もう一人の自分と
小説を最後まで書けたのは初めてです。
良ければ見てください
妹の風香は、今日が誕生日だ、14歳になった彼女を父と母と俺が食卓を囲み、誕生日会を開いた。
「ふぅぅ!!」
勢いよく息を吹きかけ、ケーキに刺したロウソクの火が消えた、辺りが暗くなり、俺は席を立ち部屋の電気をつけた。
「おめでとう風香」
「ありがとうお兄ちゃん!」
それに続き母と父もお祝いの声を掛けた。
「さて、でわ頂きましょう!」
母が仕切り直しにそう声を掛けると、
いただきます。と4人の声が重なった。
美味しそうにご飯を食べる風香を横目に、この時は、ただただその時は嬉しく思っていた。
1章、不運
風香は中学2年生、明るく元気な女の子だ。
放課後の時、中学校まで迎えに行くのが俺の日課、校門前にて、今日もまた風香を待っている。
「お待たせ」
「おう、帰るか」
そう答え、いつもの帰り道を歩いてた。
「今日は楽しかったか?」
「うん!楽しかった!授業中に先生が、笹塚さん、随分変わったねぇ…って言ってたけど前の私ってそんなに違かったのかな?」
おっさんの声真似をしてそう言ってのけた。
「そうだな、少し暗い感じだったからな…前は、ホントに暗かったな」
暗い顔をしながら呟いた。
ふ〜ん、と風香が頷く、そんな会話をしながら歩いて帰ったこの日、不運の事故が訪れた。
鳴り響くパトカーのサイレンと人の声、横に倒れ体中から血を流す風香の姿、自分自身にも腹部に強烈な痛みがあった、吐血を繰り返し這いずりながらも風香の近くへ行く。
「風香…起きろ…」
起こそうと体を揺するが反応が無かった。
「起きてくれ…!風香!」
冷たい体は声を出さ無かった、痛みと疲労が限界に近い中、最後の一瞬まで風香の手を握っていた。
2章、病院
「ここは…」
気がつくと俺はベッドに横たわっていた。
部屋の電気はついておらず周りには心音グラフやベッドを区切る大きなカーテンがある、きっと病院だろう。
そう思い、徐々に何があったかを思い出そうとする。
意識を失う前の記憶を探ろうと深く考える、あの時何かに跳ねられた?
何かとても大きな音と共に、あれは、トラックだ、大型のトラックだった。
その時風香が俺の前に出て…
「風香?」
ここにいる場合じゃない一刻も早く探さなければ、ベッドから降り部屋を後にした。
病院内を探し回ったが全ての部屋に鍵が掛かっていて入れなかった。
ネームプレートを除くも全て風香じゃない人の名前だった。
探すのを諦め病院中の受付の所で座り込んだ。
「どうすりゃ良いんだ?」
外は夜、出入り口も閉められている。
なすすべなく考え込んだ。
そんな時、ふと前を見ると1人の少女が目の前に立っていた。
「彼女なら大丈夫よ」
「!?」
突然、少女が喋り出した。
今までどこを探しても誰にも出会わなかったのに、どうやってここへ来たのだろう、何処かに出れる場所が、
「無いわよ」
「え?」
声に出してないハズなのに、返事が返って来た。
「君は誰だ?」
冷静になり、質問をする。
「ひどいな、忘れているなんて」
そう言って少女は寂しそうに顔を下に向けた。
この行動は、どこかで見た事がある。
「でももう時間の問題、あなたが死ぬか、あの子が死ぬか」
「どういう事だ…?」
「こっちよ」
少女は、歩き出した。
少し不安を寄せながら、その少女の後ろを歩いた。
「ここ」
そう言い少女は指を指した。
そこは、最初に目が覚めた部屋。
ここには何も無いハズなのに、そう思いながらもまた確認をしてみる。
「これは…?」
ベッドの上にさっきまでは無かった紙切れが置いてあった。
ここ…ら逃…て…
文字がかすれて上手く見えない。
「逃、て?」
そう書かれてあるのか、早く風香を探そう、封筒の中に鍵があるのに気付き、俺は部屋を後にした。
病院の中のどこかの鍵だろうと、そう信じて再びあるいた。
後から気付いたが、この時には少女の姿は消えていた。
3章、記憶
病室を出て病院内を探索した。
最初に入ったのは医務室だ、閉まっていた為に鍵を使ってみると開いた。
恐る恐る部屋に入り中を調べると、
自分のカルテやレントゲン写真が机の上に置いてあるのを目にした。
「なんだこれは…」
カルテには自分の体に何が起きているかが明確に記載されていた。
レントゲン写真にはカルテに記載されていた内臓の場所、骨の場所などに×と書かれたマーク、身体中のあちこちにそのマークが刻まれていた。
他を探しても自分の物以外見つからず部屋を後にした。
その他の部屋も同じ鍵で開く事が出来たが中に入るも医療に必要な器具以外は何も置いておらず、入ってもすぐ部屋を後にするを繰り返した。
残るは手術室のみだった、鍵を使い開けようとした、その時、またしても少女がふっと、現れ、声を掛けられた
「彼女はここにいた」
そう言った少女の言葉にこう返した。
「風香の事か?」
「そう、1年前、彼女は1度目の事故に合い大きな怪我をした。」
風香が学校に通えるようになった前の話だろう。
誕生日を迎えるもっと前の話。
