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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第3章 交際スタート
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移動、到着、旅館まで

「それ、もーらい。」

「あ! 俺も狙ってたのに!」

「早い者勝ちだよぉ。」

「では私はこれを貰いますね。」

「むむっ。 なかなか鋭いところを付いてくる。」


 目的地までは新幹線で乗ってもかなりの時間を要するため、僕達はみんなで買ってきたゲームで遊ぶことにした。 ちなみに席順は僕と安見さん、向かいに円藤さんと沢渡君。 後ろの席には小舞君と濱井さん、江ノ島さんと坂内君で座っている。 残りの保護者枠の人達は通路の向こうを挟んだ先にいる。


 今やっているのは取り合いを主体としたカードゲームで、相手よりもいかに早く絵柄を揃えられるかの勝負をしていた。


「やった! これで揃った!」

「くそぉ! こういうのは本当に強いなぁ! 梨麻は。」

「濱井さんの強運か、僕らの捨てるのを見込んでいるのか。 どちらにしても、完封されるのは、さすがにすごいと言わざるを得ないね。」

「ふふっ。 本当に面白いですよね。 このゲームは。」


 このカードゲームはただカードを奪い合うわけではない。 相手の捨てるカードや自分が貰えるカードをどうやって見極めるかと言うシンプルながらも奥が深いゲームをやっていた。


「次はそっち組がやってみるか? 結構難しいぜ。」

「そうかなぁ? あんまり難しそうには見えなかったけど。」

「賢い奴の余裕かよ。 あーやだやだ。」


 小舞君からそのカードゲームの箱を借りて僕らだけでやろうとした時、小舞君から小言を言われてしまった。 余計なことを言ってしまったかなと思いつつも、僕らも目的地に着くまではカードゲームだったり、心理テストだったりを楽しんだ。



「京都に着いたーー!」


 味柑ちゃんが改札口を出るなりそう叫んだが、そう思うのも無理もない。 新幹線で向かっても大体1時間はかかる。 座りっぱなしは意外と腰にくるものだ。


「ふっはぁ! 正しく京都って感じだなぁ! タイムスリップしたかのような錯覚を覚えるぜ!」

「いつ以来でしょうか。 こうして京都に出向くのは。」

「あ、見て! もう桜が咲いてるところもあるよ!」


 みんな思い思いに京都駅周辺の景色を楽しんでいる。 旅行と言うだけで大袈裟かもしれないけれど、やっぱり雰囲気は自分達が住んでいる場所とは全く違う。 そんな風景だった。


「はいはい。 みんな電車の旅でテンションが上がっているのは分かるけれど、まずは宿泊先に向かうわよ。」


 母さんがみんなを一ヶ所に集めて、そう宣言をする。 確かに今の大荷物ではどこに行くにも邪魔になってしまうので、預かって貰うのが一番安心だ。

 そんな訳で僕達は旅館行きのバス停で待つことにした。


「それにしても、昇君が貰ったチケットすごいわよね。 半分はほとんどタダみたいな感じだもん。」


 天祭さんの言うように、今回の旅行の大半の資金は浮いていて、しかもその旅行プラン事態にも割引がかかっているので、全体を通しても半額以下で収まっているのだ。


「名所観光とは言えここまで安くなるなんて夢にも思わなかったわよ。 これもひとえに昇さんの頑張りのお陰かしら?」

「そんな大したことはしてないさ。 ただ今まで貰う機会が無かったけれど、光輝の事もあったから、まとめて貰っただけだよ。」

「でも、それだけ貰えるのに、どうして今まで、貰わなかったんです、か?」

「僕個人で貰っても使い道は無かったからね。 それにいつか大人数で行けるように、こうして貯めていたんだよ。」


 その父さんの言葉に僕は溜め息をついた。


「どうしました光輝君? 溜め息をついて。」

「いや、父さんの性格らしいなって思ってね。」

「そうねぇ。 昇さんは何だかんだで、自分よりも相手の事を尊重しちゃうからねぇ。 この人のわがままを聞くのも一苦労だったりした時期もあったわよ。」


 安見さんからの質問を聞いて、返答をしつつ、バスが来たのでそれにみんな乗る。 僕と母さんは父さんが単身赴任の時、父さんのために、目一杯父さんがやりたいことをやらせてあげようと考えていたりする。 だけどそれを父はやりたがらない。 正確には「個人では」やらない。 誰かしらといて、初めてやることが多いのだ。


「だから基本は家で色々とやる人なのよ。 昇さんは。」

「ふーん。 どっかで聞いたことのあるような話ですね。」


 小舞君の一言に僕は首を傾げる。 いったいどこにそんなものがあっただろうかと見ていると、僕の友達みんなが頷いていた。


「え? なんでみんなそんな反応なの?」

「近くで見ているからですよ。 同じ様な人を。」

「それって僕の事? 安見さん。」

「他に誰がいるのでしょう?」

 とうやら相当父さんに似てきているようだ。 複雑な気分だなと思いながらバスに揺られていた。


「さ、着いたわよ。」


 なんだかよく分からないまま旅館に到着する。 風貌としては新しく見えるも、どこか老舗のような雰囲気も醸し出している旅館だった。 これから1日お世話になるので、色々と迷惑はかけられない。


「すみません。 こちらのパスを使いたいのですが。」

「畏まりました。 団体様での宿泊でよろしいですか?」

「そうして貰えると助かります。」

「それではお荷物はお預かり致します。 チェックインは午後の4時からとなっております。 どうぞ、観光をお楽しみ下さい。」


 そう言ってフロントの係の人は奥に入っていってしまった。


「さて、これから自由行動になるわけだけれど。 みんな行きたい場所はあるかい?」

「私は金閣寺の方に行きたいと思っています。 遠くからても放たれるあの黄金の輝き。 人生で一度は見ておきたいものでして。」

「はい! 私は京都タワー! 他のタワーは見たことあったけど、京都タワーだけはまだ間近で見たこと無かったんです!」

「僕は清水寺に。 やはり有名どころですから、一度は行ってみたいものでして。」


 坂内君、濱井さん、沢渡君の3人がリクエストをした。 こうなってくると、一緒に行くよりは別行動の方が良いんだろうなと思う。 その辺りはみんなも同じようで、まだ朝早くだけれど、行きたさにみんなソワソワしている。


「よし、それではそれぞれの所に大人が一人つくのを条件に、みんなの行きたい場所に連れていこう。 それこらある程度の時間になったら、有名な観光地の一つ、八坂神社で落ち合わせようか。」


 そんな父さんの意見にみんな賛成をした。


「光輝や安見君は行きたいところはないかい?」

「それなら僕は・・・」

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