13/86
子供達
雪が深々と降り続ける深夜、深い山の奥の山と山の間にある谷底の底の開けた場所で沢山の子供達が遊んでいた。
雪ダルマや雪の像を作る子供達や雪玉を投げ合っている子供達、降り積もる雪をものともせずに追いかけっこしている子供達など、幾つものグループに別れて笑い声をあげ楽しげに遊んでいる。
時が経ち、夜の闇が消え雪を降らす厚い雲の下でも分かるくらいに明るくなると、遊んでいた子供達は大地を覆う雪の中に溶け込むようにいなくなった。
最後に残っていた男の子が呟く。
「今日もお母ちゃん迎えに来てくれなかったな」
万年雪の底、大地の直ぐ上には小さな骨を懐に抱いた多数のバスの残骸が転がっている。
核戦争から子供達を守るため、核シェルターに向かっていた学童疎開の一団。
核シェルターに到着する間際着弾したICBMの余波を受け、一団のバスは全て谷底に転がり落ちる。
子供達は親と別れる際言われた「後で必ず迎えにいくから」の言葉を信じ、あれから数千年経った今でも親が迎えに来るのを待ち続けているのであった。




