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傘地蔵裏話し


峠の地蔵にお爺さんが傘を被せてから一刻ほど過ぎた頃、お爺さんが住む村の隣村のごうつくばりで渋ちんの庄屋の一行が通りかかった。


傘を被った地蔵を見て庄屋が声をあげる。


「何だ、何だ、地蔵が傘を被っているわ。


新品の傘ではないか勿体無い。


被せたのはうちの村の者ではないだろうな?


オイ! お前たち!


地蔵の傘を取り上げろ」


庄屋は供の下人達に命じる。


「で、でも、庄屋様。


そんな事をしたら罰が当たります」


下人頭が庄屋に異を唱えた。


「罰? 罰なんて当たるわけがないだろう!


地蔵なんて仏の姿に似せて彫られた像に過ぎない。


だから罰なんぞある訳が無い!


分かったらサッサッと取り上げろ。


あ、そこの手拭いも引っぺがせ、小汚ない手拭いだが足拭きくらいにはなるだろう」


「へ、へい。


お前たち! 傘と手拭いを引っぺがせ」


下人頭は配下の下人達に命じる。


命じられた下人達は小さく「申し訳ございません」と呟きながら地蔵が被っている傘や手拭いを引っぺがした。


庄屋一行が庄屋の屋敷に帰り着いて数刻後。


納屋の片隅で筵を被り身を寄せあって寝ている下人達の耳に、ドンガラガッシャン!!と何かが崩れ落ちる轟音が響いた。


寝ぼけ眼で納屋の外に駆け出て来た下人達の目に映ったのは。


倒壊した母屋と母屋に隣接していた蔵。


それに、母屋の奥の部屋に仕舞いこまれていた沢山の証文が風に飛ばされ宙を舞い、それを必死に追いかける庄屋一家の姿だった。


駆け出て来た下人達を見て庄屋が叫ぶ。


「お前たちも証文を拾え!」


下人達が庄屋の方へ向かおうとしたとき下人の1人が叫ぶ。


「オイ! 皆、あれを見ろ」


下人が指差したのは、傘や手拭いを被った地蔵たちがその両肩に米俵や炭俵を担ぎ歩み去る後ろ姿だった。




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