獣人
あれは夢だったのだろうか?
昨晩、狩りの途中猛吹雪に遭遇してしまい一寸先も真っ白で二進も三進も行かなくなり、その場でビバークする。
簡易テントの中で身体を縮こませ丸くなっていたが、寒さで震えが止まらない。
そんな時、テントの外から人の声がした。
「寒い! 寒い!」
「寒い? って、あんたが獲物を一匹でも仕留めるんだ! と言って駄々を捏ねたから帰りが遅くなったんじゃない」
「ゴメン、って、アレあそこテントがある」
「誰かビバークしてるのかな? 私たちも入れてもらいましょうよ」
その言葉が終わらないうちにテントのジッパーが外から開けられる。
テントの直ぐ外にいたのは、等身大の猫。
二本足で立つ猫を写真などで見たことがあるが、その猫の手足を人の物に変え服を着せたような感じ。
「あら、人だわ、ま、良いか、お邪魔します」
そう言いながら等身大の猫の一匹がテントの中に入って来る。
続いてもう二匹。
最初に入って来た等身大の猫が、「暖かいー!」と言いながら私に抱きついて来た。
狭い簡易テントの中は人、彼女等を人と言って良いのか分からないがギッシリと詰まる。
狭い簡易テントの中で女の子たちと抱き合い密着しているうちに何となく求め合い、愛し合ってしまう、そう、4Pって奴だ。
翌朝目覚めるとテントの中に女の子たちの姿は無かった。
あれは生きたいという思いから見た夢だったのだろうか?
あの時から10ヵ月以上過ぎた今、あれが夢では無かった事を知った。
雪原に隣接する森の縁に建つ我が家の玄関の前に、3人の等身大の猫が立っている。
彼女たちはそれぞれ、自分たちは猫の獣人でミケ、ニャー、マナだと名乗った。
彼女たちはそれぞれ3匹から5匹の人のような仔猫が入った籠を抱え、口々に貴方の子供だよ言いながら籠を私に差し出していたからだ。




