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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第3章 交際スタート
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3チームの観光

今回は趣向を変えて、館君達以外のチームの話を書きました。

せっかくいるので書いておこうと思った次第です。

視点は第三者視点になります。

「美しい・・・正しく黄金の輝きに相応しい建造物だ。」

「はい。 水面に移る金閣寺も美しく映られていますよ。 坂内君。」


 世界遺産の1つである金閣寺にいるのは、良樹、智美ペア。 お付きの館 陽子は後ろからその様子を見ている。


「先人の力というものは凄いものだと私は感じる。 昔は今のように機械が運んだりなどはせずに、全てが人力だった。 どれだけ多くの人が動いただろうか。 そしてその完成された建築物にどれだけの時間を要いたのだろう、その感動はどのようなものだっただろう。 そう思えばこの目の前の建築物はただ1つの建築物だと誰が言えよう。」


 少々オーバーなリアクションを取っている良樹だったが、それを見ている智美は好奇な目で見ずに、むしろ楽しそうに見ている。


「これもあの2人の愛の形かしら。」


 遠くから見ている陽子は2人の様子を見て、どこか納得していた。 そんな2人に水を差すのは悪いとは思いつつも、聞きたいことはあった。


「坂内君と江ノ島ちゃんは歴史は好きかしら?」

「私は演劇の関係上ですが、直接見ることによって、様々な観点を見れるのが素晴らしいと思っています。」

「京都の街並みは歴史を感じるので、そこにいるという実感と昔の人の思いが感じられて好きです。」


 その2人の言葉を聞いて、どうやら観点の一致からくる相違の一致という関係なのかなと陽子は感じた。


「そもそも2人は、互いのどこに惹かれたのかしら? もしよかったら叔母さんに聞かせて貰える?」


 陽子の質問に良樹も智美も顔を見合せ、少し考えた後


「私は江ノ島さんの清純な行動に、心を打たれましたね。 あのような振る舞いを出来るのは演劇内でもなかなか出来ないものです。」

「1つの物事に熱心な部分でしょうか。 1つの事に集中できるその姿勢に、感銘を受けました。」


 やっぱり恋人という観点じゃないのねと、2人から聞いた陽子はそう思った。


 ―――――――


「おー! 見てみて! 下町があんなに小さく見えるよ!」


 梨麻は京都タワーの展望台から覗いている。 他の高い建築物には劣るが、やはり上から見る景色は爽快なのだろう。 いつまでも梨麻のテンションは上がりっぱなしだ。


「君は隣で見に行かなくてもいいのかい?」


 それを少し後ろから見ている勲に対して、天祭はそう問いかける。


「俺は梨麻が楽しんでるのを見ているのが好きなんです。 それだけでも、来た価値はあると思うんです。」

「意外ね。 もっとグイグイ行くタイプかと思ってたのに。」

「それ他のやつにも言われましたよ。」

「ちょっと勲! 天祭さんと話してないで、一緒に見ようよ!」

「ほら、呼ばれてるわよ。 女の子を待たせちゃいけないわ。」


 そう言って天祭は勲の背中を押す。 勲自身も強引な人だと思いつつ、梨麻の隣に行く。


「天祭さんと何を話してたの?」

「んー。 梨麻について、かな。」

「えー? 変なこと言ってないでしょうねぇ?」


 梨麻は勲の言葉に頬を膨らませるが、その姿が勲にはむしろ可愛く見えてしまって、つい勲も頬が緩んでしまった。


「あ、絶対に変なこと言ったでしょ? そんな勲は嫌い!」

「そんなこと言ってないって。 梨麻が可愛いって言ってきただけだって。」


 さすがに言い過ぎかと思うくらいの感想を小舞は放つ。 言っている本人も恥ずかしそうにしているが、それ以上に梨麻は俯いて、

「・・・そんなの・・・私だって同じだし。」


 そう勲には聞こえないようにポツリと言った後に、またタワーからの景色を見ていた。


 ――――――――


「それにしても、なぜ、清水寺に? 確かに、風景は、綺麗です、けれど。」

「実物はこの目でしか見れないのがあったんだ。 「百聞は一見に如かず」。 テレビとかで放映されているものを見るよりも、やはり直接見れる方が断然美しく見えると思ってね。」


 加奈実の質問に陸斗は冷静に答える。 2人、いや保護者の館 昇を含めた3人は、清水寺の一番の名所である場所まで続く階段の道中であった。


「やはり名所なだけあって、人が多くなってきたね。」


 その道中の階段は人だらけで埋め尽くされていた。 かなり密集状態になっていて、上の方が見えなくなっている程だ。


「これだと、はぐれて、しまいそう、です。」


 加奈実の言うように、すし詰め状態になってしまっては上までにはぐれる可能性は高い。 そう思ったのは陸斗も同じで、その状況を打開するためにある事を提案した。


「それでは、はぐれないように、互いの手を、握っていこうと思ったのだが・・・どうだろうか?」


 その提案に加奈実は一度は首を傾げたが、すぐに理由を理解したようで、陸斗の手を取る。


「はい。 これなら、はぐれない、ですね。」


 屈託の無い優しい笑顔を見せる加奈実に陸斗は、少しの罪悪感というものを感じていた。 確かに陸斗は意図して手を繋ごうと言ったのではない。 だが異性と手を繋ぐ事に少しは抵抗があった。 あれだけ女子には囲まれながらも、それでも自分の中で決めていた「女子に触れることは、余程の緊急時以外ではしない。」という掟を破ることになるのだから。


 しかしこれを緊急時だと思いながらも、陸斗は自分の左手に感じている加奈実の熱に、鼓動が高まっているのが分かった。 陸斗は改めて、彼女の事をもっと知りたいと感じた程に。



「ふわぁ・・・! 清水寺は、秋の紅葉が、有名ですが、桜の景色も、素晴らしいですね。」

「「清水の舞台から飛び降りたくなる」か。 それほどまでに綺麗だと感じる景色。 見事だ。」

「これを見るために、ここまで上ったとも言えるね。」


 うんうんと頷く光輝父。 実際には2人でこの光景を見ているはずになるのだったのだが、そこは保護者として見ているので気にはならない。


「そうして2人を見ていると、昔の僕達そっくりだ。」

「館君のこ両親とですか?」

「互いに不器用だったんだ。 自分の想いを伝えるのも、それに気付くのも。 時に焦り、時に離れ、そんなことを繰り返して、今の僕らがあり、光輝がいるんだよ。」

「そうだった、のです、か。」

「だから不器用な内にこの景色を目に焼き付けるのも、悪くはないよ。 さ、まだまだ時間はあるんだ。 思う存分見ればいい。」


 そう言って3人は、清水の景色を眺めていた。


「光輝の方も上手く・・・いや、心配することはないか。」


 昇がそう呟いた言葉は、目の前で眺めている2人には聞こえてはいなかった。

次回は館君達の話に戻ります。

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