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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第3章 交際スタート
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初デートは映画で

 しばらくして下に降りると両親の姿はなかった。 それも当然だ。 今日は月曜日なので普通の人は学校だったり仕事だったりで家を空ける。 だからこそ凄く不思議な感覚に陥っていた。


「なんだか世界に私達だけみたいな雰囲気ですね。」

「いい得て妙・・・かな?」


 それほどに朝は清々しく、朝日がベランダに差し込んでいた。


「朝ごはんを食べて、少ししたら出掛けようか。」

「そうですね。 早く行きすぎても、上映していないでしょうし。」


 そういって僕らは机に用意された2人分の朝食を食べながら、朝のテレビを見て、何気ない会話にいそしむ。


「そういえば映画ってどんな映画を観に行くのさ? なにか気になる映画があるって言ってたけれど?」

「それは・・・あれですよ。」


 そういって安見さんはテレビを指差す。 そこに写っていたのは映画の、しかも恋愛映画のコマーシャルだった。 高校生の男女がお互いに想いながらもなかなか進展しない。 それを周りの人間が後押ししようという内容だった。 実写らしいので現実味がある。


「恋愛映画にしては随分とコミカルなのをいったね。」

「最初はラブコメの方が入りやすいかと思いまして。 私たちの基準からして。」

「あ、やっぱり参考にするために?」

「自分たちなりによりは参考に出来るかなと思いまして。」


 それは確かにそうなのだけれど、恋愛の価値観を他の人から学ぶのも、少し違うような気がするんだよね。 なんとなくだけど。


「その辺りまで気にしてたらカップルなんてやってられないか。 ご馳走さま。」

「ご馳走さまです。」


 そんな事を考えながら半ば流すように食べていた朝食を片付けて、僕らは早速出掛け・・・ようとしたのだが、1つ気になることがあった。


「安見さん。 着替え、持ってきてるわけないよね?」


 そう、昨日の送ったあの日のままならば安見さんは制服以外に着ている服がない事になる。


「そうですね。 一度戻ってからの方がいいでしょうか。」

「それは構わないよ。 というか流石に制服のまま行くのはちょっとね。」


 文化祭の振替休日だというのを、どこまで信用されるか分からないので、ならばまだ私服の方が安全であると僕も安見さんも思ったのだった。



「では少しお待ちくださいね。」


 安見さんは自分の家に入っていく。 家族がいないとは思うが流石に入ることはしなかった。 しかし玄関先で待っているのも不審者のように思われるので、庭先で待つことにした。


「ワンワン!」


 庭先に入ると元気な犬の声、須今家の飼い犬であるマルチが現れる。 吠えたのはおそらく警戒からではなく喜びからであろう。


「やぁマルチ。 最近はなかなか会えなかったね。」


 そういって僕が近付くとマルチもこちらに飛び込んできて、しゃがんだ僕の太ももに乗って顔を舐めてきた。


「ははははっ。 くすぐったいよぉ。」


 マルチにも気に入られているようで、安見さんが来るまでマルチと戯れていた。



「何故わざわざ学校方面のショッピングモールに?」

「デートの目的は一応映画だし、学校近辺なら生徒だって言えば分かってもらえるかなって思って。」

「でも知り合いと遭遇する可能性がありませんか?」

「まあそこは・・・諦めよう。 どうせ掲示板でバレてるわけだし。」


 僕たちは前に行っていた大きなデパートではなく、学校近くにひっそりと、それでもこの辺りでは存在感のあるショッピングモールに来ていた。 規模はさほど大きくはないが、大きいのがいいというわけでもない。 むしろ僕達的にはこれぐらいが1日で回るなら丁度いい。


「今だと上映時間は・・・11時のものがあるようですよ。」

「時間はまだ10時だけど、あんまり遅いと席を取れなくなりそうだから、ここは早めにいくのがいいかな。」


 映画館の前の広告で僕たちは色々と思考して、一度中に入り、チケットだけ取ることにした。 最近は店員さんに言わなくても機械がやってくれるのでありがたい。


「席はどの辺りにする?」

「平日ですし、あまり端じゃなくても良いと思います。」

「なら、この辺り?」

「そうですね。 その辺りにしましょうか。」


 そういって僕は指定した2つの席をポチポチと押していく。 そして料金画面になる前に、こんな文が現れる。


『本日は月初めの平日と言うことで、通常料金から100円お値引きさせていただきます。』

「へぇ、そんなキャンペーンやってたんだ。」

「あまり映画館には来ないので、これは新鮮でした。 ラッキーというものですね。」


 そして「はい」を押すともう1文現れる。


『本日はカップルでのご入場ですか?』


 そう聞かれる。 安見さんを一度見て、今までならここで「いいえ」を押していたが、


「光輝君。」


 名前を呼ばれて、「はい」のボタンを押す。


『かしこまりました。 それではカップル割ということでさらに100円お値引きさせていただきます。』


 ちょっと恥ずかしいけど、そういうサービスなら仕方がない。 ありがたく受け取ろう。


 そして料金を払って、僕達は別の売り場にいく。 映画館と言えばポップコーンでしょとは安見さんの談である。


「どうする? 味を分ける?」

「やっぱり味を楽しみたいですから、せっかくなので塩とキャラメルのハーフ&ハーフにしましょう。」

「飲み物はいかがいたしますか?」

「僕はアイスコーヒーで。 ガムシロップもお願いします。」

「では私はアイスティーで。 味はレモンティーにします。」


 そう注文をしていると、どうやら上映時間が迫っているようなので、受付の人にチケットを渡して、シアター内に入ることにした。


「なんだか楽しみですね。」

「それは映画が? このデートが?」

「んー。 どちらだと思いますか?」


 イタズラっぽい笑顔を見せる安見さん。 僕としてもどちらでも良さそうだと、改めて感じなから、席につくのだった。

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