2秒目 クソ喰らえ私の人生!!
あれから、叫びども怒りども何も起こらなかった。歩いても歩いても周りは一面砂漠。
「普通は異世界転生なんて、ファンタジー溢れたエルフとか、狼男とかが出てきてやいのやいのするんじゃないのぉ?」
一人歩きながら愚痴を溢す。
「ってか暑いし。喉乾いたし、お腹も減ったし…何これ本当。異世界転生しても私は孤独でひもじいの?」
砂漠にはオアシスがある。そうアニメや漫画を 見てほのかに期待していた自分が居たがあれは嘘だ。ラクダを乗りこなす商人や旅人がちらほら。それも嘘。だって、現に歩いてて何も無いもの。
「あーしんどい。どうしたら良いのよ私。何の意味があってここに来たのよ本当。鳥も、虫すらもいないじゃない。」
ただ一人歩く。砂漠を一人とぼとぼと。彼女の心のなかはイライラが募っていた。
死にたい。死にたいのにその方法が見当たらない。舌を噛みちぎる力が入らない。自傷すら出来ないほど体が弱っているのだ。
また何度も言っていた言葉をぼやく。
「はぁ…死にたい。」
もうかれこれ五時間程は歩いただろうか。足も疲れてきたのでその場にドサッと横たわる。ここが草原のようなところだったら寝てしまえるのだけれど、暑い熱い砂漠の砂の上。風すらもなびかない。
「こんな世界、クソ喰らえ。」
そう口にした後、ぼうっと空を眺める。まだ前世に居た頃の自分を思い出していた。
(そういえば、似た言葉を口にした事があったなぁ…)
会社に居た私は、いや失礼。超ブラック社畜小屋に居た頃の私は端からの評判として、良く言えばおしとやか、悪く言えば内気でコミュ障のレッテルを貼られていたらしい。上司からのセクハラにも耐え、他の上司や同僚からのパワハラ、いじめにも耐え、一人会社を退社した時に放った言葉。
「人間社会なんてクソ喰らえ。」
ボソッと思い出した言葉を放った。
「まっ、色々言えなかった私にも非がありますけどねぇ」
最後にそう言い放ちダルそうに立ちあがりダラダラとまた歩き出した。