「そして私もここで手術を受けた」
「やっぱりお前も風香なのか?」
「そうよ。私は彼女で彼女は私」
何があったのか聞こうとすると、少女は答えた。
「あの日の手術の時、私はまだ彼女の中にいた、私は生まれ変わりたかった。そう望んだら、性格が全く違う私が生まれてしまった」
記憶が無くなったんじゃなく、生まれ変わって新しい自分になっただけ、そう言った。
「入りなさい、彼女の所に案内するわ」
手術室に入り、中を調べる。
また封筒があり、手紙は入って無かったが、カード型のキーが入っていた。
「エレベーターよ」
振り向いたがもう風香はどこにも居なかった。
急ぎ足でエレベーターに向かった。
エレベーターに着いて、キーを使いスキャンさせると自動で扉が閉まり登り始めた。
3階に止まり、そこで目にした光景は、直線の廊下と奥に部屋しか無い空間だった。
4章、結果
長い廊下を少し歩み始めた途端エレベーターが閉まり、下に移動した。
戻らせないつもりだろう。
進むしか無い、そのまま廊下を歩いた。
扉の上にコールドルームと書かれたプレート、その部屋をゆっくりと開けた。
「風香?」
人間サイズの冷凍庫、コールドスリープがそこにあった。
中に人が1人…
「…」
言葉にできない、数分間、沈黙と混乱が混ざる。
「しっかりしなさい」
バン!と背中を強く叩かれた、風香が殴った。
「な、何があったんだよ?」
痛みながらそう聞いた。
「2回目の事故、あなたをも巻き込んで起こした悲劇の事故、あの後の話よ」
そのまま話を続けた。
「私はもう二度と目が覚める事無いと思ってた、でもビックリ、目を覚ましちゃった。しかも目の前に自分が居るのだもの、更に驚いたわ。でもその世界、何も無くただ私と私が対話をする場所だった。」
風香はその場所が現実の世界では無く、風香の心の中。とでも言う世界だったと、そして今いるここは俺の心の中だと言う。
「目が覚めると同時に彼女の2回目の事故が起きるまでの記憶を見たわ、これにも驚き、何でこんなにも楽しく生きているのだろう。そう思ったわ」
* *
自分同士の会話なのに、意見も違う、考える事も違う、生き方も違っている。
本当に私なのかなと、未来の自分と過去の自分が話し合ったらこうも違って来るのかなって、まるで他人を見るかのように自分を見てしまった事に涙を流した。
二乗の人格が生まれてしまった。
私のハズなのに私じゃない、この世界に残るのは片方だけにしよう。
この体は、あなたにあげる。
* *
「声に出さなくても通じたのよ、頭で会話を考えてるだけで会話が出来たのよ、嘘もなくお互いの言葉を信じれた」
そして、決めた。
どちらかが死に、どちらかが生き残る。と、そう言った。
「今この場所は俺の中で。過去の風香がいるって事は今の風香がコールドスリープで眠ってるのか?」
つまり、死ぬ方を選んだのは過去の風香で、今目の前にいる?
「もう私はあなたの一部よ、腹部のね」
服をめくり腹を見る。
縫い目があり、手術が終わった後だった。
「この場所であなたを一度目覚めさせ、これを伝えに来たの、彼女を救ってあげで、私なんだから」
「風香…お前…」
「そろそろ起きる時間ね、最後に会えて良かったわ」
そう言った風香の姿を見る事はもう無かった。
5章、終わり
目が覚めた。
手を動かし生きてる事を確認した。
現実の世界だ、まるで夢でも見てたかのように誰かと会話をしていた。
周りがバタバタと動き出し、手を握る母とそばで見ている父を眺めた。
風香は?と尋ねると、不安そうな顔をして、まだ眠っているとそう言った。
それから何日か立ちすっかり元気になった頃、医師から風香が冷凍睡眠されている事を聞いた。
風香の臓器を俺に移植していた事も分かった、近い未来に臓器を作る機械が完成するとの事でそれまで眠っていると言う事だ。
その後退院をし、俺はどうにか風香を早く起こせるようにもう勉強し医師を目指した。
これは、俺の考えだが風香が変わったのは目標や夢があったからなんじゃ無いだろうか、生きる事に辛いと思い、前をあまり見れず孤独になっていた、だがあるきっかけで変わり始めようとした。
その時の気持ちを今の風香が引き継ぎ、前を見て生きる事にした。
それが過去の風香と今の風香の大きな違いだったでは無いかと、思っている。
確かに今の自分は、普通に学校に行き、あまり夢もなく追いかける目標も無い、大雑把に15年後の自分と会話をする事を考えてみよう、他人に見えるか、自分の理想に見えるか、それは今の自分が動く事でその未来が、
変わるんだ。
6章、続き
15年後
手術を終え、ベッドで寝ていた彼女がその長い眠りから目を覚ました。
綺麗な朝日がガラス越しにこちらを照らして居る。
いつから居たのだろうかと、座りながらベットに頭を預け眠っている彼の手を握った。
小説を最後まで書けたのは初めてで、達成感はありました。
しかしまだまだ面白いものを書きたいとそう思う反面、やはり難しいと強く思いました。
ここまで読んだ頂きありがとうございました!