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親友


「見て! あそこ、山小屋があるよ」


「助かった」


「ホラ、鈴花、あそこまで頑張って」


「さ、寒いよー」


私たち4人は日帰りの冬山登山に来て遭難した。


吹雪に巻き込まれ方向を見失う。


吹雪の中では方向も上下も分からなくなり彷徨うだけ。


辛うじて4人がロープで繋がり、バラバラにならずに済んでるのが救い。


半分程の高さまで雪で埋まっていた扉をこじ開け中に入る。


中はガランとして何も無い。


此の山に設置されている避難小屋のようだった。


固形燃料ストーブに火を点けると小屋の中が少し暖まる。


「このまま吹雪が収まるのを待ちましょ」


「そうだね」


「少し暖かくなったけど寝られる程じゃ無いから、身体を動かして朝を待とうよ」


「それじゃ、スクエアをやろうよ」


「えー、それ、怖いやつでしょ」


「鈴花は怖がりだからな」


「でも他にやれそうなゲームは無いから我慢しなって」


「う、うん」


「それじゃ順番はジャンケンで決めようか?」


「ちょっと待って」


「なに?」


「丁度さ、皆んなの名前の頭文字でスクエアになるからその順番にしない?」


「あ、それいいね、それじゃ最初はスクエアのすで鈴花あなた、それで次のくは久美子のアタシ、次は絵里で最後は歩だね」


「ウン、最後にならないなら良いよ」


「何だよそれじゃ1番怖い4番目は私じゃないか」


「大丈夫よ、5人目がいたらアナタの得意な空手でぶっ飛ばせば良いんだから」


「分かったよ」


私たちは避難小屋の四角に散らばった。


「それじゃ行くよ」


「「「イーヨー」」」


私は次の角に向けて歩く。


次の角に久美子は居らず、小さなぬいぐるみが置かれていた。


「アレ? チョット、久美子何処にいるの?」


「「「……」」」


「ねー皆んな、返事してよ!」


懐中電灯で周りを照らす。


「え? なんで? 誰もいないの?」


此処だけじゃ無い、絵里がいる筈の角にも歩がいる筈の角にも小さなぬいぐるみが置かれていて、人の姿が無い。


「え? え? え? どういう事?」


……あ! あぁ……そうだ……そうだった……。


私はぼっちだったんだ、だから何でも話せる友達が欲しくて、小さなぬいぐるみに名前を付けて何時も持ち歩いていたんだ。


だから此の避難小屋にいるのは私1人。


懐中電灯の明かりを消し3つの小さなぬいぐるみを抱きしめて、避難小屋の真ん中に置かれている固形燃料ストーブの前に座り込む。


抱きしめていたぬいぐるみを自分の前に並べる。


一番大きなぬいぐるみは親分肌の久美子、何時も先頭を進み私たちを導いてくれた。


メガネを掛けたぬいぐるみは絵里、物知りで分からない事を絵里に聞けば教えてくれた。


一番小さなぬいぐるみは歩、ボーイッシュで空手の黒帯の持ち主で色々なスポーツを嗜む。


並べたぬいぐるみを眺めているうちに眠ってしまったのだろう。


身体を揺すられて声が掛けられる。


「鈴花、起きな、吹雪が止んで青空が広がっているよ」


「マッタクこんな寒いところで良く寝られるよな」


「何時でも何処でも寝られるのが鈴花の取り柄なんだから良いじゃない」


眠気をこらえて目を開けたら3人の親友が私の顔を覗き込んでいた。


「おはよう」


「目、覚めたか?」


「ウン」


「じゃ、下山しようぜ」


私たちは避難小屋を後にする。


人の気配が無くなった避難小屋の真ん中には、3つの小さなぬいぐるみを抱いて座った姿勢のまま凍死した女性の遺体が残されていた。





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