3つの中の1つの話 山本健二
取り戻したい…。
俺こと山本健二が一番今思うことだ。
俺が取り戻したいのは、自分の居場所…いや、自分達の居場所だ。
小学校の頃、俺には友達がいなかったし、居場所なんて俺にはなかった。
俺はその頃から、少し怖い顔付きをしていたようで、あんまり俺の周りに誰も寄ってこなかった。
まぁ、それは父親の遺伝である。
そのせいか、「やくざの息子」という根も葉もない噂が回ったくらいである。
俺は別に悲しくなかった。
もう、慣れっこだったから。
でも、他の子が他の子と遊んでいるところを見ると、非常にムカついたのは確かだ。
そんな、俺に手を伸ばしてきたのが、志希達だ。
ただ一言。
『遊ぼう!』と。そう、たった一言俺に声を掛けてくれたのだ。
俺は嬉しかった。
そして、俺は初めて遊んだ。
もう遊びに遊んだ。
これまでの分を含めて、自分の中で一番の遊びをした。
別に子供のなかでは当たり前のような遊びが、自分の中では違う存在のように感じられた。
でも、そんな時間がずっと続く分けではなかった。
無論、別れ、帰る時間がやってくるわけだ。
俺は思った。
彼等と遊ぶことはもうないだろうと。
彼等も人数合わせのために俺を誘ったと思っていた。
俺は別にそれでも構わなかった。
もし、人数合わせだとしても、これだけ遊べたのだ。もう、これ以上は望みすぎだと。
悲しかった。逆に遊んでいなかったらこんな気持ちにはならなかっただろう。
だから、俺はそんな気持ちをまぎらわすために、そそくさと別れの挨拶を言うと、素早く帰ろうとした。
しかし、後ろから声を掛けられたので、俺の足は止まった。
『また、遊びたいから、明日もここに来いよ!』と。
俺は嬉しかった。
だから、その時すぐさま後ろを向いて、『あぁ!絶対来てやんよ』と言ったのを覚えている。
それから、俺は毎日のように彼等と遊んだ。
夏休みも冬休みも、学校がある日もいつでも、遊んだ。
俺は楽しかった。
そんな時、メンバーの一人である、詩織が転校してしまった。
俺は悲しかった。
俺を助けてくれた一人が、消えてしまうのは嫌だった。
と、思っていても俺の力では何も出来るはずもなかった。
そのとき、俺は自分の力が無力であることを悟った。
そして、月日が立ち。
詩織が戻ってきた。
一時的な帰宅らしいのだが、俺は嬉しかった。
でも、俺は彼女を見て思った。
(違う…)と。
何が違うのかは今も分からない。
でも、何故かそう思った。
たぶん、彼女の気持ちがすごく沈んでいたから別の人のように思えたからと思う。
そして、俺の居場所が壊れたのだ。
そして、俺の初めての友達たちはバラバラになってしまった。
だから、俺は俺を救ってくれた、彼等との居場所を取り戻したいのだ。
また、五人で遊ぶ時を夢見て…
ー放課後ー
「え?詩織が転校してきた?」
俺が帰ろうとしていたところに、杏がやって来てそう言った。
俺は杏の言ってきた言葉に驚いた。
「うん。志希君のところに転校して来たらしいんだ」
ついに帰ってきたのか。
俺達の関係を壊して…。
と思いつつも、俺はそんなに詩織のことは憎んで無かった。
とゆうより、全然憎んではいない。
詩織はそんな酷い奴ではないし、彼女にも何かしらの理由があったと思ったからだ。
だから、その言葉を聞いて嬉しかった。
また、みんなで遊ぶこともできると思ったから。
そう思っていると、杏が下を向きながら聞いてくる。
「健二君はさ…ど、どう思う?」
「どうって?」
どうってどういう…。
「どういうというのは、そのまままの意味だよ!」
いきなりの声に驚きつつも、その声には聞き覚えがあったのですぐわかった。
そして、声の主である隼人は廊下の角からその姿を現した。
「そのままの意味さ、お前は詩織が帰ってきたことをどう思うか、ということさ」
隼人は俺を真っ直ぐに見ながらそう言った。
どうって…決まってるさ嬉しいさ。
昔の仲間が帰ってきて嬉しくない奴なんていない…。
でも、前に会ったときの話を考えると…。
こいつらが素直に喜んでいるとは限らない。
隼人は詩織のことが好きだったから、たぶん嬉しいと思う。
でと、杏はどうなのだろう…
そんな中俺だけ嬉しいと言うのはどうなんだろうか…。
俺はそう思いこう答えた。
「分からない」と。
それを聞いて、杏も隼人も少し不満そうにこちらを見たが、何も言ってはこなかった。
そして、少しの間があったあと、隼人が話を切り出した。
「詩織に会おう」と。
それを見ると、昔のように隼人が切り込み隊長のように思えた。
もう、戻らない昔…。
本当に戻らないのだろうか?
今、五人が近くにいるのだ。
話し合えばなんとかなるのでは??
それでもまず、詩織に会わなければ話にならない。
だから俺は答えた。
「そうしよう!詩織に会おう」
それに釣られてか杏も隼人の声に答える。
「そうしましょう」
そして、俺達は詩織に会いに行くために、学校を出た。
また、昔のように五人で遊ぶ日を夢見て。
俺は歩いていくのだった。
こうして、三人はバラバラな気持ちを心の中に秘め、彼女を探しに行く。
一人は逢いたいという気持ち。
一人は振り向いて欲しいという気持ち。
一人は取り戻したいという気持ち。
この、三人の気持ちの終着点は…。
うむー(-_-;)




