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貰い湯


電灯が点いていない真っ暗な風呂場から人の声がする。


「あぁー温けえな」


「ホント、ホント、好い湯だね」


「此処の風呂は広くて、皆が一遍に入浴できるからありがたいね」


40年以上前に亡くなった爺さんが、大家族だった家族全員が仲良く入浴できるようにと金をかけて造った自慢の風呂だから当然だろ。


とは言っても、それは40年近く前の昭和の終わり頃までの事。


爺さんが亡くなったあと同居していた叔父さんや叔母さんが都会に出て一家を構えた従兄弟たちに引き取られたり、私の両親や連れ合いのように亡くなったりしたためこの広い家に住んでいるのは今では私だけ。


従兄弟たちのように都会に出て行き一家を構えた息子たちや娘たちが一緒に住もうと言ってくれているが、先祖代々守ってきたこの土地を離れる気にはなれないのだ。


「お風呂ありがとうございました」


「ありがとうございます、お陰で雪に塗れて凍えた身体が暖まりました」


「ありがとね」


家の風呂で貰い湯をしていた人たちが風呂からあがり、私に口々に礼を言いながら門から外に出て行く。


それに私がこの土地を離れたら貰い湯を楽しみにしている彼ら、隣の墓地に埋葬されている人たちの楽しみが無くなってしまう。


孫の1人が農業大学に進み農家を継いでくれると言ってくれている。


私も孫が大学を卒業して私の下に来てくれるのを楽しみにしながら、広い風呂にかかるガス代や水道代はチョット痛いけど、貰い湯を楽しむ人たちと共に此処で頑張って行こうと思ってるのだ。







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