ホワイトアウト
あ! あった…………。
あって欲しくない物が目の前にある。
周りを見渡しても人の姿は皆無。
此の極寒の地にいるのは、私と私を此処まで連れて来てくれた原住民の人たちだけ。
原住民と言っても此の場所に一番近い集落の住民。
集落は此の場所と約500キロ離れている。
あって欲しく無いのにあった物とは、40年前まで○○本線を走っていた特急電車。
此処にはあって欲しくなかった特急電車以外の物も沢山鎮座している。
120年程前に北海で遭難信号も出さずに消えた豪華客船、独ソ戦時代のドイツとソ連の戦車、ベトナム戦争中雲の中に入った切り消息を断ったアメリカ空軍の攻撃機、2000年前のローマのガレー船と思われる船、200年前南極大陸に探検隊を上陸させたあと行方が分からなくなった帆船など、今上げた物以外にも吹雪や雲の中に入った切り消息を断った乗り物が多数あった。
因みに此処は1番近い海から1000キロ以上離れていて、海から此処の間には標高4000メートル級の山脈が横たわっている。
バミューダトライアングルという言葉を聞いた事があると思うが、此の場所はバミューダトライアングルで消息不明になった船舶や航空機と同じように突然消息を絶った、ただし此方は、吹雪や雲によるホワイトアウトによって消息不明になったらしい物が集まっている。
否、何者かに集められていると言った方が良いかも知れない。
特急電車には、偶々その2日前に季節外れのインフルエンザに罹患して置いてきぼりになった私を含む少数の者を除き、2年生の殆ど全員が参加していた修学旅行を楽しむ同級生たちや各クラスの担任の先生方が乗っていた。
行方不明の第一報は、○○本線と並行している国道を走っていたトラックの運転手からもたらされる。
トラックを追い抜くように走行していた特急電車が、地吹雪で真っ白になった所に入った切り出て来ないとの一報。
10両近い客車を引っ張っていた特急電車が、何の痕跡も残さずにまるごと消息を絶ったのだ。
大騒ぎになった。
しかし消失してから十数年経つと人々の記憶から消え去り忘れられていき、偶にテレビであの消失した特急電車は何処に? などのタイトルがついた番組が流されるだけになる。
私は特急電車と共に消失した幼馴染を探し続け此の場所に行きついたのだ。
此れからも私は愛し合っていた幼馴染の彼女を見つけるまで、何年掛かってでも消失した彼等を探し続けるだろう。




