襲撃の後
(追記)
2/26改稿しました。
「君達、先程は助けて頂き感謝する。」
戦闘が終わった後、護衛の隊長らしき人物が声を掛けてきた。
「貴方達が来てくれなければどうなっていたか・・・我々も精進が足りなかったようだ」
正直あれは多勢に無勢だと思うけどな。あ、でも俺ら2人で完全に戦力差覆してるわ。そう考えると鍛え方が足りていないのかな?
「そうだ、自己紹介を忘れていたな。私はラナフォード王国第十師団副隊長、ウィルバートだ。よろしく」
・・・ん?んん?今なんか聞き捨てならない単語が聞こえたぞ!『ラナフォード王国』だって!?マジかよ。顔には出さずに済んだが、内心すごい動揺していると、馬車からいかにもお姫様って人が出てきた。
「ウィルバート、そちらの方々が私達を助けてくれたの?」
「フィオナ様!ええ、こちらの方々が我らを助けてくれました」
この体の記憶を検索してみるとその名前には覚えがあった。4歳ほど下の妹で、現在16歳だ。流石に気づくことはないと思うのだが、記憶のせいか内心少し緊張している。
「御挨拶が遅れましたね。私は、ラナフォード王国第一王女、フィオナ・ラナフォードと申します。この度は窮地を救って頂き、心の底から感謝致します」
あれ、第一王女?ルティナはどうしたよ。もしかしていなかったことにされてる?
「礼には及ばない。目の前で襲われているものを放っておくことなど出来ないしな。ただ、私達は見ての通り徒歩でな。次の街まで馬車に乗せて行って貰えるとありがたいのだが。」
お、考え事してる間にライオルドがさりげなく馬車に乗れないか交渉してくれてる。それを聞いたウィルバートさんがフィオナの方を向くと、
「ええ、命の恩人なのですから、その程度の事ならば問題ありません。」
と、あっさりOKしてくれた。やったぜ。
「ところで、お二方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
おっと、名乗り忘れてた。そのまま自己紹介しようと思ったが、直前で今の体が女性だと思い出す。
どんな口調にすれば・・・ルティナの口調を使うか、それとも男口調のままで通そうか・・・
視線をさまよわせつつ考えていると、
「あの・・・言いたくないのであればよろしいのですが・・・」
あ、ちょっと不審がられたかも。まずったなと思いどう誤魔化すか考えていると、
「すまない、こいつは喋るのが少々苦手でな。代わりに自己紹介しよう。私の名前はディアス、そしてこいつの名前はアルティアだ。よろしく頼む。」
ライオルドがフォローしてくれた。とりあえず何もしないのはあれなので無言で頭を軽く下げておく。
『ライオルドサンキュー!』
『気にするな。喋り方で戸惑ったのだろう?仕方ないさ。』
念話で感謝しておく。やっぱ便利だな。
「ディアス様とアルティア様ですね。いえ、こちらこそ急に名前を聞いてしまいすみませんでした。」
その後は他の護衛と紹介し合い、後始末をして馬車に乗せてもらい街に向かった。
ちなみに盗賊達は全員止めを刺してから燃やして埋めた。賞金首でも掛かってない限り捕らえて連れて帰ることは少ないようだ。
馬車に乗って少しすると、
「そういえばお2人とも、とんでもない強さでしたね!」
急に護衛5人のうちの唯一の女性(名前はニーナって言うらしい)が喋りかけてきた。ちなみに馬車の中にいるのは俺、ライオルド、フィオナ王女、ニーナ、ウィルバートさんの5人で、それ以外の人は馬に乗ってついて来ている。ウィルバートさんは護衛のリーダー、ニーナさんは唯一の女性という理由で馬車にいる。
「いや、私など力しか取り柄はないさ。」
そうライオルドが謙遜する。今はイケメン顔でそう言ってるから忘れがちだが元々の体は盗賊なんだよなぁ。しかもそいつの下品な言葉遣いを記憶しているし顔も別人と言っていいくらい違ったから本当にコイツ誰?ってなるんだよね。
俺もなんか言いたかったけど無口設定つけちゃったからな・・・あ、そうだ、最弱神が使ってたあの魔法が使えるんだった、よしこれなら・・・
『私もとんでもない強さなどではない。』
「え?この文字何?」
あ、通じてない?
