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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第2章 2学期~文化祭
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悪い生徒には粛清を 中編

前回のあらすじ

生徒会との共同戦線

最初はざっくりとした説明から入ります

 強化週間最終日、私達はそれぞれで動きを取り始めた。


 まずは役割分担についてだが、囮役としては佐渡君と江ノ島さんに協力をしてもらった。 成績優秀者の不純異性交流という餌で獲物を食らいつかせるのが目的だ。 最初は円藤さんが名乗り出たが、見られているのが前提で作られる演技であり、そもそも円藤さんでは別の相手が食らいついてしまいそうだったので、彼女には濱井さんとともに噂がどこまで移り変わっているかを調査してもらうことにした。 この手の噂話は女子の方が食らい付く。 そこから逆探知をして、犯人の全体像を掴むのが目的だ。


 そして私と小舞君は現行犯を見つけるために生徒会長の指示のあった場所で待機をしている。 これには写真を直接撮っている人物が現れるのではないかという期待と、もし現れなかったときのための保険として犯人と同じ手口を使って、生徒会室まで誘導するのが主な目的となっている。


 しかも今回は館君達のような偶然ではなく、敢えてその噂を流すことで、より相手を釣りやすくすることも入っている。


 ざっくりと説明を聞いてみたが、これだけの事をして、犯人がどこかで現れる確率は本人で8%、取り巻きやらで10%、模倣犯で20%なのだそうだ。 期待値は高くはない。 だが、なにもしないで2人にレッテルを貼られたままにするのは癪に触る。 だからこと、成功失敗ではない。 やったことに意味があると信じている。


「しかし、ここまで勘違いが酷くなるとは思わなかったな。」


 円藤さんと濱井さんの2人の聞き込みによる館君と須今さんの噂について様々な事が言われていた。 基本的には悪評が多かったが、それを家庭部の部員が噂の改善に回っていたらしい。 とはいってもこちらも数が多いとは言い切れないし、なにより一部の生徒にしか行き渡らなかったようで、悪評が多いことには変わりなかった。 だがそういう行為だけでも、我々以上にやってくれていることに感謝した。


「さてと、あとはこちらのみになるな。」


 朝に噂の聞き込みを共有し、昼休みを利用して囮作戦を始めることにした。

 作戦と言っても、普段からあの二人がやっていることを模しているに過ぎない。 あれだけの行為で呼ばれるのであれば、囮の二人が少し恥ずかしい想いをするだけだ。 演技でも難しい事をさせるのだ。 クオリティは落ちても仕方ない。


 例の木陰に座っている二人を、私は裁縫室側から、小舞君は逆サイドから見張っている。 二人が対立した位置に立つことで死角を無くす作戦だ。


「さて、吉と出るか、凶と出るか。」


 佐渡君と江ノ島さんには、一応周りは気にしないで着々と芝居をしてもらっていいと命名してある。 噂を信じてくる輩は多いし、なにより人が多く通る場所でもある。 カメラを向けている人物には徹底的に写真に収めていく。 犯人像がいるいないに関わらずだ。 小舞君の死角側も忘れずに確認しておく。 この中にいればいいのだが・・・


『生徒会より連絡します 1年2組の江ノ島 智美さん 1年4組の佐渡 陸斗君 至急生徒会室に来てください。 繰り返しお伝えします。 1年2組の江ノ島さん 1年4組の佐渡君 至急生徒会室に来てください。』


 午後の授業の終了のチャイムの後、そのような放送が流れる。 クラスメイトはざわついていたが、我々からしてみれば慌てるようなものでもない。 江ノ島さんが出ていったのを確認したのち、私達も距離を置いて、生徒会室に向かうことにした。


 3階奥の生徒会室は階段を上り、角を曲がればそこから先は一直線、数本の柱がない限りは別の道は存在しない。 なので我々が後ろにいることを悟られぬように遠くから確認をすることにした。 もちろんまだ来ていない可能性もあるので、3階の階段の端の太陽の影で作られる死角と2手に分かれた。 柱側が私と円藤さん。 階段側が小舞君と濱井さんだ。


 佐渡君と江ノ島さんが生徒会室に入ったのを確認し、後ろの二人にも合図を出す。 さて、このまま犯人がいるのか、来るのか。


「・・・む?」


 そんなことを思っていたら生徒会室側から見て2本目の柱、なにかが動いたように見えた。 そしてその動いたものは徐々に大きさを増して、そして生徒会室に近づくために動き出した。


「待ってください!」


 それがなにかを確認する前に円藤さんが動き始めた。 そして向こう側の方も唐突な登場に身動きが取れなかったようで、そのまま円藤さんに捕まってしまった。


「円藤さん!」

「なんだ!? なにが起きたんだ!?」

「何事だ! 一体!」


 その音を聞き入れて、皆がその場に集まる。 円藤さんの下で少しジタバタしていたが、この人数で逃げられないと分かると動きをやめた。


「こいつがなにかをしようとしていたのか?」

「別に私はなにも悪いことはしようとは思ってなかったんですよぉ。」


 会長殿の台詞に下敷きになっている人物が声をあげる。 円藤さんが退くと、そこにいたのはショートヘアで頬の部分に少しそばかすの出来ている女子が顔を出した。 首もとからはポラロイドカメラがぶら下がっていた。


「む? お前は写真部の・・・」

「はい、2年の江東 瞳子(こうとう とうこ)です。 しかしこれは一体・・・?」

「その前に確認しよう。 お前はこの場には誰かに雇われてきたのか?」

「いえ、私は一人で独自取材のために来たんです。 1年優等生二人の不純異性交流なんて噂を聞いたらいてもたってもいられなくてね! こうして単身乗り込んだ訳ですよ。」

「残念だが、その噂は我々が犯人を見つけるためのデマだ。 お前さんの望んだようなものではないよ。」


 会長殿がそういうと江東先輩は、「ガーン」という音が聞こえるかのような驚きと落胆の表情をして床に手をついた。


「そんな・・・折角のスクープがデマなんて・・・って、犯人?」


 どうやら江東先輩もその言葉には気になったようだ。 ここで本来ならなにも知らない第三者に、今起きていることを説明するべきなのかと問われるところだが、会長殿は手を顎に当て、少し考えた後、


「江東。 これから話すことは他言は無用だし、今の時間ならばまだ学校に残っている可能性がある。 我々の話を聞いた上で、その件についてお前からの情報の協力をしてもらえないか?」

後編へ続く。

果たして犯人とは? そして真の目的とは?

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