女に転生した
2/26改稿しました。
気が付くと、俺はうつ伏せに倒れていた。とりあえず身を起こそうとしたが、結構体が重いし、体中が痛い。さっきまでの転生神との会話を思い出し、この体は1回死んでるからそりゃあ痛いよなーとか考えつつ、痛みを堪え、立ち上がった。とりあえずここはどこだろうと周りを見渡すと、どこまでも続く高い岩壁があった。どうやらここは渓谷らしい。少し歩いてみると、幾つもの死体があった。
「ーーーーーッ!」
その光景を見て、俺は何故かすごく悲しかった。知らない人のはずなのに。
一番近くの死体を見る。
ーーーーーその死体の名はルテイン。俺の所属していた傭兵団の団長である。スケベオヤジではあったものの、頼りがいのあるいいやつだったのに...
心の中で両手を合わせていると、違和感に気づく。そう、知らない人のはずなのに、彼らのことを覚えているのだ。周りの死体も半分くらいは名前を覚えていた。
どういうことだろうか。頭を捻っているとすぐ横の壁に文字が浮き上がってきた。
『気が付きましたか?中尾翔太さん。』
あ、転生神だ。こちらでも意思疎通できるらしい。
『言い忘れてましたが、器となった体には記憶が残っているんですよ。』
結構大切なことじゃん。言い忘れんなよ。
『てへぺろ。』
可愛くねぇわ!
そんなアホな会話をしていたがそんな場合じゃないと思い出し、死体をどうしようかとか考え、とりあえず集めることにした。
死体はほとんどの死因は武器によるものだったが、1人だけ火傷を負っていた。名前を知らない死体だ。なんで火傷?と思い眺めていると、記憶の中に自分が魔法陣から炎玉を放っている光景があった。この体は魔法が使えるらしい。スゲェ。そしてその記憶から自分達は盗賊団と戦い、相打ちになったことも分かった。死体を集め終わった所で、自分に致命傷を与えた相手ーーーーー盗賊団の頭領ーーーーーがその中にいない事に気づく。ってことは...
『おや、強盗さんがこっちに来るようです。』
そうだった、あの野郎もいるんだった。強盗の所業を思い出し怒りが湧き上がってくる。と、その時、向こうから歩いてくる音がした。
その方を見ると、死体の中にいなかった盗賊団の頭領が歩いて来ていた。そして、ちらりと横の壁を見て、
「何?・・・本当か?」
と言った。どうしたんだろ。そして盗賊団の頭領ーー強盗は、
「お前がさっきの高校生か?」
と聞いてきた。とりあえず怒りを抑え返事をする。
「ああ、そうだ。お前は強盗で間違いないよな?」
しかしそこでまたもや違和感。なんか声が高い。
「・・・何故だ。」
なんか強盗が言ってる。
「どうした?」
「いや、どうしたって・・・お前は気づいてないのか?」
「え?なんか自分の声が高いなーくらいしか・・・」
「一度自分の体を見てみろ。」
そう言われて自分の体を見下ろしてみる。すると、なんと胸には見事な双丘が。
「...え?」
ちょっと待って。どーゆーことだ?そうだ、記憶だ、この体の記憶を確認しよう。すると、この体がルティナ・ラナフォード、20歳、女性だということが分かった。
まぁ、つまり、
「なんで女になってんだよぉぉぉぉぉぉぉおおおお!?」
俺は女に転生していたのである。
「まぁ、その・・・なんだ・・・すまん。」
俺は憎いはずの強盗から同情をされながら、膝から崩れ落ちた。そして横に文字が浮かび上がる。
『・・・・・・てへっ?』
だから可愛くねぇわっ!