望みの行方 4
戴冠を受け、王になったフォースはレアに王妃の冠を授ける。
新たなるサファイアの国王夫妻の誕生だった。
二人は寄り添い、集まった群衆たちに手を振る。王城の崩壊のあおりを受けたものの城下町は元気だ。
「あねうえー!!!!」
群衆のなかに数人の兵士に守られてている一角があった。そこから届いた幼い男の子の声にレアは目を見開く。
小さな体でぴょんぴょんと飛び跳ね存在を主張しているのは紛れもなくレアの弟だった。
そしてその後ろには、父であるフローライト王と母の姿もあった。
「フォース…呼んで、くれた、の?」
驚きのあまり目をパチクリさせたままフォースに尋ねるレア。
「約束、だろう。」
フォースはそう短く答えた。それはつまり祖国フローライトは解放されたのだ。王家の3人の無事がそれをモノがっている。レアにとっては他のどんな言葉よりも、贈り物よりも嬉しいものだった。
「それに、王妃の両親を戴冠式によばないわけにはいかな……っ「フォース!ありがとう!!」
かっこよく締めようとしているフォースの言葉を遮って、レアはフォースの首に腕を廻して抱きついた。
一瞬の出来事に群衆は息を飲んだが、すぐさま歓喜の声が上がった。
檀上の脇ではジンも「おおー!」と感嘆の声を上げている。
その隣ではどさくさに紛れて自分を抱き寄せるギルディスをデイジーが必死に押し返していた。
そして当の本人は。
(な、なにしてるのわたしぃぃぃっぃぃぃ!!!!!!!)
と混乱の極みに立っていた。群衆の歓喜の声が煩くてさらに思考が覚束ない。
とにかく離れなければとバッと勢いよくフォースから体を離すのだが、引っ込めた腕をすぐさまフォースに捕まれた。
「ひゃっ!」
「長い間我慢したしな。そろそろいいだろう。」
「な、なにが?」
レアの問いかけにフォースは答えず掴んだ腕を引き寄せ、そのままレアの唇を奪った。
突然の出来事にレアがカチンと身を固まらせると、フォースは掴んでいた腕を離し、片方の手を頭の後ろに、もう片方の手を腰に回して、深く、深く口づけた。
一瞬の間の後に、更なる歓喜の声が群衆から巻き起こり、盛り上がりは最高潮となった。
にぎわう群衆を背に、口つげを解くフォース。そのままレアの耳元へ口を移動させると、
「フローライトへ帰るなんて言うなよ。レア、これからも俺の傍にいてくれ。」
と甘く囁いた。恥ずかしさに顔を上げられないレアはコツンと額をフォースの胸に埋める。
「そんなの…最初から決めてるわよ。この…ボンクラ…国王っ。」
小さいながらも返事をくれたレアを抱いてフォースは声を上げて笑顔を作った。
こうして新たな国王夫妻は民の祝福を受けつつ、仲睦まじく暮らし、やがて双子の子を授かることになる。
王子と王女の双子はそれぞれ「セロ」と「リア」と名付けられ、イタズラをしては王妃に「セロリア!」と叱られるのであった。
王子と王女をそう呼ぶ王妃がその度に懐かしい友人を思い出していたのを王子と王女は知る由もなかった。
おわり。
これにて終了です。
完結までだいぶ時間がかかった割に、内容がとんでもなく薄いようにも感じますが、なんとか完結できてよかったです。
長い間お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました!!
このあと、できればあとがき的な秘話を更新したいと思ってます。
よければ読んでください!