4話 ~開拓村ムベルク~
そして数日が経ち、俺と母さんはこの家を出ていくことになった。もとより、2歳になったら出ていくつもりだったんだが。それに、俺は外の世界を知らなさすぎるのだ。なんてったって、森にしか言ったことがないのである。より強い魔法をつけるためには、より強い魔法使いか魔法書を読む必要がある。ま、それはおいおい話すとしよう。
因みに、これから俺達が行くところはムベルクという村らしい。発展途上の開拓村だが、住みやすい環境に豊かな自然、そしてなによりラスの元を離れられる。それだけで安心だ。俺は家族に見捨てられる悲しみ、屈辱、悪夢をしっている。だからこそもう2度と味わいたくないのだ。
さて、そろそろ出発らしい。目指すは開拓村ムベルク。さぁ、どんな冒険が待っているのか楽しみだ。この日のために手配した馬車に乗り込み、ガタガタと揺れる馬車のリズムについ船を漕いでしまうが、移りゆく四季様々な景色に溜息が抑えきれない。この世界は日本に比べて明らかに科学技術が遅れている。しかし、それ故に綺麗な自然は多くあるのだ。今も尚、減りゆく自然に止めを刺さない現代社会の風潮はどうも抵抗があったのだ。しかしまぁ、この世界は自由でいい。才能に期待されることもないし、その才能を忌避されることもない。まぁ、ラスからは見捨てられたようだが。が、そんなことはどうでもいいのだ。今から行く村に期待を寄せ、赤ちゃん特有の眠気に意識をそのまま手放した。
開拓村ムベルク、通称『エルフ村』はその通称通り、エルフが多いいのだ。自然豊かなのはこれが影響している。しかし、俺にもエルフの血が流れているのか。見た目的には普通の人間なんだが。少し調べてみたのだが、この種族というものは完璧に遺伝らしいのだ。つまり神だとかそんなんじゃなくて、そのまま全種族の血を引き継ぐ珍しい家計に生まれた訳だが。そこに指定してくれたのはヘレンなんだけどな。こんなこと、確率的に天文学的数字なんだとか。それも俗に言う先祖返りというものらしく、血の影響をより強く継承しているのだ。つまり、このまま力を解放したらどんな形になるのか想像出来ない。しかし、母さんによると、数多の種族の頂点に君臨した者の血のみにしか子を成すことが出来ない一族だったらしく、この種族体質なのも頷ける。となると、ラスは強いやつだったのか?という話だが、そんなことはないらしい。一族が子をなしていくにつれて、戦乱の業火を鎮火していき、戦のない世界になったことで徐々に強いものが減ったのだ。すると、必然的に一族は衰退していく。それが道理だ。しかし、俺という存在は過去いない逸材らしい。自分で言うのもなんだが、少しばかり厄介だな。どんなトラブルに巻き込まれるか分かったもんじゃない。
とまぁ話が逸れたが、この村は発展途上であるため、施設は万能だとは言えないのだ。しかしながら、そこを自然の力でカバーしているところがまた凄い。エルフは魔法を得意とする上位種族だ。つまり、この村は魔法を得意とする存在が数多くいる、ということを暗に示している。くふふ、たのしみになってきたぁぁあああああああ!!!
そう、魔法だ。今までは魔力をねってその塊を飛ばすことしか出来なかったが、魔法を使うことによってより高濃度な魔力を練ることが出来、尚且つ魔法も打てるようになる。楽しみすぎだろぉ~!テンション上がってきたぁぁああああ!
ーーー予知を習得しましたーーー
……!?な、なぜに!?
先の事を考えることによって、ってことか?
予知…って、予知か?使い方がわからない。
むっ!?今、頭の中に稲妻が走った。痺れるような…あれ?使い方がわかる…さっきの稲妻のおかげ…なのかな?
『そうよ』
どわっ!?あ、あのね~!なんてを予想しえない未来を作り出せるのかなこの人は。まったく、想像の範疇を超えているっての…
『ふふふ、ごめんなさいね~。それよりも、その稲妻ってやつは魔眼の効果だと思うわよ。』
魔眼の効果?
『そう。魔眼には見たものを記憶し、それを昇華させ使役することが出来る、そんなことを言った記憶があるわね。魔眼が予知を習得した時に解析した結果、使い方がわかったんじゃないの?』
魔眼が余地を習得!?解析!?よくわからんな。
ヘレン曰く、魔眼というものはそもそも魔法を無造作に蓄積する媒体、すなわち古代兵装なるものらしい。古の戦争により作り出され、あらゆる戦場を破壊し尽くした『今は忘れられし暗黒の眼』という訳だ。ん~、よく分かんない。
『まぁ、使い方がわかったなら良かったじゃない。しかし、困ったわね~。このままじゃエルニアがどんどん私から離れていってしまう気がしてならないわ…一層の事、天の鎖で縛り付けるのも一考…』
ちょ、今完全にやばいこと言っていませんでした!?聞こえましたよ!?
『な、何でもないわ…ふふふ、けれども、貴方の進みたい道を私は肯定するわ。何があっても私はあなたの味方よ。まぁいいわ。それじゃあね』
あ、ありがとう…じゃ、じゃあ…
いきなりで頬が紅潮する様子が感じ取れる。
「…はぁ、俺は化け物になってしまうのか?」
そんなことを考えながら母さんと一緒に街を巡る。俺達はラスの家からくすねたお金を使い、家を買った。しかしまぁ、以前に比べて小さいのだが。ま、日本暮らしの方が長い俺にはピッタシで、俺の満足気な表情を見てか、母さんも表情を柔らかくした。
さて、それではまず探検である。まだまだ餓鬼のおれだが、絶対に強くなって自由に生きてやる。何者にも縛られない、それでいて何かを守るために存在するような。まとめると自由主義の事なかれ主義者は、自由に生きる。ということだ。