卵
俺は解除と念じ、狼の姿に戻った
「なっ⁈お前…いや、貴方様はもしやフェンリル様……いや、そんな筈がない!あの気高きフェンリル様が人間ごときに手を貸すわけが…」
「気高いとかどうとかは知らんが俺は本物だよ」
「戯けっ‼︎フェンリル様の名を語る不届きものが!お前達っ、殺ってしまえ‼︎」
その言葉を合図にファフニールと飛龍が咆哮をあげ、喰い千切らんばかりに噛みつこうとしている飛龍を踏み台にして逆にその上を飛ぶファフニールの喉を喰い千切る。
あ、ちょっと血生臭いけど美味しいや
『マスター、ドラゴンの肉は一生のうちに一度食べる事が出来れば生涯の自慢になるほどの高級食材ですが流石に今は不謹慎すぎます』
はい、ごめんなさい
その後は爪で一体の飛龍の腹を斬り裂き、ファフニールの首を落とす。最後の飛龍は最初のファフニールと同様に首を喰い千切る。
驚く事なかれ。なんとかの間ものの5秒ほどしか経っていないのだ。
「おのれ、よくも我が同胞をっ‼︎」
というと巨大な炎を吐き出す。
なるほど、これが所謂ブレスというやつか
などと感心している俺をブレスを瞬く間に飲み込み、エンシェントドラゴンは勝利を確信したかのように笑った(ように見えた)。
「全く、さっきから黙って聞いてりゃまるで俺のことを悪者みたいに言いやがって。力量の差を見誤ってその同胞とやらをけしかけたのはお前だろうがっ!」
その言葉と同時にエンシェントドラゴンの首を切り裂き、吹き飛ばす。
どうやら瞬時に体を捻ることで攻撃をずらし即死だけは避けたようだが、致命傷は避けられなかったみたいだ。この傷ではもって数分だろう
するとエンシェントドラゴンは最後の力を振り絞るように
「この強さ、本当にフェンリル様だったとは…これまでの無礼誠に申し訳ございません。
ご察しのとうり私はもう長くありません。そこで失礼を承知でお願いがあるのですが、私のお腹の中にいる私の子供を育ててやっていただけませんか?」
このドラゴン、メスだったのか…そういえばお腹の辺りが大きかったような……
「わかった。俺でよければ引き受けよう」
「度重なる無礼誠に申し訳ございません。そして寛大な処置に感心致します…」
そこでエンシェントドラゴンは力が尽き、息をひきとる
俺は人の姿に戻りエンシェントドラゴンのお腹から卵を取り出しドラゴン達を解体してアイテムボックスにしまう
「なんだろうな、このいたたまれない気持ちは」