「アルティの魔法だ。」
「あ、アルティアさんですか?話すのは苦手でも文章なら大丈夫なんですね?」
またもやライオルドがフォローしてくれた。ナイス。
「そうだ、魔法と言えばよく無詠唱魔法なんて使えますね!どうやったら出来るんですか!?」
「おい、ニーナ!」
おおうこの人遠慮しないでぐいぐいくるな。ウィルバートさんも叱ってるし。でもまあ、適当なこと言っておけばいいか、長文はライオルドに話して貰おう。念話で伝えてっと。
『そのくらい自分でやればいいじゃないか?』
『この距離だと念話より魔力食うし長文を読ませることになるぞ?』
『ふむ・・・そういうことなら・・・』
結局説明してもらう。
「アルティは言葉を発すること自体苦手でな、言葉を発さずに魔法を使うために無詠唱を覚えてしまったんだ。」
「へぇ〜すごいんですね〜」
「む、確かに生まれつき話すことが出来なかったから無詠唱を覚えた魔道士というのは聞いたことがあるな」
ああ、実際にいるんだなそんな人。あんまり怪しまれずに済んだようだ。その後流されずにウィルバートさんがニーナさんに説教していた。ニーナさんは「別にそのくらいいいじゃないですかぁ〜」とか言ってたが。
その後は適当な話をしながら進んでいった。その日の夕方、周りの風景が殺風景な岩肌から草原に変わり、少し遠くに森が見えてきた。ついに谷から出たようだ。
しばらくして夜になり、シチューを食べた。(材料は護衛達が所持していたいわゆるマジックバッグに入ってた。俺達もご相伴に預かった。料理したのはニーナ。)
フィオナはこんな旅で保存食とか食べれるのか?と思っていたが、マジックバックがあるから問題無かったようだ。しかし、フィオナ達は何故こんな所に来ているのだろうか。ここまで来るためには街を五つ六つは通ってくる筈だ。普通そこまで王女を遠出させるだろうか?ついでに言うと護衛の数も少ない。
そのあたりは考えても仕方ないと思ったので聞かないことにした。
その後夜営をすることになり、俺は魔法の訓練をしたかったので同時に見張りをすることにし、ライオルドは遠慮無く休むことにした。ちなみに俺とは別に護衛5人でローテーションを組んで見張りをするようだ。
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さて、魔法の訓練を今からする訳だが、今回は魔法の二属性同時発動をしてみようと思う。ちなみに今見張りをしている護衛はリゲルという名前のがっしりした体型の男だ。一応馬車を挟んで反対側にいるからあんまり見られないかなとか思ったが念のため火と水以外の属性は使わないようにする。
というわけでとりあえずは火と水の同時発動いってみよう!最初は『ファイア』を左手の上に生み出す。そしてそれを保持したまま『ウォーター』を発動する。すると右手に水球が生まれたが、火球が小さくなってしまった。
結構難しいな、コレ。反対属性の同時発動だもんな、両方をイメージするのがだいぶキツイ。目を閉じて集中してみるが、目を閉じてるとちゃんと成功してるのか分からんかった。本末転倒じゃねーか。
しばらく試行錯誤してみて、火のイメージと水のイメージが混ざってしまうのがダメなのではと思い、イメージとイメージの間に混ざらないよう仕切りのようなものがあることをイメージしてみる。すると両方の魔法がうまいこと安定した。やったぜ。
成功して喜んでいると後ろに誰かがいる気配がしたので振り返ってみるとそこには護衛の5人の中で唯一魔法が使えるというガラハムという若い男が驚いた顔でこちらを見ていた。
正直さっきまで気づいてなかったからこっちが驚いた。そしてお互いに硬直していたが、ハッとしてガラハムさんが話しかけてきた。
「すみません、魔法の訓練をなさると言われていたので、気になって起きてきてしまったのです。そして、貴方が魔法の同時使用をしていたので思わず見つめてしまいました。」
少し恥ずかしそうに言う。やっぱり魔法の同時発動ってムズイのかな。でも仕切りのイメージを増やせば結構多く同時発動できる気がするな。やってみるか。
保持したまんまだった2つに加えて『アイス』(ウォーターと同等の魔法で水属性)も発動してみる。こちらもイメージの間に仕切りをイメージしている。ついでに『ファイア』と『ウォーター』もひとつづつ追加してみたが、問題無く発動できた。やっぱこういうのはコツが大事だね。
そしてガラハムさんを見たら口を開けて呆然としていた。そんな難しいのかなこれ?
