肉入りスープ
ビュウゥゥゥー!
外から風の音が響いて来る。
『今日はもう閉めようかな?』
私は街道沿いで食堂兼飲み屋兼宿を営んでいる女。
元々は一緒になった旦那の店だったんだけど、ちょっとハッスルしたら旦那が腹上死しちゃったんで跡を継いだ。
まぁ旦那は60近くまで独り身で、私は成人したばかりの10代前半だったから仕方がないのかも知れない。
でも口さがない町の女衆には金目当てで結婚したって言われてる。
だけど旦那の跡を継いで私1人で店を切り盛りするようになってからの方が、儲けてるんだけどね。
その客の大半は若後家の私の身体目当てに店に来る、女衆の旦那たちってのは内緒。
出入り口の直ぐ横に立ててある看板を仕舞おうと扉を開けた。
ビュウゥゥゥー!
凄まじい風と共に雪が店の中に吹き込んで来た。
『アラ、何時の間にか雪が降って来てるじゃない、だからか誰も来なかったのね』
風に翻弄される雪に目を向けてたら、小柄な人影が街道を足早に進んで行くのが目に入る。
『え? 人?』
慌ててその人影に向けて声を掛けた。
「ちょっと、ちょっと、アンタ! こんな猛吹雪それも夜に街道を進むなんて死にたいのかい?」
私の声に気がついて小柄な人影は立ち止まる。
「こっちに来な」
立ち止まっていた人影がオズオズと近寄って来た。
『子供?』
近寄って来たのは、10歳にも満たない子供だった。
「こんな猛吹雪の夜、アンタみたいな子供がなんで1人で街道を歩いてるんだい?」
「父ちゃん母ちゃんに、領都の知り合いのところで働かせてもらえって言われ、家から追い出された……。
村の大人に聞いたら、2日程歩き続ければ領都に着くって教えられた……。
だから食い物を買う金も宿に泊まる金も無いから歩き続けてた……」
『真冬の今家を追い出したって事は、死んでも良いって思われてるんだね。
2日って、それは夏場に大人が休まずに歩き続けてだろ、子供だとその倍以上はかかるじゃないか』
子供は寒さでガクガクと震えてる。
否、寒さだけで無く空腹なのだろう。
「入りな」
「え、で、でも、金持ってない」
「金は良いよ、明日の朝、水くみ手伝ってくれれば良いから」
躊躇ってる子供の背中を押し店の中に入れる。
カウンターの前に座らせ、カウンターに雑穀と野菜屑のスープが入った皿を置く。
「肉や魚は入って無いけど身体が温まるよ、食べな」
私の食べなって声で子供は皿の脇に置いたスプーンを持ち、一心不乱にスープを啜る。
一心不乱にスープを啜る子供の頭を撫でながら話し掛けた。
「吹雪いていたから良かったものの、夜に街道を1人歩きしていたら、冬でも追い剥ぎの類に襲われるから気をつけな。
金が無いから大丈夫なんて思わない事だよ、子供のアンタはアンタ自身が金になるんだからね」
スープを食べ終えた子供に手伝わせて店仕舞いする。
店仕舞いを終えてから子供を寝室に連れて行く。
ベッドの脇でオズオズしている子供に声を掛ける。
「素っ裸になって入りな」
「は、裸に?」
「あぁ、アンタくらいの歳なら両親の営みを見たことがあるだろ?」
子供がベッドに横たわったのを見てから私も服を全て脱ぎベッドに入る。
子供の裸体と私の身体が触れ合う。
「冷たい」
「私は冷え性なの、だから冬の夜は男の体温に包まりたいのよ」
子供が私の身体にむしゃぶりついて来た。
それを私は押し留める。
「時間はあるんだから、先にアナタの体温をタップリと堪能させてちょうだい」
子供を抱きしめその温かい体温を楽しむ。
子供を抱きしめていた腕を解き身体を起こす。
身体を起こしベッドの脇に立った私は温かい体温、否、命の息吹を全て私に奪われ、ベッドに横たわったままの子供の骸を見おろしながら声を掛ける。
「ごめんね、偶に人間の男の命の息吹を腹一杯堪能したくなる時があるの」
旦那の命の息吹を全て奪い殺してしまってからは、気をつけるようにしている。
私のところに来る村の旦那たちと抱き合う時は、少しずつ少しずついただくようにしていた。
私と寝た男が次々と死んだら私が妖怪だって事がバレるからね。
だからいなくなっても誰にも気が付かれない男を掌中に収めた時は、命の息吹を全ていただくのだ。
「今更だけど、夜の街道には追い剥ぎの類だけでなく、私のような妖怪の類も出没するのよ」
『明日作るスープは久しぶりに肉入りになるわね』
そんな事を考えながら私は子供の死体を厨房に運んで行った。




