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蜘蛛
部屋のドアがノックされ課長が中に入ってくる。
課長は掘り炬燵を囲んで駄弁っている俺たちを見回してから声を掛けて来た。
「宴会は7時からだから宴会が始まる前に風呂に入ってこい。
飲んだあと風呂に入るんじゃないぞ」
「「「「分かりました!」」」」
今日は会社の新年会、奇跡的に道が空いていて予定より2時間も早く旅館に到着してしまい暇をもて余していたところだから丁度よい。
掘り炬燵から出ようとした同僚がつんのめって倒れた。
「どうしたよ?」
「何かに足が絡まった」
「うん、どれどれ……ヒィィィィーー!」
炬燵布団を捲り炬燵の中を覗き込んで俺は悲鳴をあげる。
掘り炬燵の中は蜘蛛の糸で覆われ、炬燵の底にいる大きな蜘蛛が俺を睨み付けたからだ。