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節分とは
その日の夕方、ある家の中から子供の泣き声が響いた。
「お父ちゃんが! お父ちゃんが! まめ食べちゃったーワーン」
母親が豆まきをやりたいとねだる子供の為に煎った豆を、父親が酒の肴として大半を食べてしまったのだ。
それを見て母親は父親の前に置かれていた器の中の豆を鷲掴みする。
そして鷲掴みにした豆を旦那の顔に叩きつけ怒鳴る。
「子供の為に煎った豆を食うなんて父親の資格が無い! お前みたいな宿六は家から出ていけー!」
すりこぎ棒を振り回し鬼の形相になった妻に追いかけ回され、雪がシンシンと降る外に裸足のまま家から叩き出される父親。
節分とはそういう行事なのであった。




