逃げる。
僕は静かな空間にいた。学校の休み時間で教室内。当然のごとく周りはうるさい。だが、所詮は周りのことで、僕には一切関係がなく、雑音だと思えばなんとも感じない。だが、羨ましかった。空間は静か過ぎて自分にはとても怖く感じられていたのだ。こんな場所から出て、みんなの中にいたかった。くだらなくても、変なことでも、いいじゃないか。ただ、何かが怖くて、恐れていた。だが、殻を破って他人と談笑するよりこの殻を壊すことで失う何かのほうが自分にはよっぽど怖かった。だから、自分では決して殻を壊そうとはせず、ただ誰かが気づいてくれるのを待っていた。
そんな時、君に出会った。衝撃的なわけじゃなかった。それでも、君との会話は僕の心にしみこんできて、嬉しかった。君が僕の殻の中に侵食してきて、連れ出してくれた。怖くない、恐れることはないと言うように僕を先導してくれた。
―――そんな君に惹かれたんだ。」
言い終わった後、目を少し伏せた。突然こんなことを言い出した僕に彼女は困惑の表情を表していた。それでも、僕は彼女からの拒絶が怖くて真っ直ぐに見れない。そして続ける。
「僕はどうなってもいいんだ。だから!」
そこで視線を合わせる。視線を向けた先にいる彼女は少し透けているように見える。そして彼女は言った。
「・・・・・・ごめんなさい。私、幽霊なの。それでもいいというのなら、一緒に逝きましょう」
言葉の最後のほうで顔を上げた彼女はこちらに向けて笑んだ。だが、その表情はもはや僕の知る彼女ではなく、正真正銘の化け物だった。
「―――――う、うわあああああああああああああああああああああぁぁ・・・・・・・」
僕は逃げ出した。