とりあえず魔法を解除するとガラハムさんが我に帰って、
「・・・本当にすごいんですね。魔法の3重発動ですら宮廷魔道士ですら難しいと言われているのに、それよりも2つ多く発動するなんて・・・」
めっちゃ驚かれてた。やりすぎたかなぁ・・・火と水以外を隠す意味が無くなってしまったかも。とりあえずこちらが無言のままなのもアレかと思ったので、
『大したことはない』
と返しておいた。・・・正直これ嫌味にしか聞こえないかも知れないな・・・
「もしかして、それ以上の同時発動も出来るのではないでしょうね・・・」
とジト目で言われた。流石にこれ以上はまずいだろう。
『いや、流石に無理』
「そうですか・・・それでも充分過ぎるくらいですけどね。一体どうしたら魔法の5重発動なんて出来るんですかね。僕なんて詠唱無しでは魔法を使えないのに・・・魔法騎士だなんて調子に乗ってた自分が馬鹿みたいじゃないですか・・・」
割とマジで凹まれた。俺は悪くない筈だが悪いことをした気分になったのでフォローをしておく。
『私だって最初から無詠唱や同時発動ができた訳ではない、努力すればなんとかなる。』
「はは、そう言って貰えるとありがたいですね。でも、魔法の訓練はかなり前からやってるんですよ。それでも使えるようになったのは少しの風魔法だけなんです。やっぱり、才能がないのだと思います」
と、諦めたような笑みを浮かべながら言う。本当に可哀想に思えてきたな・・・どうしよ。
どうしたもんかと考え、俺は1つ思いついた。
『なら、分かれるまでの間に私が魔法を教えようか?』
「え!いいのですか!?」
俺の文を見た瞬間凄い勢いで詰め寄ってきた。ちょ、近い近い!顔が近いので文を近くに書いても見てもらえないのでとりあえずデコピンをしてやる。
「あうっ!あ、すみません、思わず・・・」
『気をつけて。』
すっごいビックリしたじゃないか・・・
「それで、本当にいいのですか?私としては願ったり叶ったりなのですが・・・」
『別に私は技術を教えても構わないから』
真似できるとも限らないしね。そうだ、
『ついでに敬語もやめて欲しい。正直苦手』
と伝えておく。だって自分より歳上の人から丁寧な言葉遣いされてもなんかむず痒いんだもの。
「え、いや、いくらなんでもそれは」
『じゃなきゃ教えない』
「ええ!?な、ならせめて2人だけの時だけにしてくれませんか?」
『それで充分』
そりゃウィルバートさんとかがいるところでやれとかは言わないよ。
「ならええと、これからよろしく、アルティアさん。」
『よろしく。あとアルティでいい。』
「は、はい・・・」
そんな訳でしばらく彼に魔法を教えることになったのであった。しかし何か文章も無口キャラっぽくなってる気がするな・・・
どうにも文章を綺麗に纏められませんね・・・