の広げた腕に当たらない広さを持って、準備体操に入る。


「ではまずは屈伸運動だ!」


そう言って屈伸を始めたが、僕の膝の関節からや「パキパキパキ」となった。


「あー、やっぱり関節がおかしくなっちゃってるかぁ。」


週末のジョギングを忘れただけとは思わないが、どうも足に少し負担がきているようだ。 ドッジボールなのでこれといって足を使うことも無いだろうが、やはり動けなくなるのだけは勘弁したいところだ。


球技大会のドッジボール側のルールはコート内に最初の外野以外が全員入り、試合時間15分の間にどれだけコート内に残っているかで決まる。 独自ルールとしては試合終了5分前、もしくはコート内にいる人数が5人以下になった場合、外野からのヒットで内野に戻れると言うルールだ。 ただし前者は両チームだが、後者は片チームしか許されないルールで、この条件が揃わない限りは、外野からの内野移動は出来ないし、外野は同じ人を2回当てないと当てたことにならないと言うそこそこ難しいルールになっている。


ちなみに総当たり方式で、それを当たる順番を変えてもう1日分行うのだ。 なぜ1日では無いのかと言うと、体調やら疲労感による変化で勝敗が決まる可能性があるからだそうだ。 別にそんなことをしなくてもいい気がするのだが。


バレーボールも同時平行で試合をするので、同じクラスで同時に試合を始めてしまうこともある。 そうなった場合は観戦は出来なくなる。 それは運が絡んでくるけれど、僕はあまり気にしない。


試合をしない間は観戦なので、他のクラス同士で戦っているドッジボールをボーッと観ているだけだ。


そんな風に使われなくなった人形のように脱力していると、安見さんがこちらに歩み寄ってきた。 そして隣に座るを


「随分と退屈そうですね。」

「そりゃ改めてルールやら日程やらを聞かされたら、なんだかなぁって思っちゃうよ。」

「試合観戦も乗り気ではない・・・と。」

「そんなところだよ。」


そう聞いている安見さんもあまり楽しくはなさそうだ。 小さく欠伸してるし。


「安見さん、お願いだから試合の途中で寝ることがないようにね?」

「館君。 それはいくらなんでも酷すぎますよ。」


うん。 自分でも何をいってるんだと思ったけれど、安見さんならやりかねないなと思って。


「大丈夫です。そうならないためにここにいるんですから。」

「え?」


その安見さんの言葉に疑問を持っていると隣にいる安見さんは体操座りしなが

ら、目を瞑ってこっくりこっくりと・・・・・・って今このタイミングで寝るの!? ここまでくると逆に感心できてしまう。 球技大会とは言え授業には変わらないのだがら、眠るのは勘弁してほしいのだが・・・


試合中に眠らないために今寝るって? どんな荒療治なの!? もう、試合が始まるまで僕が見てなきゃいけなくなっちゃうじゃん。 動けなくするのは駄目でしょ?


眠ってるのを確認しながら、心の中で安見さんにツッコミを入れていた。


「次、2組と3組、入ってください。」


2試合分が終わったところで試合に呼ばれる。 そういうわけで試合が始まるので隣の安見さんを起こす。


「安見さん、安見さん。 試合始まるから起きて。 安見さん!」


名前を3度も呼んで肩をポンポンと叩くと安見さんは嫌そうな顔をしながらもすぐに体を動かす。


「・・・すみません。 もう試合なのですね。 すぐに・・・」


寝惚けているのか体が前のめりになり転びそうになる。


「ちょっ・・・安見さん!」


いきなりすぎたが、なんとか咄嗟に体を安見さんの前に入り、倒れそうになった

安見さんの体を自分の体で受け止め、僕もしっかりと踏みとどまる。 やってて良かった、週末のジョギング。


「だ、大丈夫? 安見さん。」

「あ、ありがとうござい・・・」

「? どうしたの?」

「館君、今の体勢から動かないで下さい。 特に頭をこちらに向けないで下さい。」

「え?」


そう言って下げていた頭をちょっと上に上げる。 すると頭上からなにか柔らかいものが乗っかっているのが分かった。


・・・・・・・・・・・あれ? 僕今安見さんが上に乗っかってる状態なんだよね? ・・・・・・・・・・・・・あれ? じゃあ僕の今頭の上にあるものって・・・・・・・・・・・・


「ずっとこの体勢というのも良くないですね。 少し待ってください。」


そう言って安見さんは体勢を立て直して、僕の隣に立つ。


「倒れそうになった所をありがとうございます。 ・・・・・・えっと、今立てますか?」

「・・・・・・・・・・・・・ごめん。 もう少しこのままにさせてくれる?」


非常にまずい状態なので、自分を必死に落ち着かせていた。


先程「動かないで」と安見さんに警告をされたにも関わらず、動いてしまったことによる代償が来てるんだろう。 意識してしまったのは完全に間違いだった。


試合始まるんだってのに、なんでこんなところで、別の意味で()()をしてしまってるんだ僕。

この現象は思春期真っ只中な男子高校生なら絶対に分かる。 分かってもらいたい。

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