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後編

 俺は馬鹿だ。大馬鹿者だ。あの頃の俺に会えるならぶん殴りたいくらいだ。


 俺はずっと幼馴染である朝井凛のことが好きだった。子供の頃から一緒にいて、気付いたら好きになっていた。

 将来結婚したい。子供であった俺はそんな思いをずっと持っていた。

 

 だけど、成長するにつれ凛との格差に気付くようになった。可愛くて頭も良くて、社長の娘であった凛は何もかも普通な俺とは釣り合っていなかった。

 

 凛と付き合いたい、結婚したい気持ちが強まるほど、普通である自分自身が惨めになっていた。周りからも比較され、釣り合ってないと陰口を言われることも増えた。


 だから俺は凛に対する恋心を抑えて消すことにした。こんな思いさえ出さなければ俺は幸せでいれる。そう思い込むことにした。


 だから、中3の夏に凛が俺に告白してきて時は驚いた。けど、嬉しい感情より凛と付き合った時の周りの視線や反応が怖いという思いの方が強かった。


 けど、凛との関係が壊れるのも嫌だったから、


「受験に集中したいから今は付き合えない」


 と当たり障りない理由で断った。凛も納得したようでこれまでと変わらない態度で俺に接してくれた。


 凛は頭が良かったから俺とは違う高校に行くと思っていた。違う高校に行けば俺のことなんて忘れて、もっとふさわしい相手と付き合うだろう。そんなことを思っていた。


 だから、凛が俺と同じ高校を受験すると言い出した時には本当に驚いた。理由を聞いたら、


「大学はお父さんの言いつけで女子大に通うことになるから高校は佑と一緒がいい」


そう言っていた。

 俺は一緒の高校に通える喜びよりも、また周りに何か言われるかもしれない恐怖の方が強かった。


 わざと受験に落ちて別の高校に行くことも考えたけど、俺にはそんな度胸は無かった。


 だから、一緒の高校に入ってからは彼女を作る努力をした。俺に彼女が出来れば凛は諦めてくれる。そんな短絡的な思いで行動していた。

 けど、そんなに簡単に彼女なんて出来なかった。

 だから、フラれる度に凛が、


「私と付き合えばいいのに」


と言ってくることが、俺の心を削っていった。


 だから、愛が俺に告白してくれた時はとにかく安堵した。


 あぁ、これで凛と比べられることは無くなった。普通の人生を送れるんだ。


 そんな思いだった。


 愛と付き合った時に凛が泣きながら俺に怒ったけど、イケメンで頭も良くて、性格も良い男と付き合えば俺のことなんてすぐに忘れるはずだ。そんなことを思っていた。


 愛と付き合ってからは凛とは話さなくなり疎遠になった。悲しかったけど、凛と俺の人生の幸せを願えば1番最善だと思っていた。


 そんな邪な感情で彼女を作った俺にはもちろん天罰が落ちた。高校を卒業してすぐ、愛にフラれたのだ。


「朝井さんに勝ちたくて、あんたと付き合っただけで別に好きじゃないのよ。だから別れて」


 俺には愛に文句を言う資格なんてなかった。そして、今更凛の元に戻る資格もなかった。

 俺みたいなクズは凛に近づいてはいけない。凛に関わらないことが俺に出来る唯一のことだ。


 そこから俺は何となく生きていた。大学も頑張らず、就職も頑張らずに入れる会社に入った。

 頑張らなくても平凡ではいられる。そんな思いだった。


 だから、そんな思いで入れる会社はもちろんブラック企業だった。自分の人格を否定されるようなことばかり言われて、自分の容量を超えた仕事量ばかりを与えられた。そんな毎日を過ごす中で、だんだんとある思いが芽生えてきた。


「俺は価値の無い人間なんだ」


 こんな思いが芽生えてきた。だからといって、決してマイナスな意味では無い。

 

 俺がいなくても会社は回るし、俺のやってる仕事に価値なんてない。誰でも出来ることだ。その事実が悔しくて、自分のやってることを価値あることに変えていく、そんな思いで必死に働いた。

 そうやって働いていると、段々周りにも認められてきて俺にしか出来ない仕事を任されるようになった。

 だから、


「俺は価値の無い人間だ」


 から


「あの時の俺は価値の無い人間だった」


 に変わっていった。そう思いが変化する中で、凛のことを思い出すようになった。


 俺は周りの反応ばかりを気にして自分の本当の気持ちを隠していた。本当は周りなんてどうでもよかった。お互いに好きなら付き合えば良かったんだ。


 けど、後悔しても遅かった。もう凛とは関わりの無い人生だ。凛が幸せになることを祈るだけだ。


 プルルルル


「もしもし」

「おおー、佑か。久しぶりだな」

「おぉ、お前から電話なんて珍しいな」


 高校の時の友人から電話が来た。


「いや、今度同窓会あるんだよ。卒業して10年だろ?」

「もうそんなになるか」

「お前来るだろ?」

「いや、俺は………………行くよ」


 一瞬断ろうと思ったが、久しぶりに高校の同級生とも会いたかった。

 

「それより、朝井さんとはどうなんだよ」

「どうって言われても、、、」

「え、高校の時あんだけ仲良かったから付き合ってるもんかと思ったけど」

「いや、高校卒業して以来連絡すらしてないよ」

「そうなのか、、、」

「そんなもんだよ」

「まぁ朝井さんも来るだろうし、久しぶりに楽しみだな」


 そうか、凛も来るのか。だったら凛に謝りたい。傷付けてごめんって心からの謝罪をしたい。


 そうしたら、俺の思いにも踏ん切りがつきそうだ。


 そんなことを考えていたら心が軽くなってきた。

 

 そうだ!母さんから勧められていたお見合い受けてみようかな?今までずっと断ってきてたけど、同窓会の後なら新たな一歩を踏み出せそうだ。


 


 

 

反応が大きければ、続きを書きたいと思うので是非評価とコメントお願いします!

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