力をもとめて 1
あの青に煌めく海が見たかった。
あの真っ青な空を仰ぎたかった。
二つの青に守られた愛する故郷を思い、立ち上がるフォースたち。
かけがえのない仲間と共に、
かけがえのないものを取り戻すべく走り出したのだ。
その灯火を胸に、新たな力をもとめて。そしてその先の覚悟を見据えるために。
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「サファイア」をいただく。
つまりは自ら王になると宣言したフォースはそれに向けて動くべくまず他の大国を味方につけることにした。
味方にはならずとも自らが行動を起こしている最中に攻め入られないように保険をかけておこうとしたのだ。
無論、自らが王になった暁に友好な関係を築くためでもある。
南の大国「ルビー」
こちらは現在内乱凄まじく他国のお家騒動など蚊帳の外だろう。
だが念のために旧知の仲である王子へと書状を送っておいた。
西の大国「ムーンストーン」
この国はもともと閉鎖的で、保守に専念する国であり、さらに「サファイア」と隣接しない。
だがやはりこちらも念のために書状を送っておいた。
そして、北の大国「エメラルド」
問題はこの国だった。
ここ最近の侵攻方向は北。つまりは「エメラルド」の息がかかった領域(暗黙であるが)へと進撃していたからだ。
「ルビー」や「ムーンストーン」からの返信などフォースにとってはほぼ意味がない。ほしいのは「エメラルド」からの返信だけだった。
手紙を送って数日後の夜。
「レア、起きろ。」
月明かりが照らすレアの寝室(相変わらず寝室は別室のまま)に一筋の影が伸びる。
そしてその影の主がレアを目覚めへと誘った。
「ん…だれ?…――!フォ!!」
その誘いにレアは嫌々と目をあけると目の前にはフォースの姿。
ありえない状況に声を上げようとしたのだが、当のその本人に口を手で覆われてしまった。
「声出すな。いいか?…出かけるぞ支度しろ。」
「出かけるって、こんな時間に?どこへよ?」
小声で話すフォースに従いレアも小声で問いかける。
「…「エメラルド」から書状が届いた。すぐにでも会談に応じるってことだから、昼には行きます。って返信した。だから行くぞ。」
「ちょっと待って。昼までに「エメラルド」までは無理でしょ。地理的に!それにもう返信したの!?」
「場所は「エメラルド」とここ「トパーズ」の中間「シトリン」の街だ。昼には行けるだろ?それに書状持ってきたのは鳥でな。返事だすまで居座りそうだったから返信した。だからほら、支度しろ。」
フォースの言う「シトリン」の街はここからでも馬で半日はかかる。
そこに昼までにはとのことならば夜中に出発は避けられない。
「なんで…ん~もう分かったわ。ちょっと待って。」
なんでそんな無茶な約束を・・・。
とレアは思ったが気に病んでいた「エメラルド」からの返信があり、どこか嬉々とした表情を浮かべるフォースにそれは言えなかった。
力をもとめて、彼は動き出したのだ。止める理由はない。それは自らの望みでもあるのだから。
こうして夜中にこっそりフォースとレアは「トパーズ」の城を出て「シトリン」の街へと向かった。
「あ、ねぇ。ジンとデイジーには言ってあるの?」
「シトリン」を目指して駆けている途中レアがフォースに尋ねた。
ちなみに、相変わらず馬には一人で乗れないレアはフォースと相乗りの状態だ。今回はスピードの確保のため後ろに座り、フォースのからだにレアが腕を回していた。
「ん?あぁ。ちゃんと手紙を置いてきた。心配かけない内容にしておいたから大丈夫だ。」
レアの問いかけに淡々と答えるフォース。
《心配かけない内容》という所が何か引っかかるが、レアは「そう。」と軽く返事を返して、その後はひたすら馬を駆けさせた。
翌朝。「トパーズ」の城。フォースの政務室にいるべき人物の姿はなく、代わりに机に一枚の紙が置かれていた。
その内容に、ジンとデイジーが石と化したのは言うまでもない。
【新婚旅行に行ってくる。後は任せた。】