3/86
影
雪がチラチラ舞う夜、公園の脇の道を千鳥足の2人の男が肩を組ながら歩いていた。
男の1人が公園のブランコに目を止める。
正確にはブランコではなく、ブランコに腰掛け雪見酒をしている女性の姿に。
「こんばんわ。
1人雪見酒ですか?
嫌じゃなければ一緒に飲みませんか?」
「こんばんは。
宜しいのですか?」
「野郎2人で飲む酒より、女性を交えて飲む酒の方が美味しいでしょうから」
「じゃ、相伴させて頂きます」
男たちは誘った女性を真ん中に挟み歩む。
雪を降らせていた雲が風に払われ月が顔を覗かせる。
月に照らされた3つの影のうち真ん中の影は人の物では無かった。
翌朝、炬燵の中で寝返りした男の手が水に浸かり、その冷たさで目を覚ました男は水の出所に目を向ける。
男が目を向けた場所、昨晩女性が座っていたところには溶けかかった雪ダルマが鎮座していた。