中編
「ね、ねぇ、どういうこと?」
勢いよく屋上の扉を開け、凛が尋ねてきた。
息も切らしていて、急いでここに来たことが分かった。
「なんのことだ?」
「あ、あんた高橋さんと付き合ったって本当なの?」
「高橋って愛のことかな?その話だったら本当だぞ」
「な、なんで。い、いつから?」
「えっと、昨日愛に告白されたから………昨日からかな」
「ど、どうしてなの?なんで付き合ったの?」
「そりゃ彼女欲しいからな」
「だったらさ」
凛は怒ってるような悲しんでるような、そんな表情だ。
凛が言いたいことはなんとなく分かっている。
「だったら私でもいいじゃん」
…………やっぱり。予想通りだった。
「いや、なんでだよ」
「だって、高橋さんとは前から仲良かったの?」
「いいや、話したことはほとんど無い。」
「そんな人より、仲良い私の方が良いじゃん」
「いや、お前のことは前に断っただろ?」
「なんでなんでなんで?私の方が可愛いって周りから言われてるよ。私ってタイプじゃないの?」
「そ、そんなことはないけどさ」
嘘じゃ無い。凛はめちゃくちゃタイプだ。ずっと可愛いと思っている。
「だったら、私でいいじゃん。そんな浅い関係の高橋さんより私の方が佑のこと知ってるし好きだよ。」
「………………」
「なんで、私の告白はずっと断るの?私はずっと佑に尽くすよ。佑のお願いならなんでも聞くし、やって欲しいこともなんでもしてあげる」
「いや、そういう話じゃないからさ」
「お金が欲しいの?だったら何円でもあげるよ。」
「いや、違う」
「じゃあえっちなこと?私なら他の人じゃやってくれないことでもやってあげるよ。」
「違う。違うんだ」
「じゃあ、何が望みなの?なんでも叶えてあげるから私と付き合ってよ」
涙を浮かべながら凛は俺に訴えてくる
「…………ごめん。無理だ」
それを聞いた凛は泣きながら去っていった。
◇
あの日から全てが楽しくない。
なんとなく佑と話せなくなって疎遠になった。
ずっとずっと一緒だと思っていたのに、こんなに簡単に離れちゃうんだ。
たまに、佑が高橋さんと楽しそうにしているところを学校で見ると胸が締め付けられそうになる。
ずっと望んでいた場所が違う女の子になっているだけでこんなに悲しくなるとは思わなかった。
極力、佑と会わないように学校では過ごした。
けど、同じクラスの高橋さんは避けようがない。
私に当てつけのように、私の近くで佑の話をしてくる。
わざと、私に聞こえるように佑との惚気話をしている。
その話が聞こえる度に悔しくて仕方なかった。
高橋さんに対してではない。自分に対してだ。いつ、道を間違ったんだろう?私の何がダメだったんだろう?そんな自問自答を繰り返す日々。
結局、卒業まで佑と関わることは無かった。大学も別々だったので本当に疎遠になった。
気持ちを切り替えるために携帯を変えて佑と連絡が取れないようにした。
大学に入ってからも色んな人に告白された。中には素敵な人もいた。顔もイケメンで頭も良くて将来も安泰そうな人。そんな人が何人もいた。けど、誰とも付き合う気にはならなかった。
いっそ、誰かと付き合って佑のことなんて忘れようと思ったこともあったけど、でも誰とも付き合わなかった。
忘れることなんてできなかった。
大学を卒業して、お父さんの会社に入ってからも佑のことを忘れることはできなかった。
「はぁ、一生結婚とか無理なのかなぁ。まだ諦めきれてないの自分でもウンザリしちゃう。あいつが結婚でもしてくれたら諦めつくのにな」
周りに誰もいないから、独り言を呟いてしまう。
「なんだ、凛。結婚したいのか?」
「えっ?お父さん、今の聞いてたの?」
「独り言にしては声がデカかったからな」
「えっ、恥ずかしいよ」
「安心しろ。私以外聞いておらんから」
「そ、それならいいけど」
「で、凛は結婚したいのか?もう28歳だしな」
「そ、そうだね」
「ずっと断ってる見合いを受ければ済む話だろ」
「そ、それは」
お父さんが用意してくれた見合いは全て断っている。
「なんだ、好きな人でもいるのか?」
「い、いるわけないじゃない」
嘘、います。ずっと忘れられない人がいます。
けど、そろそろ諦める時期なのかもしれない。
今度、お見合い受けてみようかな?
反応が大きければ、続きを書きたいと思うので是非評価とコメントお願いします!