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五.陰の部長②

「特別な利害関係なんてありません」と龍臣君が鼻を膨らませた。

「ほう。では何故、地質に興味の無いあなた方がここにいるのですか?」

「そんなことはありません! 僕ら、地質のことをもっと知りたくて、ここにいます」今度は輝臣君が声を荒げた。

「心の底では長崎君のことを嫌っていた。でも、彼とは離れることができなかった。特殊な利害関係があったと考えるのが普通ではありませんか?」

「長崎さんのこと、嫌っていたなんて言いがかりです。だって、僕ら、長崎さんともっと親しくなりたくて、長崎さんに頼んで地質愛好会に入れてもらったのですから」

「そういう意味では地質に興味が無いと思われたかもしれません」

 双子が口々に言い立てる。

「まあ、良いでしょう。その内、見えてくるでしょう」と二代目。相変わらずインチキ占い師のような言い方だ。続けて「では、どうやって長崎君と知り合ったのですか?今のお話だと地質愛好会に入部する前に長崎君とは知り合いだったようですね」と双子に聞いた。

 筒井君が「えっ⁉」と小さく声を上げた。長崎君と双子がサークルに入部する前から知り合いだったことを知らなかったようだ。

 双子は暫く押し黙ったままだったが、観念したかのように輝臣君が「中学時代、僕らは虐められていました」と吐き出すように言った。「タツがとろくさいものだから、虐めを受けるようになったのです。タツが虐められるようになると、双子なものだから、僕まで虐めても構わないといった雰囲気になって、虐めの対象になってしまいました」

「俺のせいにするな。先に今井さんから虐められたのはテルだろう!」龍臣君が反論する。

「違う! 今井さんに絡まれたのは俺の方が先だったかもしれないけど、同級生から虐めを受けたのはタツが先だ」

 喧嘩になりそうだったので、「まあ、まあ」と二代目がなだめる。そして、二人に尋ねた。「その今井君というのは?」

「ひとつ上の先輩です。サッカー部の副部長で、見た目は凄く爽やかな感じの人なのに、性格は蛇のように執念深くて嫌な先輩でした。最初は同級生から、からかわれる程度だったのですが、何故か今井さんが僕らのことを知って、虐めに加わってから、虐めがひどくなりました」

「面白いことを言えと言われて冗談を言うと、気に入らないって殴られました。顔だと目立つのからと言って、何時も腹をやられました」

「二人で殴り合えって言われたのは辛かった」

「崖を登れって言われたこともあった。先にタツが登っていて、上から石が降って来た時には死ぬかと思った」

「あった、あった。俺だって、手を掛けた石がぽろっと崩れ落ちた時には、テルに当たらないかと焦った、焦った」

「随分、辛い目に遭ったのですね」

「もうね。一年間、地獄でした。中学二年の六月頃から虐めが始まって、今井さんはひとつ上でしたから、十カ月くらい辛抱すれば卒業してくれます。それまで二人で乗り切ろうと頑張りました」

 二人だったから、励まし合いながら辛いことを乗り越えることができたのだ。一人だと不登校になって、引き籠りになってしまったかもしれない。

「それで、虐めと長崎君とどういう関係があるのですか?」

 そうだ。それを知りたかった。

「その今井さんが大学に入学して直ぐに、大学を辞めたって噂が流れてきました。それもどうやら虐めを受けて大学を辞めたみたいで、二人でざまを見ろって喝采を叫びました」

「ほう~いじめっ子が虐めを受けたのですね」

「天罰だって思いました。これで少しは僕らの痛みが、苦しさが今井さんにも身に染みて分かったはずです。今井さんを虐めた人が神様のように思えました」

 二代目が話を先回りして言う。悪い癖だ。「それが長崎君だった訳ですね」

 双子は驚いた顔をした。「はい。そうです。友達の兄貴が招知大学にいて、その人の話だと、今井さんを虐めて退学に追い込んだのは長崎さんだということでした」

「だから、僕らは長崎さんに会ってみたい。会って一言、お礼を言いたかった。招知大学を目指して勉強しました」

「そして大学に受かって、友達の兄貴に紹介してもらって、長崎さんと知り合いました」

「僕らだって長崎さんにスカウトされて地質愛好会に入部したようなものです」

「そうですよ。僕らから頼む前に、地質愛好会に入部してみてはどうかって言ったのは、長崎さんの方ですから」

 双子が口々に主張する。

「長崎君との関係は分かりました。五代院君とはどうです? 入学前から知り合いでしたか?」

「五代院さんとはサークルに入って知り合いました。ただ・・・」

「ただ?」

「陰の部長はあいつだからと言って、入部前に五代院さんを紹介されました。どんな怖い人が出てくるのかと思ってドキドキしていたら、優しい人だったのでほっとしました」

「陰の部長ですか?」

「ええ、まあ」と輝臣は言葉を濁した。余計なことを言ったと思ったのだろう。二代目が「どういう意味でしょうか?」と突っ込んで尋ねてみたが、「分かりません」、「どういう意味で言ったのかなんて長崎さんに聞かないと分かりません」とはぐらかされた。

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