真冬の怪異

雪女

今、絶体絶命のピンチ。

雪女に凍り漬けにされる寸前。

僕は落とし物を探しに来ただけなのに。

営業時間ギリギリまでスキーを楽しみ旅館に帰る途中、手袋の片割れが無い事に気がつきスキー場に戻って来た。

だけど戻って来た時には営業は終了していて管理棟は真っ暗。

踵を返そうとした僕の目にスキーコースの山の中腹に人がいるのが映り落とし物が無かったか聞きに行ったら、それがコースに雪を降らせていた雪女でスキー場のインストラクターだった。

「お願いです！

誰にも喋りませんから、助けてください」

「本当に喋らない？」

「喋りません！

絶対に誰にも喋りません！」

「じゃ、今回は助けてあげる。

でも、誰かに喋ったらどうなるか分かっているわよね？」

「は、はい！

分かってます」

ピンチを切り抜け落とした手袋の片割れを持って旅館に帰って来た。

誰にも喋らないって約束したけど、なんか口がムズムズする。

だから僕は掘り炬燵の布団を捲り、炬燵の底に向けて怒鳴った。

「スキー場のインストラクターは雪女だぁー！」

掘り炬燵から顔を上げたら掘り炬燵が消え、雪女が怖い顔で睨んでいる。

「喋るなって言ったのに、喋ったわね！」

「で、で、でも、人には喋っていません」

「それもそうね、どうしようかしら」

雪女が首を捻りながら考え込む。

でも早く結論を出してください。

此処にいるだけで凍り漬けになりそうなんです。